| 2006年8月25日 (金) |
神遊 第32回公演 ろうそく能 恋重荷 |
会場:観世能楽堂 19:00開演
解説:観世喜正
狂言「内沙汰」右近:野村萬斎、妻:石田幸雄 後見:竹山悠樹
ろうそく火入れ
ろうそく能『恋重荷』 シテ(山科荘司・荘司の亡霊):観世喜正 ツレ(女御):武田文志 ワキ(侍臣):殿田謙吉 間(従者):野村万之介 大鼓:柿原弘和、小鼓:観世新九郎、太鼓:観世元伯、笛:一噌隆之 地謡:坂井音晴、坂井音隆、坂井音雅、武田友志 遠藤和久、浅見重好、岡久廣、松木千俊 後見:弘田裕一、観世喜之
解説は、いつもこの会で解説をされる観世喜正さんが、ろうそく能の『恋重荷』と狂言「内沙汰」について、あらすじ、見どころなどを話されました。今回は、どちらも男女の問題についての曲ということです。
「内沙汰」 考えてみれば、同じ配役で3回目になります。あらすじは、7月の「市川狂言の夕べ」にも書いてあるので省略。 今回は、コメディチックと言おうか、地頭役の妻にやり込められた悔しさに、妻の浮気を暴露する右近と妻のやりとりが、マジで夫婦喧嘩です(笑)。 怒って夫を突き飛ばし、去っていく妻に向かって言い放つ右近の科白は、やっぱり「左近とお前は夫婦じゃわいやい!」でした。つまり、「左近とお前はできてるんだろ!」ってことだったのですね。そう言って、右近は笑ってから引き上げて行きます。 前2回の時は、ここで笑うのは無かったようです。言い放っておきながら、しょんぼりと引き上げて行く、なんか悲哀が漂ってました。 今回は、前の夫婦喧嘩の勢いのまま、言ってやったという感じ。面白くて喧嘩の時のコンビの息も合っていたという感じでしたが、最後に、かえってみじめになってしまう右近の悲哀があまり感じられませんでした。 泣き笑いで、しおれていく感じがもっと出ると良かったかなという気もしました。 同じ配役でも、いつも同じじゃないというのも狂言の面白味ですね。
『恋重荷』 この曲を観るのは、5月の「中央区能に親しむ会」に続いて2回目になります。 今回は、仕事帰りの疲れもあり、ろうそく能という程よい暗さのため、時々意識がとんでいく〜という状態でした。(^^; 喜正さんの山科荘司は、まだ若手の喜正さんですが、声も姿も老人の雰囲気が出ており、一目見た女御に恋焦がれる老人の想いがひしひしと伝わってきました。それに対して女御はどんな思いだったのか、本当に悔いていたのか、はっきりとは伝わってこなかったような気がしました。私が時々沈没してたので、そのせいかもしれず、何とも言えません(すいません)。ろうそくの薄暗さは後場の亡霊の出の雰囲気作りには効果的でしたが。 5月の「中央区能に親しむ会」で、初めて観たときのような、涙が溢れ出そうな感動とはいきませんでした。やっぱり、睡眠不足はいかん。 |
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| 2006年8月4日 (金) |
兄弟会 |
会場:セルリアンタワー能楽堂 19:00開演
「横座」 牛博労:三宅近成、男:前田晃一、牛:大塚出
小舞「山崎通ひ」金田弘明 「鮒」三宅近成
「泣尼」 僧:三宅右矩、田舎者:高澤祐介、尼:三宅右近
三宅右近家の、まだ20歳を過ぎたばかりの右矩、近成兄弟の会が出来て第3回です。全席自由席ですが、ほぼ満席で、老若男女、小学生も来ており、どちらかというと若い人が多かったです。右近さんが手話狂言の指導をしていることもあり、手話で会話している人たちも見受けられました。 今回は、二人とも「横座」と「泣尼」というシテの語りを聞かせる、若い人には難しいと思われる演目に挑戦していました。
「横座」 4月の「野村狂言座」で万作さんがシテをやった演目です。 牛を引いた男は、迷い牛を拾ったのではなく、牛を売りに来た男から買ったことになっています。牛博労のところへ見せに行こうとする男と、盗まれた牛を探していた牛博労がばったり会い、牛博労はその牛は自分の牛で、生まれてすぐに座敷の横座に据えたので横座という名を付けたと話します。名を呼べば鳴いて答えるというので、男は三声名前を呼んで牛が答えたら返すと言います。二声までは返事がなく、あと一声に必死になった牛博労は、牛に文徳天皇崩御の際の故事を語り、絵の牛でさえ返事をするのだから、まして生身の牛ならば返事をせよと言い含めて名を呼ぶと、牛が鳴いて、牛博労は喜んで牛を引いて帰るのでした。
牛の名を呼ぶ2回までは呼ぶとすぐ、男が「そりゃ、一声よ」と機先を制して、牛の答えを妨げようとします。牛を返したくない男と返して欲しい飼い主とのそんなやり取りも面白いところです。最後に牛が返事をしてしまったので、牛に履かせたくつは自分の物だから返してくれと追いかける男。たしか、狂言座では引き綱を返してくれでしたが、せっかく自分の物だと思った牛を持ってかれてしまうのですから未練たっぷりの男の姿も笑えます。 まだ、20歳過ぎたばっかりの近成さんですから、もちろんベテランと比べることはできませんが、しっかりした語りで、きちんとした芸が、以前は硬さばかり感じましたが、表情にも柔らかさが出るようになり、ずいぶん成長していることが感じられました。
小舞「山崎通ひ」と「鮒」 「山崎通ひ」は山城国山崎の宿場へ通うおもしろさを謡ったもので、九世三宅籐九郎が鷺流の詞章に節と型を付けたものだそうです。金田さんは、初めて見る人かもしれませんが、きちっとした動きなど、なかなか格好良かったです。「鮒」は爪先立ちで動いたり、飛び返りが入ったりと面白い小舞ですが、3回目の飛び返りの着地がちょっと不安定だったような気がしました。きちっとした美しさはありますが、流れるような美しさがもう少し欲しかったかな。
「泣尼」 田舎の男が堂を建てたので説法をしてもらおうと、都に僧を探しにきます。ちょうどあった寺を訪ねて僧に説法を頼みますが、僧はお布施にひかれて承知したものの、説法に自信がありません。そこで、評判の泣尼を布施を分けてやる約束をして連れて行きます。ところが、僧が説法を始めても尼は泣くどころか居眠りをはじめ、僧は起こそうと四苦八苦しますが、尼はついに横になって眠ってしまいます。なんとか説法を終えて帰ろうとすると、約束の布施の分け前を請求する尼ですが、居眠りしていた者に渡せるかと、僧は尼を突き飛ばして逃げていきます。
右近さんの尼は初めてみますが、腰を曲げて小さくなってよたよたと出てくる尼さん。これは結構動きがきつい役ですが、まだ元気な右近さんぐらいがぎりぎりできる役でしょうか。でも、尼さんはやっぱり可愛らしいです。関係ないところでは良く泣いて、「泣きにくいところでも良く泣く」と僧を感心させますが、説法を始めるとこっくり、こっくり。「えへん」と咳払いしては、机を叩いて尼を起こそうとする僧に、初めのうちはピクンと気づく尼ですが、ついには横になってしまうどころか、いびきまでかきだします(爆)えっ!いびきかいたっけ?(爆、爆) 右矩さんの僧は、万之介さんの胡散臭さや、東次郎さんのホントに青筋たってきそうな感じはなく、まじめに困っている僧でした。
今回は、若い人には難しい役どころによく挑戦した二人でした。真摯な姿勢には好感が持て、以前より着実に成長しているのが感じられ、これからが楽しみになりました。 |
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