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能楽鑑賞日記

2014年2月2日 (日) 狂言大藏会
会場:喜多六平太記念能楽堂 14:00開演

「鼻取相撲」
 大名:大藏教義、太郎冠者:宮本昇、新参の者:善竹大二郎

「伯母ヶ酒」 太郎:大藏千太郎、伯母:大藏彌太郎

小舞「鵜飼」 茂山良暢

「止動方角」
 太郎冠者:大藏千太郎、主:善竹富太郎、伯父:大藏吉次郎、馬:吉田信海

附祝言

「鼻取相撲」
 大名は新しい使用人を雇うため、太郎冠者に命じて探しに行かせます。太郎冠者が連れて来たのはいろいろな才能を持った者でしたが、中でも相撲が得意とのこと。それならばと大名自ら相撲の勝負をしますが、鼻を打たれて第一戦目は負けてしまいます。そこで第二戦目は鼻に小さな土器(かわらけ)という防御器具をつけて挑み勝利しますが、第三戦目はまた負けてしまいます。
大名は腹いせに土器(かわらけ)を叩きつけ、ひかえていた太郎冠者の腕をとって引き倒して行ってしまいます。
 大名が新参者と相撲をとる「文相撲」や「蚊相撲」と似たような曲ですが、狂言に出て来る相撲の手は何でもあり。鼻を打たれてクラクラして負けちゃったから鼻に小さい土器を付けて守ろうなんて発想も可笑しい。なんたってその恰好が笑っちゃいます。

「伯母ヶ酒」
 酒屋を営む伯母はケチで、一度も酒を振る舞ってくれたことがありません。甥は、今日こそはと思い、いろいろと口実をもうけて酒を出させようとしますが、伯母はその手にはのりません。そこで甥は帰るとみせかけ、この付近で鬼が出るとの噂があると脅しておいて、鬼の面をかけて改めて伯母を訪ね、恐れて平伏する伯母に今度は甥に酒を振る舞えと命じて、自分も飲みたいと言い、酒蔵に入って存分に飲みます。しかし、酔いが回って寝込んでしまい、とうとう伯母に見破られて追われていきます。
 彌太郎宗家が伯母役って、なんか珍しい気がする。万作家だったら、萬斎太郎に石田伯母で、万作伯母というのはあまり観たことがない気がするけれど。
 しかし、お酒を飲ませてくれないからと、鬼に化けて伯母さんを脅して、酒蔵で酔いつぶれるほど飲むなんて、しょうもない男です。結局バレて逃げ出す羽目になるんだけれど、狂言の憎めないおバカさんですね。酔っぱらって起きていられなくなり、寝っ転がって膝に面をつけるのが、やっぱり笑っちゃう。千太郎さんの太郎に彌太郎さんの伯母も息が合っていて面白かったです。

 休憩と茂山良暢さんの小舞をはさんで「止動方角」。出演者が基誠さんだったのが、千太郎さんに代わりました。

「止動方角」
 2日前に「新春名作狂言の会」で和泉流のを観たばかりなので、大蔵流との違いが分かって、楽しめました。あらすじは先月のを見れば大方は似たようなものなので省略します。
 主人が太郎冠者に伯父からお茶と馬と太刀を借りてくるよう命じた時は、万作家では、「へぇ」という返事も不承そうなんですが、そういう返事はしないですね。でも、やっぱり主人とのやりとりは笑っちゃいます。気前のよい伯父からすべて借りて帰る時に、伯父から、一度も返してくれたことが無いから必ず返してくれという念押しは無かったです。それに馬の乗り方も万作家は馬の後ろからついて歩いてましたが、大藏家は乗っかりはしませんが、馬の背中にまたがるようにして歩いてました。それから、主人が太郎冠者を叱りつけて馬に乗ると、すぐに太郎冠者が咳払いして1度目の落馬をさせるので、和泉流では2回、大蔵流では3回落馬させられることになります(笑)。そして、最後には太郎冠者が主人に追われるのではなくて、逃げた馬を主人と太郎冠者が追って行きます。
 記憶が新しいから細かい違いがすぐ分かってなかなか面白いです。何と言っても、馬を借りてきた後の主人と太郎冠者のやりとりがやっぱり最高に面白い。千太郎さんは萬斎さんのように少々大げさな表現はしませんが、不服そうな太郎冠者、反抗的な太郎冠者、してやったり、だけどちょっと怖がってる太郎冠者などの表現も十分面白かったし、富太郎主人の強面の迫力がまたまた可笑しくて大笑いでした。