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能楽鑑賞日記

2014年9月23日 (火・祝) よみうり大手町ホール開館記念能[秋公演]
会場:よみうり大手町ホール 14:00開演

舞囃子「八島」  宝生和英
         大鼓:安福建雄、小鼓:大倉源次郎、笛:寺井久八郎
            地謡:小倉伸二郎、水上優、前田晴啓、?橋章、大坪喜美雄

「昆布売」    大名:山本東次郎、昆布売:山本則俊      後見:山本則重

仕舞「三笑」   三川泉
         地謡:水上優、前田晴啓、?橋章、大坪喜美雄、小倉伸二郎

『羽衣』舞込
 シテ(天人):友枝昭世
 ワキ(白竜):宝生閑
 ワキツレ(漁師):宝生欣也、大日方寛
     大鼓:亀井忠雄、小鼓:曽和正博、太鼓:観世元伯、笛:一噌仙幸
        後見:中村邦生、友枝雄人
           地謡:佐々木多門、内田成信、狩野了一、金子敬一郎
               長島茂、大村定、香川靖嗣、粟谷明生

 4月の公演に続いて[秋公演]、人間国宝だらけの今回の公演に春は出ていなかった一際若手の宝生和英宗家が「八島」の舞囃子で出演。若い勢いと美しさを感じる「八島」の舞でした。仕舞「三笑」では、長老の三川泉師、手の震えが少々気になるものの酒に酔ってよろよろと、膝を上げた変わった足捌きなどの型が面白かったです。

「昆布売」
 供も連れずに外出した大名は、携えた太刀を誰かに持たせようと待ち受けているところへ、若狭の小浜の昆布売りが通りかかります。道連れになった大名は、太刀を持ってくれと頼み、昆布売りが断ると、刀の柄に手を掛けて脅し、無理やりに持たせます。しかし昆布売りは太刀の持ち方を知らず、昆布の添え荷のように担げたりするので、大名は昆布を全部買ってやり、太刀を持たせることに成功します。ところが昆布売りは「自分を召使いのようにお呼びください」などと大名を喜ばせておいて、急に太刀を抜いて大名に迫り、「昆布を売れ」と荷を持たせて、売り声を、平家節・小歌節・踊り節で謡わせます。大名が教えられたとおりに懸命にやっていると、昆布売りは太刀と小刀を奪って逃げ去ってしまいます。
 中世の大名は普段太刀は挿さず供の者に持たせているのが普通だったんでしょうか、狂言を観ていると小刀と太刀を2本挿しにしているのは見たことがありません。太刀はいつも家来に持たせるか一人の時は手に持っていますね。でも、見知らぬ人に持たせるなんて、不用心というか、いくらなんでもマヌケ(笑)。そのマヌケぶりが狂言らしいところでしょうか。
 東次郎さんの大名は、あんまりマヌケには見えないけれど、思いがけない昆布売りの反撃に戸惑い、いやいやながらも死にたくないから一生懸命やってるという感じで妙にリアリティーがあります。そこがかえって面白いです。

『羽衣』舞込
 何回か観ている三保の松原の天女の「羽衣」の話。漁夫の白龍が松の木に掛かった天女の羽衣を見つけ、家の家宝に持ち帰ろうとすると、天女が現れ、羽衣がないと天上に帰れないから返して欲しいと頼みます。始めは返そうとしない白竜でしたが、嘆き悲しむ天女を哀れに思って、天人の舞楽を見せてくれるなら返そうと言います。天女は喜んで衣を着て舞を舞い、やがて大空の霞にまぎれて消えていきます。
 舞込の小書で、天人が幕入りの前に2,3回廻り、衣の袖を被いて後ろ向きに入る型になります。友枝さんの天女がフワッと柔らかく美しい。佇まいもハコビも舞もまさに天女が下りてきて、また去って行く優雅さ。ワキの閑さんがスっとワキ座から脇正面に進み、遠く見送る姿も余韻が残ります。