| 2007年4月30日 (月祝) |
萬狂言 春公演 |
会場:国立能楽堂 14:30開演
「附子」 太郎冠者:野村太一郎、主人:野村萬、次郎冠者:吉住講 後見:小笠原匡
新作狂言「瓢箪」 夫:野村万蔵、妻:野村扇丞 後見:山下浩一郎 作:横山一真 演出・台本補綴:野村万蔵 台本補綴:野村扇丞
「花折」 新発意:野村万蔵 住持:野村萬 花見客:野村万禄、小笠原匡、野村扇丞、山下浩一郎、吉住講、中本義幸 後見:野村太一郎
今回は、萬さんは脇役(アド)にまわって、万蔵さんを当主として盛り立て、太一郎くんを育てていこうというふうに見えました。
「附子」 教科書にも載っている一番有名な曲ですが、太一郎くんがシテの太郎冠者を勤めました。まだ、16,7歳で、亡くなったお父様に比べるとずっとスマートでなかなかいい男です。次郎冠者役の若手の吉住さんと比べても未熟な感じがしますし、変声期で声がつらそうなのですが、口を大きく開けた発声で、一生懸命な真面目さが伝わってきます。お祖父さんや伯父さんの稽古はきっと厳しいんでしょうね。 しかし、附子に扇ぎながら近づくところなど、すごく一生懸命扇いでいるのが滑稽で可笑しくて、次郎冠者と二人での附子の取り合いなど、やっぱり笑える。帰ってきた萬さんの主人の怒った様子がホントにコワモテで最後をきっちりしめてました。
「瓢箪」 台本公募による新作狂言の第1段です。あらすじは、 都に出稼ぎに出ていた男が妻の待つ村に帰って来て、旅の僧になんとも不思議なものを貰ったと、土産の瓢箪を妻に差し出します。欲しいものを唱えながら舞えば、それが出てくる。また、要らないものを唱えながら舞えば、それを吸い込んでくれるという。しかし、妻にはそんなことは信じられません。その上、都での稼ぎを全部、僧に渡したと知って、たちまち激怒。男は、稼ぎを取り戻しにいくことを約束させられます。ですが、ものは験しと、ひとつ欲しいものを唱えながら舞ってみようかと、男がとにかく必要な米を唱えながら舞いだすと、なんと瓢箪から米が出るわ出るわ、あっというまに米の山が出来てしまいました。それを見た妻はびっくり、瓢箪から駒ではなくて、瓢箪から米じゃ。きっと、常日頃正直な夫のもとに現れた僧は神か仏であろうと、喜んで、次に夫の好きなものを願ってみろということになります。別に欲しいものもないという夫に好きな酒を出してはと言って、酒を唱えて舞うとまた溢れるほどに出る酒に二人ともすっかり酔って上機嫌、段々調子に乗って次々にものを出し、溢れかえるほどのものを入れる蔵まで出してしまいますが、いつしか瓢箪を取り合うようになった二人。仲良かった夫婦に亀裂が生じ、とうとう二人とも相手を瓢箪に吸い込ませようとたくらみます。取り合いながら、相手の名を唱えると、二人とも瓢箪の中へ・・・。 真っ暗闇に互いの声だけ聞こえる静けさ、呼べども外のものは誰も気がつかない。外の騒がしさから離れ、やっと静かな気持ちになった二人は互いの浅ましさを反省し、昔の優しい、穏やかな気持ちに戻って手に手をとりながらここで静かに暮らしていくことにします。
打ち出の小槌、アラジンの魔法のランプみたいですが、初めは貧しくとも、とっても仲睦まじい夫婦が、大金持ちになることで欲にかられて、お互いを憎むようになり、ついには、お互いの企みによって瓢箪に吸い込まれてしまいます。何も無い世界に二人だけとなって、またお互いを思いやる大切さに気付くというお話です。ちょっと、鏡冠者のような恐さもありますが、最後は夫婦愛でしみじみ締めくくる形になっています。 「ひょう、ひょう、たんたんたん」という囃しで舞う舞いが面白く、なかなか良くできてるかなと思いますが、あの後、二人は瓢箪から出られたのでしょうか、暗闇の瓢箪の中でずっと仲良く暮らしていけるのでしょうか、気になるところです。
「花折」 先日、万作家で観ましたが、今回は万蔵さんが新発意で、ついついお酒好きな新発意が、外で始まった花見の宴に誘われて、住持にきつく禁制と言われていたにかかわらず庭に入れてしまう。 花見客の全員が謡いか舞を披露する、賑やかで華やかな、いかにも春らしい楽しさです。謡い舞いも万作家とはまた違うものを披露してたようです。万蔵さんは最後に「小鼓」と、それは短いからもう少し長いのをと所望されてもう一つ舞っていたのは、私には題名は何か良く解りませんが、プログラムの挨拶に「常と違う舞を舞います」と書いてあったので、特別バージョンなんでしょう。途中で酔いが回って足がふらふら〜。帰る一同に気が大きくなって花を折って渡してしまう新発意。万蔵さんの新発意も、おおらかで実に楽しそうでした。
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| 2007年4月26日 (木) |
野村萬斎 狂言の現在2007 |
会場:千葉市民会館 19:00開演
トーク 野村萬斎
「舟渡聟」 船頭:野村万之介、聟:高野和憲、姑:月崎晴夫 後見:時田光洋
「千鳥」 太郎冠者:野村萬斎、主:破石晋照、酒屋:高野和憲 後見:岡聡史
この公演は、各地で同じ演目でやっているけど、千葉は今まで県の会館だったけれど、今回は千葉市民会館でした。こっちの方が千葉駅に近くて便利。それに、開演時間が6時半だったのが7時からだから休みを取らなくても行けるので助かる。
萬斎さんのトークは、今回はあまり脱線なしに演目の解説という感じでした。初めて見る人もけっこういたようですが、見たことある人が少し多いくらいで、どっちに合わせたらいいかと思ったのか「困ったな」と言って、でもまあと、すぐに演目解説に入ってました。
「舟渡聟」 高野さんの聟さんは何度か観ていますが、万之介さんの舅と月崎さんの姑の配役では初めて観ました。 万作さんの舅は何度か観ていて秀逸ですが、万之介さんの舅は、また違った雰囲気、どことなくおとぼけな感じが漂っていて万之介さんらしい。 月崎さんの姑も意外と似合ってました。
「千鳥」 ツケのたまっている酒屋へ行って、またツケで酒を買って来いと言いつけられた太郎冠者は、酒屋の話好きにつけこんでなんとか酒樽をせしめようと一計を案じます。浜辺で子供が千鳥を捕る様子を、酒樽を千鳥に見立てて話し始め、調子よく囃しながら酒樽に近づき持ち去ろうとしますが、気がついた酒屋にみとがめられて失敗。そこで、流鏑馬の模様に話題を転じて実況を再現し、馬に乗る真似をしながら走り回り、酒樽に狙いを定め、矢が当たったと言って酒屋を倒して、酒樽を持って逃げていってしまいます。
オーソドックスな演目なのに、なぜか舞台で観たのは今回が初めてです。「ちりちりや、ちーりちり」やっと舞台で聞くことができました。破石さんの主人役も珍しい。堂々とした感じの主で、酒屋のツケを払わない渋い主って感じではなかったですが。 酒屋と太郎冠者のやり取りがやっぱり面白かったです。ツケを払うまでは酒を渡さないという酒屋に、今年は豊作で米をおっつけ届けに来るところだと言って、まんまと酒樽に酒をいれさせる太郎冠者。しかし、米が来るまでは持って行かせない酒屋に、待つ間、なにか面白い話を聞かせろと言われ話し出す太郎冠者。話にかこつけてなんとか酒樽を持ち逃げしようとすると、酒屋が太郎冠者のほうを見るタイミングがグッドで思わず笑ってしまいます。千鳥の歌も「馬場のけ、馬場のけ、お馬が通る」の囃し言葉も軽快で楽しく、なんとかごまかして持ち去ろうという太郎冠者の必死さとしたたかさが滑稽で可笑しかったです。 |
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| 2007年4月22日 (日) |
第1回善竹富太郎の狂言会 SORORI |
会場:セルリアンタワー能楽堂 14:00開演
おはなし 善竹富太郎
「仏師」 詐欺師:善竹大二郎、田舎者:大蔵教義
「素襖落」 太郎冠者:善竹富太郎、主人:善竹大二郎、伯父:善竹十郎
富太郎さんの第1回の会です。まず、富太郎さんが揚幕から出てきて、橋掛かりを通りながら客席を見て、お辞儀をしながら本舞台に登場。解説で、揚幕から出てくるのは珍しいですね。でも、大きな体ですから、帰りは切り戸口からで狭そうでした(笑)。 まずは、狂言の基本的な話から、「狂言というのは聞いたことがあると思いますが・・・ワイドショーで・・・プロレスやったり、税金払わないとか」←おいおい、それは危険すぎるおはなし(苦笑)。なんてことから始まって、今日の演目のあらすじ、解説をしていかれました。歳はまだ20代後半で若いのに、お客の反応を見ながら、けっこう落ち着いた堂々とした解説は体格のとおりでした(笑)
「仏師」 弟の大二郎さんとまたいとこの大蔵教義さんの若手コンビの「仏師」です。基本を崩さずにきちんとやってる感じなんですが、仏師が仏像に化けてのやりとり、大蔵流では田舎者が「仏師、仏師、仏師」「仏、仏、仏」と言いながらリズミカルに移動するのが特徴的ですが、やっぱりここのところは面白かったです。
「素襖落」 この演目の太郎冠者は、なんとなくベテランがやるものという印象がありましたが、富太郎さんの太郎冠者、十郎さんの伯父での「素襖落」。主人に言われて、主人の伯父のところに使いに行った太郎冠者が、お酒をごちそうになって段々酔っていくところ、富太郎さんの酔いっぷりが見事でした。表情、目つき、喋り方、酔った演技をしても目が酔ってない人が多いのですが、富太郎さんは、目がトロンとしてくる、据わってくる、頬も赤みがさしてくる、ホントにこういう酔っ払いいるよねえ、という感じでした。気前のいい伯父さんの十郎さんとのやりとりも二人の息が合ってて雰囲気が最高。最後に主人の前で素襖を落としてバレてしまうものの、素襖を取り返して逃げていく懲りない太郎冠者、ホントに面白かったです〜♪ 先日の十郎さんの「柑子」といい、この富太郎さんの「素襖落」といい、面白いです、うまいです。この親子のファンになってしまいました。 |
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| 2007年4月21日 (土) |
舞台改修竣工記念喜多流職分会4月自主公演能第1日目 |
会場:喜多六平太記念能楽堂 正午開演
『翁』 翁:粟谷幸雄 三番叟:野村萬斎 千歳:野村遼太 大鼓:亀井広忠 小鼓:曽和正博 脇鼓:住駒充彦、森貴史 笛:一噌幸弘 後見:高林白牛口二、佐々木宗生 地謡:塩津圭介、佐々木多門、松井彬、井上真也 中村邦生、大島政允、友枝昭世、出雲康雅
仕舞「弓矢立合」 友枝昭世 地謡:友枝雄人、粟谷明生、粟谷能夫、長島茂、狩野了一
『高砂』 シテ(老翁・住吉明神):谷大作 ツレ(老媼):粟谷浩之 ワキ(阿蘇の宮の神主友成):村瀬堤 ワキツレ(従者):中村弘、有馬広 アイ(高砂の浦人):竹山悠樹 大鼓:亀井忠雄、小鼓:鵜澤洋太郎、太鼓:小寺佐七、笛:松田弘之 後見:長田驍、高林呻二 地謡:佐藤寛泰、友枝雄人、佐藤章雄、大島輝久 梅津忠弘、塩津哲生、香川靖嗣、大村定
「文蔵」 主:野村万作、太郎冠者:深田博治
『船弁慶』 シテ(静御前・平知盛の霊):金子敬一郎 子方(源義経):金子龍晟 ワキ(武蔵坊弁慶):村瀬純 ワキツレ(義経の従者):村瀬慧、中村弘 アイ(船頭):石田幸雄 大鼓:柿原弘和、小鼓:観世新九郎、太鼓:三島元太郎、笛:寺井宏明 後見:内田安信、金子匡 地謡:渡辺康喜、内田成信、狩野了一、粟谷充雄 笠井陸、粟谷明生、粟谷能夫、長島茂
附祝言
『翁』 喜多流では、金春流と同じく面箱が千歳を兼ねていて狂言方が舞います。先日の金春流の『翁』では面箱から翁太夫が面を出しましたが、喜多流では観世流と同じく、面箱持ちが面を出していました。喜多流の翁の舞いで、他流の型と一番違いがすぐ解るのが、翁太夫が両腕を広げず、常に右腕だけ上げて左腕は下げていることですね。大きく両腕を広げる型が目立つので、それが無いというのが、すぐ解ります。 粟谷幸雄さんの『翁』は翁らしい威厳と風格みたいなものを感じました。 遼太くんの千歳はお初です。これが楽しみでもありましたが、なかなか初々しくて良かったです。 萬斎さんの三番叟、最前列だったので、目の前の足元ばかり見てました。いつもながら気合が入っていましたが、丁寧というか、足捌きの一つ一つが美しい。キレてイっちゃう感じではなくて、キレだけでなく安定感も感じてとても良かったですね〜。 この囃子方も最高でしたよ。
仕舞「弓矢立合」 通常は三人のシテ方の宗家が揃って勤めるものなのだそうです。これについて粟谷明生さんの4月13日のブログに書いてありますが、金春宗家のコメントも入っていてちょっと勉強になって面白いですから、是非読んでみてください。 長袴での仕舞は初めて見ました。流麗に丁寧に舞っておられました。
『高砂』 ワキの友成が若いのに対し、ワキツレ2人がかなり年配の方のようで、ちょっと釣り合いが?って感じがしました。ワキの村瀬堤さんの声は良いのですが。 後場の神舞のお囃子はすごく勢いがあって、シテの住吉明神の舞も力強くかっこ良かったです。
「文蔵」 万作さんの語りの巧さに引き込まれる舞台でした。石橋山の合戦の様子が見えるような迫力ある語りです。深田さんは、その人の持ち味というのもあるでしょうが、真面目そうな硬さがあって(話を聞いている時の表情が、なんか厳しい表情でした。)、相手が万之介さんだと落差がはっきりしてもっと面白いものになっただろうな、という気がしました。これは、やっぱり万作・万之介コンビで観てみたいですね。
『船弁慶』 ワキ方の弁慶はやっぱり宝生閑さんがいいなあと思いました。特に後場の船に乗ってから知盛の幽霊が出てくる緊張の場面、閑さんだともっと迫力があるような気がします(体の大きさに関係なく)。船頭の石田さんは気合が入ってて、良かったですねえ。 知盛の霊が出てくる前に、揚幕から半分だけ姿を見せる型があるので、揚幕の方を気にしてたのですが、今回は小書が無いせいか、いきなり幕が上がっての登場でした。シテが長刀を振り回して襲いかかってくる姿はなかなか迫力があったと思いますが、平家の公達の霊だからでしょうか、悪霊といっても面は、あまり恐い表情ではなくて、どこか悲しげでした。 |
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| 2007年4月18日 (水) |
第38回野村狂言座 |
会場:宝生能楽堂 18:30開演
「今参」 大名:高野和憲、太郎冠者:石田幸雄、阪東方の者:深田博治
「見物左衛門」深草祭 見物左衛門:野村万之介
「花折」 新発意:野村万作 住持:野村万之介 立衆:野村萬斎、深田博治、月崎晴夫、竹山悠樹、破石晋照、石田淡朗
3曲とも、以前観たことのある演目です。「今参」は何の会で観たか忘れましたが、多分大蔵流で観ていると思います。それも茂山家や山本家では無かったような気がします。 今回は、万之介さんが2曲に出て、大活躍でした。元気な姿が観られてとっても嬉しいです。やっぱり万之介さんは万作一門に貴重な存在です。
「今参」 大名が使用人を、もう一人抱えようと、太郎冠者に適当な者を探しに行かせます。太郎冠者は上下の海道で奉公志願の男と出会い、さっそく連れて帰りますが、その途中で太郎冠者は、秀句(洒落)好きの大名に気に入られるようにと、いくつかの秀句を男に教えます。大名は男が自分の目の動き通りに機敏に動くのですっかり気に入り、当分は「今参」と呼んで雇うことにします。ところが、今参は教わっていた秀句を言い間違ってしまい、大名にきつく叱られてしまいます。そこで、拍子にかかってなら答えられると言うと、大名と拍子にかかってのやりとりとなり、大名もすっかり機嫌を直して、二人でつぎつぎと秀句を唱えて喜ぶのでした。 若手の高野さんが、この大名役というのは珍しいです。研鑽の場でもある「野村狂言座」ならではの配役でしょうか。でも、高野さんも無邪気な大名の雰囲気が出ていて、なかなか可愛らしかったです。
「見物左衛門」深草祭 一人狂言ですが、最近に、万作さんと萬斎さんとそれぞれ観る機会がありました。万之介さんのも一度観てみたかったところでした。 万之介さんは淡々とした感じで情景が見えるよう。一人で御所や競馬や祭を見物し、人と話し、相撲をとったりと好奇心旺盛に動き回るのに、万之介さん特有な淡々とした間があって、実に楽しかったです。この演目は万之介さんのが一番好きかも。
「花折」 寺の住持が、今年は花見を禁止するから留守中決して誰も庭に入れるなと、新発意に言い置いて出かけていきます。そこへ花見客がやってきたので、新発意は言いつけどおり断りますが、寺の外で酒宴を始めたので、新発意は、寺の桜を外から眺めるなら、花に御神酒をあげろと一人だけ中へ入るのを許します。すると、それに乗じて他の連中も入り込み、結局、新発意も加わって飲めや謡えの花見の宴となります。酔って気が大きくなった新発意は、桜の枝を折って土産に持たせ、いい気持ちで寝込んでいるところを帰ってきた住持に見つかって叱られ、追い込まれてしまいます。
一人づつの謡い舞いがたっぷり堪能できて、春らしい花見の雰囲気が華やかで楽しい演目です。万作さんの舞がキレが良くて軽やかで美しく、萬斎さんが実に柔らかな笑顔を見せていたのが、印象的でした。久しぶりに見る淡朗くんもすっかり男っぽくなっていて、時の流れの速さをつくづく感じました。 |
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| 2007年4月14日 (土) |
横浜能楽堂特別公演 |
会場:横浜能楽堂 14:00開演
「水汲」 新発意:野村万蔵 女(いちゃ):野村扇丞 後見:吉住講
『伯母捨』 シテ(里女・老女の霊):友枝昭世 ワキ(都ノ者):宝生閑 ワキツレ(都ノ者):工藤和哉、高井松男 アイ(更級ノ里人):野村萬 大鼓:亀井忠雄、小鼓:北村治、太鼓:金春惣右衛門、笛:一噌仙幸 後見:塩津哲生、内田安信、狩野了一 地謡:佐々木多門、友枝雄人、金子敬一郎、内田成信 中村邦生、粟谷能夫、香川靖嗣、長島茂
「水汲」 万蔵家の「水汲」は以前、萬さんの新発意と万蔵さん(当時与十郎さん)のいちゃで見たことがありますが、今日の万蔵さんと扇丞さんの組み合わせでは初めてです。扇丞さんもとても声のいい人だし、万蔵さんの謡いもなかなかいいなあ、なんて、二人の謡いのやりとりも良かったです。 いちゃを見つけて忍び寄る新発意、万蔵さんの表情が良かったですね(笑)。うれしいのと、ちょっと構ってやりたい悪戯心。 最後に水をかけられる場面では、万作家だとすっぽり桶をかぶってちょっとフリーズしてから桶を取るんですが、万蔵家は桶をかけられるとすぐ「冷たやな、冷たやな」と外してしまいます。ここのところは万作家のほうが面白いです。でも、萬さんが新発意をやった時は、いちゃが「恥ずかしや、恥ずかしや」と逃げていくより先に桶をはずしてしまったので「あれ」って感じでしたが、今日の万蔵さんの場合は、いちゃが逃げていく間をおいて外していたのが良かったみたいで、可笑しかったです。ずぶぬれになって、「くっさめ」とくしゃみをしてすごすご帰る姿の情けなさに繋がっていました。
『伯母捨』 以前に観た友枝昭世さんの『伯母捨』の時もワキが宝生閑さんでアイが野村萬さんだったと思います。お囃子も錚錚たるメンバーです。 前シテの里女は老女とまではいかない中年の女ですが、出てくる時から怪しげな、後に闇を感じます。姨捨山の月を見に来た都の旅人に、昔、山に捨てられた老女にまつわる旧跡を教え、自らも山に捨てられた一人で、秋の名月の折りに現れて執心を晴らしていると言って姿を消します。 そこに萬さん登場、里人が山に月を見に登ってきて都人たちを見つけ、請われて姨捨山の無残な物語りをし、田ごとの月の謂れなどを語ります。ここで語られるのは、貧しさのために老人を捨てる「姨捨伝説」とは違う、もっとひど〜い話なんですが、たぶん以前にもどこかで書いていると思うので、省きます。萬さんの語りはむしろ淡々とした語りでした。 いよいよ後シテの白い老女登場。杖をつく音もかすかにしか聞こえない、ゆっくりと静かな登場です。ベージュの長絹には金糸で秋の草花が表され、トンボや蝶が描かれていました。 この盲いた老女は、我が子として育てた甥の嫁に疎まれて捨てられたのに、そのことに対する恨み言は一言も言わないのです。仏の法とその世界について説き、静かに静かに舞います。時々月を仰ぐように見上げる盲目の老女の心の中には清澄な月がありありと見えているようです。その舞姿は確かに暗い夜空にぽっかりと浮かび、老女の姿を照らす月が見えるようでした。 昔を懐かしみさらに舞い続ける老女、やがて静かに座り込むと、夜が白々と明けはじめ、旅人は去っていき、また老女は一人寂しく残されるのです。 この時、喜多流では老女が立ち上がって悄然と見送る型はありません。シオル型もありません。静かに俯いて座ったまま、また打ち捨てられる己の運命をただ受け入れているようで、そこに老女のなんともいえぬ寂しさが漂っていました。 旅人が皆去ったあと、静かに立ち上がり、ゆっくりゆっくりと橋掛かりを去っていく老女の後姿、その余韻の長さは、まだ舞台は終わっていないことを感じます。見所も息を呑むような静寂のまま、囃子方が橋掛かりにかかるまで、拍手は起こりませんでした。 |
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| 2007年4月9日 (月) |
八十世金春宗家継承披露能 |
会場:国立能楽堂 13:00開演
『翁』 翁:金春安明 三番三:大藏千太郎 千歳:山本泰太郎 大鼓:柿原崇志 小鼓頭取:大倉源次郎 脇鼓:鵜澤洋太郎、古賀裕己 笛:中谷明 太鼓:観世元伯 後見:横山紳一、中村昌弘 狂言後見:大藏彌太郎、山本則直 地謡:鬼頭尚久、佐藤俊之、井上貴覚、鈴木武義 金春穂高、吉場廣明、金春康之、辻井八郎 『高砂』 前シテ(老翁):高橋汎 後シテ(住吉の明神):本田光洋 ツレ(老姨):金春憲和 ワキ(阿蘇の宮の神主友成):宝生閑 ワキツレ(従者):殿田謙吉、則久英志 間(所の者):山本東次郎
「末広」 果報者:大藏彌太郎 太郎冠者:大藏吉次郎 すっぱ:善竹十郎 後見:大藏基誠
仕舞 「野守」 辻井八郎 「放下僧」コウタ 守屋泰利 地謡:政木哲司、鈴木圭介、櫻間金記、山中一馬、柴山暁
独吟「鮎ノ段」 吉場廣明
仕舞 「小塩」キリ 島原春京 「角田川」 富山禮子 地謡:梅井みつ子、高橋万紗、仙田理芳、平友恵、深津洋子
『羽衣』替ノ型 シテ(天女):金春欣三 ワキ(漁夫白竜):森常好 ワキツレ(漁夫):舘田善博、森常太郎 大鼓:安福建雄、小鼓:幸清次郎、太鼓:金春惣右衛門、笛:一噌庸二 後見:金春康之、金春憲和 地謡:塚原明、本田芳樹、伊藤眞也、桑原朗 長谷猪一郎、櫻間右陣、高橋忍、山井綱雄
仕舞 「岩舟」 櫻間右陣 「花筐」クルイ 櫻間金記 地謡:本田布由樹、本田光洋、佐藤俊之、大塚龍一郎 「養老」 観世清和 地謡:上田公威、岡久廣、武田宗和、関根祥人 「八島」 宝生和英 地謡:東川光夫、佐野萌、田崎隆三、辰巳満次郎 「東北」クセ 金剛永謹 地謡:片山峯秀、宇?通成、今井清隆、金剛龍謹 「草紙洗小町」 友枝昭世 地謡:内田成信、粟谷明生、粟谷能夫、長島茂
半能『石橋』群勢 シテ(白獅子):金春穂高 ツレ(赤獅子):高橋忍 ツレ(赤獅子):山井綱雄 ツレ(赤獅子):本田芳樹 ワキ(寂昭法師):村瀬純 大鼓:亀井忠雄、小鼓:観世新九郎、太鼓:小寺佐七、笛:藤田朝太郎 後見:高橋汎、守屋泰利 地謡:岩田幸雄、中村昌弘、芝野善次、中村一路 福井哲也、金春安明、辻井八郎、本田布由樹 台後見:横山紳一、井上貴覚、鬼頭尚久、政木哲司
『翁』 金春宗家の「翁」に大藏千太郎さんの「三番三」と山本泰太郎さんの「千歳」です。 恰幅のいい翁太夫を連続でみたので、よけいほっそりとした翁という感じがしてしまいました。金春宗家は声がまろやかでいい声なのですが、謡いの言葉が聞き取りにくい気がします。私の聞き方が悪いのでしょうか。 金春流は千歳と面箱を兼ねて狂言方が舞います。他にも観世流と違ってたのは観世の時は面箱持ちが翁太夫の前で、面箱から白式尉の面を出して箱の上に整えるのですが、金春では面箱持ちが面箱を開けると翁太夫自ら面を出し箱の上に乗せるところまで行い、面箱持ちが面に触れることはありません。 千歳の泰太郎さんは力強く颯爽と、動きの一つ一つが次の動作に変わる時、カチッカチッと切り替わる、意識的にわざとそうしているような感じがしました。 千太郎さんの三番三は、初めて観ましたが、細い体で「揉ノ段」も「鈴ノ段」も非常に力強さを感じました。足拍子が膝を高く上げて一つ一つ力強く、そこはかとなく土の匂いがして、地のエネルギーが立ち上ってくる感じ。いや〜、千太郎さんカッコ良かったです!見直してしまった♪ もうひとつ気がついたのは、鈴ノ段が始まってから、アドの太夫(千歳・面箱)が切り戸口から出て行ったらしいこと。「鈴ノ段」に気を取られていて、いついなくなったのか全然気がつかなかったのですが、和泉流の時は最後に三番叟の後について揚幕に入っていくのに、三番三が一人で帰って行き、アドはすでに舞台上にいませんでした。 「鈴ノ段」の前の問答からいえば、三番三が「アドの太夫殿は元の座敷にお直りそうらえ」と言って退出を促して、アドがそれでは「鈴を進じよう」と鈴を渡していくのだから、アドは退場するのが理に合っているのかもしれません。
『高砂』舞序破急ノ伝 ちょうどこのころ眠気が襲ってきたので、肝心なところがあまりしっかりとは観られませんでした。 小書で、前シテの老翁の型や後シテの住吉明神の舞が変わるのですが、前シテの型も途中で意識飛んでたらしく、どこが変わってるのかよく分かりませんでした(^^;)。 ワキ、ワキツレが宝生閑さん、殿田さん、則久さんで、「高砂」の謡が気持ち良かったです。 後シテの住吉明神はカッコ良かったですが、常より緩急に富んだスピーディーな神舞になるとのこと、しかしこの時も睡魔に勝てず、時々意識が飛んでいた感じです。m(_ _)m 「末広」 大藏流のベテラン三人の「末広」は、なかなか面白かったです。彌太郎さんの主人、吉次郎さんの太郎冠者、善竹十郎さんのすっぱと、配役もピッタリでした。にこにこした吉次朗さんの太郎冠者がいかにも胡散臭そうな十郎さんのすっぱに騙される。十郎さんはいかにももっともらしく、でもちょっと意地悪そうというかズルそうというか、こういう役も似合います。 すっかり騙されて古傘を買って帰る太郎冠者が主人に怒られる場面、「扇なら扇と初めから言えばよいものを」と、主人にいい、反抗するときも正先まで出てきて文句をたれる姿が面白かったです。 恐い顔ですっかりご機嫌斜めの主人が太郎冠者の囃子物でついつい浮かれ出すときの彌太郎さんの表情や動きも面白くて、とってもいい感じ。やはり最後はめでたく〆て、祝言らしく楽しめました。
『羽衣』 この『羽衣』のシテ方金春欣三さんは、なんと80代です!!80過ぎて『羽衣』が舞えるというのは驚きです。足元もわりとしっかりしてるし、手も震えない。確かに時々体が揺れることはあってもほとんど気にならない。羽衣を舞っても天女に見えない人がいるというのに、この方は天女に見えました。それもなんとも可愛らしい。凄いです!!
仕舞 後半の仕舞は各流の宗家、代表者という実力派揃い。やはり前半の仕舞とくらべると格が違うという感じです。その中で、宝生流の宝生和英さんはまだ20歳くらいの若さです。宝生宗家が今はなかなか舞台に出られないので息子の和英さんが代表として出ているのでしょうが、これがりっぱなもんでした。曲が勢いのいい「八島」を選んだのも良かったんでしょうが、颯爽として勇ましい、まさに若さの花を感じる舞でした。注目の若手、これからが楽しみです。金剛宗家は顔つきもゴツイ感じなんですが、舞が柔らかさがあって優雅でした。友枝昭世さんはやっぱり美しい。謡いの声も雰囲気、動きの一つ一つに至るまで、うっとりしてしまいました。
半能『石橋』群勢 めでた尽くしの最後にふさわしい半能『石橋』それも赤獅子が3頭出てくる華やかな群勢の小書付き。 赤い牡丹の付いた一畳台を正先の少し左よりに置き、その左後に白い牡丹の付いた一畳台を前の台の左側と後の台の右側が少し重なるように置きます。作り物が右奥の笛柱の前あたりに置かれ、白獅子はこの中から出てきます。 群勢の小書は以前どこかで見たのですが、何の会だったか忘れてしまいました。人数が多すぎて一畳台を上がったり下りたり、その時は窮屈な気がしたように記憶しているのですが、今回は、そんな感じはせず、橋掛かりと舞台、一畳台をうまく使って、ずっと動いているのではなく、4頭揃って台の周りに揃った時は暫し動きを止めて決めてみたり、華やかでした。 最初に出てくる赤獅子は少しオレンジ色の頭で、勢いはあるけれど後の2頭より落ち着いた感じ、2番目の赤獅子は名前順からいって山井綱雄さんだと思いますが、一番動きにキレがあり、活きのいい獅子でした。なんか1頭1頭にそれぞれの獅子の性格が出ているようで面白かったです。あまりそんなことを今まで『石橋』の獅子で感じたことはなかったんですが(笑)。
長かったですが、見ごたえ充分で、やっぱり見に行って良かった会でした。
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| 2007年4月7日 (土) |
世田谷パブリックシアター開場十周年記念『翁・三番叟』 |
会場:世田谷パブリックシアター 14:00開演
『翁・三番叟』三日之式 子宝 翁:観世銕之丞 三番叟:野村萬斎 千歳:観世淳夫 面箱:竹山悠樹 大鼓:亀井広忠 小鼓頭取:大倉源次郎 脇鼓:古賀裕己、田辺恭資 笛:一噌幸弘 後見:北浪昭雄、浅見真州 地謡:長山桂三、浅見慈一、馬野正基、遠藤和久、山本順之、岡田麗史 狂言後見:石田幸雄、月崎晴夫
「三本柱」 果報者:野村万作 太郎冠者:深田博治 次郎冠者:高野和憲 三郎冠者:月崎晴夫 大鼓:亀井広忠、小鼓:古賀裕己、太鼓:観世元伯 後見:野村良乍、竹山悠樹
『翁・三番叟』子宝 観世銕之丞さんの『翁』も、六郎さんのように、どっしりと重量感のある翁ですが、朗々とよく通る声で、おおらかさと力強さみたいなものを感じます。淳夫くんの千歳は、以前見たときより、声も良く出ていて、颯爽とした舞は格段に上手くなっていました。子供の成長は本当に早いですね。 萬斎さんの三番叟は、よく通る声で、力強く、気合も充分入っていましたが、ぶち切れたような、イッちゃったような感じはしなかったです(笑)。烏跳びは万作さんの時と同じく5回跳び、いや4回だったかな?後ろ向きに跳ぶのは入ってましたが、その後すぐ斜め前に3回跳びに入ったような気もしました?萬斎さんの場合はどれも大きく跳んでいて、やっぱり躍動感、力強さキレの良さが全面に出ています。今までとちょっと変わったか?ぎりぎりのところまでイッちゃってたのが、力を抜いてるわけじゃないのに余裕みたいなものを感じました。 「鈴の段」の前の問答は、今回は「子宝」の小書によるもので、この黒い翁は子を10人持っているという。上の5人が男で、下の5人が女で、呼ぶのに困るので、名前を付けたと、それがなんだか変わった面白い名前なんですが、それを聞いた面箱持ち(アドの太夫)が「それはめでたい」と、やっぱり、めでたがって締めくくります(笑)。
「三本柱」 果報者が三人の召使いに、家を建てるための柱を山に取りに行かせますが、三本の柱を一人日本ずつ持ってこいと言いつけます。三人は山へ行ってそれぞれ柱を一本ずつ担いで来ますが、途中で休んでいるときに主人の言いつけを思い出し、どうすれば3本の柱を3人で一人2本ずつ持つことができるか考えます。そこで気がついたのが柱を三角形に置いてそれぞれの端を持てば一人2本ずつ持つことができるという方法です。でも、ただ持って帰るのでは面白くないと、囃子物にのって帰ってきます。三人が囃子物を謡いながら帰ってくるのを聞きつけた主人は三人を家に入れ、一緒に囃子物にのって喜ぶのでした。 家の新築というめでたい話に、主人の謎かけを三人の知恵で解き、囃子物にのって浮かれるという祝言にふさわしい曲です。最後は三人の持つ三本柱の真ん中に入り「末広がり」のように片足ピョンピョンで浮かれる万作さん、4人でピョンピョン、楽しそうでした。 |
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| 2007年4月6日 (金) |
世田谷パブリックシアター開場十周年記念『翁・三番叟』 |
会場:世田谷パブリックシアター 19:00開演
『翁・三番叟』二日之式 烏帽子之祝儀 翁:梅若六郎 三番叟:野村万作 千歳:梅若慎太朗 面箱:高野和憲 大鼓:亀井広忠 小鼓頭取:大倉源次郎 脇鼓:清水晧祐、田辺恭資 笛:一噌幸弘 後見:山中迓晶、北浪昭雄 地謡:角当直隆、小田切康陽、山崎正道、梅若晋矢、松山隆雄、会田昇 狂言後見:石田幸雄、深田博治
「靱猿」 大名:野村万之介 太郎冠者:石田幸雄 猿曳:野村萬斎 子猿:野村裕基 後見:月崎晴夫、竹山悠樹
『翁・三番叟』烏帽子之祝儀 パブリックシアターの三本の橋掛かりの舞台、注連縄が真ん中の橋掛かりの前と奥の上に吊り下げられていて、真ん中の奥の幕から出たところで火打石が切られ、『翁・三番叟』の始まりです。 真ん中の橋掛かりから、そろりそろりと出てくる面箱を先頭に翁、千歳、三番叟が、右の橋掛かりから後見、地謡が、左の橋掛かりから囃子方が登場します。翁太夫が正先で深々と礼をして位置に着くと面箱持ちが面箱を翁太夫の前に置いて箱から面を出し、裏返した蓋の上に丁寧に面を置いて差し出します。準備が整って面箱持ちが立ち上がると、じっと待っていた他の面々が一斉にそれぞれの位置につきます。 翁太夫の「とうとうたらり、たらりら〜」の謡いの後、千歳の露払いの舞。端正な顔立ちの梅若慎太朗さんの千歳、若々しく気合が入っていてキレが良い気持ちのいい舞で、若さの花を感じます。梅若六郎さんのまろやかな謡いの声、どっしりと重厚な貫禄のある翁です。 万作さんの三番叟はちゃんと観られたのは今回が初めてかもしれませんが、非常に力強い足拍子、すごく気合が入っていました。「揉の段」では橋掛かりまで行って舞う型が入り、烏跳びは5回でした。後向き、横向き、そして左斜め前に向かって三回。続けて3回跳ぶ時に初めの二回はほとんどちょっとまたぐくらいに小さく、三回目に大きく跳んでいたのは、先日観た万蔵さんと同じでした。やっぱり、元々野村家にはこういう跳び方があるんだと納得してしまいました。 「鈴の段」の前の面箱持ち(アドの太夫)と黒い尉のやりとりが常のやりとりではなく、翁太夫の烏帽子はなんと言う烏帽子か、囃子方の烏帽子はなんと言う烏帽子かとアドの太夫に問い、翁は立て烏帽子、囃子方は折烏帽子と聞いて、「蔵をたて烏帽子、蔵の中におり烏帽子」(だったかな?)なんて言ってめでたがってました。アドが反対に黒い翁の烏帽子を聞くと「ふらふら振り烏帽子」とか、とにかく烏帽子の名前を聞いて、めでたいというやりとりでした(笑)。
「靱猿」 万之介さんが大名役での「靱猿」は初めてです。子猿役の裕基くんは手足が長くなってずいぶん大きくなり、もうそろそろ子猿は卒業かな?でも、茂山さんではもっと大きな子猿が出てますけどね(笑)。 ここんとこ万之介さんが元気になって復帰してくれたのは嬉しいです。でも、この大名役はちょっと迫力に欠ける気がしました。 大名と猿曳の緊張したやり取りの時に笑い声が起きたのに違和感を持った人もいたようですが、寝っころがってごろごろしたりする裕くんの動きにも笑いが起こっていたようでした。劇場だから初見の人もいるのでしょうか、いちいち太郎冠者が間に入るやりとりが可笑しかったのか、また、子猿に気を取られる人たちもいたようです。裕くんは足に引っかかった綱をはずす余裕もあるくらいで、安心して観ていられました。 子猿に因果を含めるところでの猿曳の感情のこもった言葉の抑揚、ちょこんと前に座って顔を見上げる子猿の場面は良かったですね。 子猿と戯れる万之介大名はすっかり好々爺でしたが、やっぱりちょっと心配な足元が気になってしまいました。 |
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