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能楽鑑賞日記

2014年3月27日 (木) 狂言ござる乃座49th
会場:国立能楽堂 19:00開演

「茶壺」 すっぱ:高野和憲、中国の者:内藤連、目代:岡聡史   後見:中村修一

「文蔵」 主:野村萬斎、太郎冠者:野村万作      後見:飯田豪

「千切木」
 太郎:野村萬斎
 当屋:深田博治
 太郎冠者:月崎晴夫
 妻:石田幸雄
 立衆:竹山悠樹、中村修一、飯田豪、岡聡史
     後見:内藤連

「茶壺」
 茶壺を背負った男が千鳥足で現れると、道に眠り込んでしまいます。そこに通りかかったすっぱが茶壺を盗もうとしますが、片方の肩紐に腕を通しているので盗めません。そこですっぱも外した肩紐に腕を通して寝たふりをします。やがて目を覚ました男はすっぱと口論になり、仲裁に入った目代に事情を説明します。それを盗み聞きしていたすっぱも同じことを言うので、目代は、茶を詰めた記録を二人同時に舞い語らせますが、それでも判断がつきません。すると、目代は「論ずる物は中から取れ」と茶壺を持ち去ってしまいます。
 揚幕から橋掛かりを千鳥足で謡いながら登場する内藤さん。気持ちよさそうにフラフラとやってくるんですが、ちょっとまだ酔っ払ってるには硬い感じが抜けません。時々顔が素になってるww。
 男が肩紐の片方だけ外して道端で寝込んじゃうと、さっそく現れるすっぱの高野さん。すっぱ役の高野さんもあまり観たことがないような気がしますが、意外と曲者風な雰囲気が漂ってます(笑)。
 連れ舞では、テンポをずらしてすっぱが後をついて謡うのですが、終わりはちゃんと合わせるという微妙な謡い舞いがぴったりハマって、面白かったです。
 最後に、茶壺を持って逃げちゃう目代の岡さん。真面目そうな目代が意外や意外の行動であっけにとられます。
 若手トリオでは、やっぱり先輩の高野さんが抜き出ていたかな。若手頑張って。

「文蔵」
 無断で旅に出た太郎冠者が帰って来たと聞いて、主人は叱りに行きます。しかし、京都見物に行ったと言うので主人は懐かしがって許します。太郎冠者は都の様子を話し、伯父のところへ立ち寄って振る舞いを受けたというのですが、何を食べたか忘れてしまい、思い出せません。主人は苛立つものの、常々主人が愛読する本の中にある物を食べたと言われ、「源平盛衰記」にある石橋山の合戦を語り始めます。「真田の与一が乳人親に文藏と答ふる」というところで、太郎冠者はやっと思い出し、その文藏を食べたと言うので、主人は、それは釈迦が師走八日の御山出でに食べた温糟粥(うんぞうがゆ)のことだろうと言い、主人に骨を折らせたと叱りつけます。
 いや〜、萬斎氏の仕方語りが、「奈須與市語」を彷彿とする迫力の語りで、もう聞き入ってしまいました。それをポッキリと折ってズルっとなるような万作太郎冠者の飄々とした受け答えの落差で爆笑。聞きごたえがあって、なおかつ面白い。見事な親子コンビでした。

「千切木」
 連歌の会の当屋(当番)になった主人が太郎冠者に、仲間を迎えに行かせますが、ただし太郎は誘うなと言い添えます。太郎冠者が一人目の家を訪れると、すでに仲間が集まっていて、揃って当屋に集まり、和やかに連歌を始め、発句に思案を廻らせていると、仲間外れにされた太郎がやってきます。太郎はなぜ誘わなかったのかと文句を言い、掛け物の掛け方や花の活け方に難癖をつけて、それまでの雰囲気を台無しにしてしまいます。我慢の限界を超えた一同は、太郎を散々に打ち叩いて、放り出してしまいます。気絶した太郎冠者のもとに駆け付けた妻は、しぶる太郎冠者にむりやり棒を持たせて仕返しに行かせますが、どの家でも「留守」との返事。すると太郎は急に元気になり、棒を振り回して気勢を上げます。それを見た妻は惚れ惚れとして「愛しい人」と言って仲良く帰って行きます。
 太郎さん、普段から自分勝手に仕切りたがる嫌味な男で嫌われてるんでしょうね。皆が相手にしないと余計に言いたい放題。そのくせ本当は小心者で空威張り。しょうもない男なんですが、萬斎さんが演じるとそんな男もなんか可愛い。石田妻が高野妻とは違うくたびれた古女房風でありながら、そんな夫を奮い立たせようとわわしくも上手く操縦している感じで、年上女房の包容力を感じさせます。まあ、そんなこんなでも割れ鍋にとじ蓋で、夫婦仲は上手くやっていけるんでしょうね(笑)。
2014年3月16日 (日) 現代狂言?
会場:国立能楽堂 14:00開演

古典狂言「口真似」
 太郎冠者:ドロンズ石本、主人:野村万蔵、客:佐藤弘道

コント「告白」 台本・演出:森一弥
 学園のマドンナ:川村ゆきえ
 告白しようとする男:森一弥(エネルギー)
 同級生:平子悟(エネルギー)
 同級生:大野泰広
 同級生:中山貴裕
 ブスの石子:石井康太(やるせなす)

現代狂言新作「女王アリとキリギリスとカミキリムシ」 
作・台本:南原清隆、演出:野村万蔵
 女王アリ:野村万蔵
 キリギリス:南原清隆
 カミキリムシ:遠野なぎこ
 大カミキリムシ:松坂慶子
 虫たち・サムライアリ:平子悟
 〃・警備アリ:ドロンズ石本
 〃・年寄りアリ:大野泰広
 若女王・サムライアリ:川村ゆきえ
 サムライアリ:中山貴裕
 案内アリ:森一弥
 ウロウロアリ:石井康太
 働かないアリ:佐藤弘道
  音楽:稲葉明徳、和田啓

 万蔵さんと南原清隆さんの立ち上げた現代狂言も8回目、8年経ったんですね。舞台は全国で100回以上、観客数は5万人以上になったそうです。今回は千秋楽で、この日だけの特別出演で松坂慶子さんが出演しました。そんなことで、まずナンチャンが切戸口から出てきてご挨拶。今日は国立競技場で、ももクロのコンサートが開催されてるらしく、千駄ヶ谷駅前をコスプレや派手なパーカーかブルゾンみたいのを着てる人が多かったですが、ナンチャンも早速「ももクロのコンサートに来た人はここじゃありませんからね」と(笑)。また、ナンチャンの質問で、半分くらいの人が狂言や現代狂言を観るのが初めての人でした。8年目でも結構初心者多いですね。

古典狂言「口真似」
 主人は貰ったお酒と肴を一人で食べるのは寂しいので、太郎冠者を呼んで、ほどよくお酒が飲める相手を連れてくるように言います。しかし、太郎冠者が連れてきたのは、大酒を飲みで刀を抜いて暴れることで有名な人でした。失礼のないよう上手くあしらって帰そうと思い、主人は太郎冠者に勝手な行動はしないように、また自分の言う通り、する通りにするよう命じます。すると、太郎冠者は主人の言うこと、することをすべて真似して客にくり返すので、話がだんだん混戦してしまいます。怒った主人が冠者を倒し、客に挨拶して引っ込むと、起き上がった冠者も客を引き回して倒し、主人を真似て倒れている客に恭しく挨拶を引っ込みます。
 ドロンズ石本さんの太郎冠者が大柄で、善竹富太郎さんを思わせる愛嬌たっぷりの演技(笑)。振り回される客のひろみちお兄さんも運動神経の良さで、少し大げさな返しが面白く、安定した万蔵さんに対して、狂言には素人の2人が良くハマって演技してました。ビックリするほど、上手くなって、様になってましたね。万蔵さんにかなり仕込まれたのかな。

コント「告白」
 学園のマドンナに思いを打ち明けたくて呼び出すことに成功したものの、打ち明ける勇気が出ない真面目な学生を、通りがかった友人たち3人が手伝うことになり、2人がチンピラに扮して、真面目な学生が助ける筋書きを立てます。やがてマドンナがやってきますが、そこにやってきたブスの石子が間に入ってガードするので上手くいきません。打ち明けるにも恥ずかしくて、友人に伝言ゲームのように伝えてもらうのですが上手くいかず、やっと勇気を出して打ち明けると、あっさり振られ、何と伝言した友人とカップルが成立してしまいました。
 いつもは、古典狂言を基に現代版のコントにするのですが、今回は伝言ゲームのように伝えるところが、真似をするのに繋がってるのかな?と思うくらいで、あまり狂言の「口真似」を基にしてる感じはありませんでした。まあ、「口真似」じたい、非常に分かりやすい話なので、現代版で説明するまでもないとも言えますが、ここでやるにはもう少し、狂言をベースにしたコントの方が良かったのではないかと思いました。でも、普通のコントとしては面白かったですよ。

現代狂言新作「女王アリとキリギリスとカミキリムシ」
 組織からの解放と自由を夢見る女王アリと、安定した暮らしがしたいフリーなキリギリスは、「縁(えにし)を切る」ことができるカミキリムシの力で、お互いを入れ替わります。女王アリとしてその巣に案内されて、アリの様々な働きぶりを知るキリギリスと外の世界で自由の喜びを知る女王アリ。しかし、二人の心はだんだん変わっていくのでした。
 効率化を追求する現代社会にそうでないことも大事なのではと問いかける。

 「隣の芝生は青く見える」ですね。最後は、カミキリムシにまた元に戻してもらって、女王アリはサムライアリに襲われた巣から子供たちを護って無事に若女王に引き継ぐことが出来、キリギリスは今までの生活態度を少し反省して、自由な生活の中でも備えのために働くことにしました。
 面白かったのは分業化されたアリの世界で、年寄りアリもウロウロアリも働かないアリもそれぞれの役割を果たしていること。特に働かないアリ(佐藤弘道)が、いざと言う時の戦闘要員だったのがナルホド。そのために体力を温存させていたって話。
 カミキリムシの遠野なぎこさんが、「縁(えにし)を切る」ことが出来る神様のような役、“神切り虫”ってことかな。話し方や仕草に気高い女神らしい雰囲気が出ていて、いつものバラエティのイメージとは全然違ってました。
 大カミキリムシとして、今日だけの特別出演だった松坂慶子さんも出番はちょっとなのにオーラがあって、さすがでした。
 戦闘場面の立ち回りも上手く、万蔵さんの無茶ぶりには皆苦戦(笑)、万蔵さん楽しそうだった。
 ナンチャンもダンスやヴァイオリンを披露。
 今回も盛りだくさんな内容で楽しませてくれました。現代狂言は、いつも少々教訓じみたところがありますが、それが、以前よりは鼻に付かなくなった感じで、ストーリー展開も流れが良くなったのか、飽きずに楽しめました。

 最後は恒例となったキャスト総出のカーテンコールで、挨拶の後、客席に下りて練り歩き握手もしてくれるサービスあり。通路近くのお客さんは儲けものです。