| 2007年7月29日 (日) |
萬狂言 夏公演 |
会場:国立能楽堂 14:30開演
「蚊相撲」 大名:野村万禄、太郎冠者:野村祐丞、蚊の精:野村万蔵
「舟ふな」 太郎冠者:野村虎之介、主人:野村萬
新作狂言「鳴大家守(なきおおやもり)」 作/やまぎわちひろ、演出・台本補綴/野村万蔵、台本補綴/小笠原匡 太郎冠者:小笠原匡、主人:野村扇丞、大ヤモリ:中本義幸
「金津地蔵」 子:野村拳之介 金津の者:野村万蔵 親:野村萬 参詣人:野村万禄、野村祐丞、野村扇丞、山下浩一郎、吉住講
しばらく、書く時間がなくてほって置いたら忘れてしまいそうです。面白い公演だったので、何も書かないのももったいない気がして、少しだけでも書き置いておきます。でも、忘れちゃってるところも多いので悪しからずm(_ _)m。
「蚊相撲」 おなじみの「蚊相撲」を大名を万禄さん、蚊の精が万蔵さんの配役で、太郎冠者が祐丞さんでした。この演目だと祐丞さんが大名があってるような気がしますが、万禄さんの大名も、ちょっと見栄っ張りで軽い感じが合ってました。蚊の精に血を吸われてフラフラフラ〜となる様が面白く。うちわで扇がれる蚊の精がフワフワと風で押し戻される時の型も万蔵家らしく綺麗でした。
「舟ふな」 おじいちゃんの萬さんを相手に、万蔵さんの長男虎之介君が、主人をやりこめる太郎冠者役をがんばってやってました。とってもしっかりしてきて、成長したなあと、本当に感心してしまいました。
「鳴大家守」 一般公募の新作狂言第2作目です。 珍しい鳴大ヤモリを手に入れた主人が、太郎冠者にその世話をするよう言いつけます。この大ヤモリは7回鳴くと幸運が訪れると言われ、「面倒な仕事が増えた」と不満げな太郎冠者に対し、「7回鳴かないだろうか」と気になって仕方のない主人は、その晩も何度も「何回鳴いたか」と聞きに来るので、閉口した太郎冠者は、むりやり鳴かそうとして、うっかり大ヤモリを逃がしてしまいます。しかたなく、自分が鳴き真似をしてごまかしているうち面白くなり、調子に乗っていると、取れた鳴大家守のしっぽを見つけた主人にバレて叱られてしまいます。最後は落語的なオチがつきます。
鳴大家守は人が縞々模様の着ぐるみを着て、大トカゲ、コモドドラゴンみたいです。主人が切り戸口から引き出した時から笑っちゃいました。面は空吹でしょうか?口先に緑色の舌がチロっと付いてます。りっぱなしっぽもあり。わあ!とビックリ腰を抜かす太郎冠者が、気味の悪いと思うのもごもっとも。 夜中に鳴大家守が「トッケイ」と鳴くたびに、何回鳴いたかと、とんで来る主人に起こされて閉口した太郎冠者が、面倒だから早く鳴けと叩くので、逃げようとする大ヤモリ。逃げるヤモリのしっぽを引っ張ると、すっぽりしっぽが取れて逃げられてしまいます。困った太郎冠者が鳴き真似をしてごまかすと、すっかり騙されてとんでくる主人を見て、からかってやろうと思った太郎冠者。「トッケイ、トッケイ・・・トッ」でやめて6回半だ、などと言ったり、そのうちに拍子にのって「トッケイ、トッケイ♪」と踊りだし、ついにおかしいと思った主人が取れたシッポを見つけて太郎冠者に差し出すと「シッポをつかまれた」とオチが付いて、追い込まれていきます。 鳴大家守というキャラが意外で、新しいですが、内容は狂言らしい太郎冠者と主人のやりとりで、楽しく、面白い作品でした。小笠原さんの達者な太郎冠者に、とぼけた表情で騙される扇丞さんの主人も良かったです。
「金津地蔵」 これは、次男の拳之介君が地蔵に化ける子の役を、健気にやっていました。一語一語、思い切り大きな口を開けて、はっきり、大きい声で台詞をいうことに一生懸命な感じが子供らしくて可愛いかったですね。 |
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| 2007年7月28日 (土) |
セルリアンタワー能楽堂定期能7月公演 [第二部] |
会場:セルリアンタワー能楽堂 16:30開演
解説:馬場あき子
「柑子」 太郎冠者:野村万作、主:深田博治
「黒塚」 シテ(里女・鬼女):友枝昭世 ワキ(阿闍梨祐慶):宝生欣也 ワキツレ(山伏):御厨誠吾 アイ(能力):石田幸雄 大鼓:亀井広忠、小鼓:曽和正博、太鼓:金春國和、笛:一噌幸弘 後見:狩野了一、井上真也 地謡:佐々木多門、友枝雄人、金子敬一郎、内田成信 長島茂、粟谷明生、粟谷能夫、中村邦生
「柑子」 主人からあずかった貰い物の三つなりの柑子を食べてしまった太郎冠者が主人に言い訳をする話です。一つ目は槍に結び付けておいたのが落ちて転がったので、好事(こうじ)門を出でずというから止まれと呼びかけ、止まったので、落ちたものはお役に立てないので食べてしまったと言い、もう一つは、懐中に入れておいたらつぶれてしまったので、これも食べてしまったと言う。残りの一つには哀しい物語りがあると言って、俊寛僧都の島流しの話を語り、三人で流されたのに一人だけ残された俊寛と、三つあったのに一つ残った柑子の思いは同じと言って、主人を一旦はしんみりさせたものの、それも自分の「六波羅(腹)に納めた」と白状して叱られてしまいます。 先日の「栗焼」とも似ている調子が良くてしたたかな太郎冠者ですが、なんとも憎めない、万作さんだとほんわかとしてクスリと笑える「柑子」です。でも、「柑子」はこれでいいんだろうなあと思いながらも、善竹十郎さんの「柑子」は、なんであんなに面白かったのだろうと考えてしまう私です。もっと心の底から笑えるくらい面白かったし、「柑子」がこんなに面白いなんて、目から鱗なくらい衝撃でした。それでいて、決して観客に媚びたり、笑わせようという小細工や大げさな仕草や下品なところはありませんでした。これも演者の個性なのでしょうが、万作さんの芸はすばらしいと思いながらも、また、善竹十郎さんの「柑子」が観たいと思ってしまう私でした。
『黒塚』 解説の馬場あき子さんの故郷は東北の安達原の近くだそうです。『黒塚』は観世流では『安達原』と言います。その地方のお寺に「黒塚」の鬼の話が残っているそうです。それによると、都で高貴な屋敷の乳母であった女が仕えていたお姫様が病になり、それを直すには胎児の肝を食べさせるしかないと言われます。都を離れ、東北に下った女のところへ、夫婦者が訪ねてきて、妻は妊娠中で大きなお腹をしています。その夜、女はその妻の腹を割いて胎児の肝を手に入れることができました。ところが、その妻が身につけていたものから幼い時に別れた我が子であることに気付いた女は自らの手で子供と孫を殺してしまったことを知り、罪の深さを嘆き、その手は鬼と化してしまうのでした。しかし、最後には観音の功徳により救われるのです。 能の『黒塚』ではそのような話は出てきません。最後も救われません。しかし、前場の老女が糸車を操りながら謡う糸づくしの歌には都の高貴な暮らしの面影がうかがえ、曰くありげな女の過去をほのめかしています。ろうそく能というかたちで、ほの暗い舞台の上で、前場から怪しい雰囲気が漂っていました。夜になって冷えてきたから山へ行って薪を取ってくるという女が、ふと、止まって決して閨(ねや)をのぞくなと念を押すときの妖気のようなもの。橋懸かりをはじめはゆっくりと途中から思い切ったように足早に去っていきます。 シテが中入りすると、アイの能力の石田さんが出てきて、あんな親切な人はいないと褒めますが、観るなと言われれば観たくなるのが性分というこの男、山伏祐慶に叱られ、しぶしぶ寝る振りをしますが、山伏たちが寝入ったとみるやそろりそろりと起き上がり覗こうとする。すると、祐慶が気付いて起き上がる、男があわててごまかす。そんなことを3回くらい繰り返して笑わせます。それでも、とうとう覗いてしまった男は死骸の山に驚き、腰を抜かしながら、山伏に報告し一目散に逃げて行きます。 中の様子を確認した山伏たちは逃げる途中に薪を担ぎ鬼女となった女に出会い、襲い掛かる鬼女に数珠を揉んで祈り、とうとう鬼女は祈り伏せられて、秘密をあばかれた恨みを残しながら夜風の中に去っていきます。 後場の鬼女が現れるときのお囃子の勢いが凄まじく、幸弘さんの笛のノリや大鼓、小鼓、太鼓とも、とにかく鬼の出現をドキドキするようなお囃子の演出で聞かせてくれました。友枝さんの鬼女は白頭、出てきた時に凄みがありました。秘密を暴かれた恥ずかしさ、怨みに鬼女となって襲い掛かる。でも、あの時、女の閨を覗かなければ、そのまま山伏達は無事に夜明けを迎えられたのではないかと思うと、正体を見られた女がその人を食べた跡が死骸の山だったのかと思われ、見るなと言われると見たくなるアイが人間の業を表し、鬼になった女の悲しさが感じられました。
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| 2007年7月22日 (日) |
能楽BASARA? 御息所の恋 |
会場:国立能楽堂 13:30開演
解説「六条御息所」 林 望
『野宮』 シテ(里女・六条御息所):駒瀬直也 ワキ(旅僧):宝生欣哉 アイ(里人):深田博治 大鼓:安福建雄、小鼓:曽和正博、笛:一噌仙幸 後見:長沼範夫、永島忠侈 地謡:佐久間二郎、古川充、遠藤和久、中所宜夫 中森貫太、観世喜正、関根知孝、弘田裕一
「栗焼」 太郎冠者:野村万作、主人:月崎晴夫
仕舞「半蔀」 観世喜之 地謡:桑田貴志、鈴木啓吾、観世喜正、小島英明
『葵上』梓ノ出 シテ(六条御息所ノ生霊):駒瀬直也 ツレ(照日巫女):坂真太郎 ワキ(横川小聖):宝生閑 ワキツレ(臣下):大日方寛 アイ(下人):竹山悠樹 大鼓:佃良勝、小鼓:鵜澤洋太郎、太鼓:小寺真佐人、笛:一噌仙幸 後見:佐久間二郎、観世喜之 地謡:桑田貴志、小島英明、古川充 鈴木啓吾、奥川恒治、遠藤喜久
今回は六条御息所を描いた能二曲で、副題が「御息所の恋」、仕舞も源氏物語にちなんで夕顔の精がシテの「半蔀」でした。 解説の林先生が六条御息所という人は「源氏物語」ではどういう女性として描かれているかという話をしてくださり、古典が苦手だった私には、そうなのかあと思うことしきり、勉強になりました。 六条御息所は、身分も高く、教養があり、控えめな女性で、決して嫉妬深い人ではないとのこと、しかし、賀茂の祭で目立たない古い牛車で行った御息所が、後から来た源氏の正妻葵の上の車に無理やり退かされ、牛車を壊されるという辱めを受けたことで、ひどく誇りを傷つけられたことが、御息所の心に悔しさ、無念さとして残ったとのこと。そう聞いてみると、御息所という人がまた違った印象で見えてきました。 『野宮』 嵯峨野の野宮の旧跡を訪れた旅僧は、美しい女と出会う。女は僧に、今日は人知れず神事を行なう日であるから帰って欲しいという。僧がその謂れを聞くと、今日は、野宮に篭っていた六条御息所を光源氏が訪ねた日であると答え、御息所の淋しくもはかない境涯を語るのであった。そして、自分こそ六条御息所であると名乗って消えうせる。 アイの里人が現れ、僧に問われるまま野宮の謂れを語り、僧に弔いを勧めて去っていく。 僧が跡を弔っていると、六条御息所の霊が車に乗って現れ、賀茂の祭の日に源氏の正妻葵の上に辱めを受けた無念さを語り、迷いを晴らして欲しいと頼む。そして、月光のもと、昔を懐かしみ、静かに舞を舞い身のはかなさを嘆くのであった。しかし、生死の道に迷う自分は神に意に添わぬであろうとのべつつ、再び車に乗って去っていくのであった。 後場では、大口に長絹の出で立ちで舞を舞います。面は「増」でしょうか、とても気品があって美しく、最後まで迷いを断ち切ることが出来ず、神の意に添わぬであろうと、また迷いの中に戻っていく御息所の奥ゆかしさと淋しさが、しみじみと残りました。
「栗焼」 主人から貰い物の40個の栗を焼くように言われた太郎冠者。あまりにうまそうに焼けたので、一つ二つとつまみ食い。気がつくと全部食べてしまいます。困った太郎冠者は、36人の竈(かまど)の神親子に栗を進上してしまっと言い訳し、残った4つをだせと詰め寄られると、一つは虫食い、あとの三つは栗を焼くときの言葉に「逃げ栗、追い栗、灰紛れ」というとおりで、どこかにいってしまったとごまかして、主人から叱られてしまいます。 栗を焼くときの独演が見どころ、焦げた栗をあわてて火から出すところや、あつあつに焼けた栗を息をふきかけながら食べるさまが美味しそう。なにかと理屈をつけながら栗を食べてしまう太郎冠者や、珍妙な言い訳にクスリと笑いながら、共感を覚える太郎冠者と、叱っても首にはしないであろう主人の大らかさに、ほっこりと暖かいものが残ります。
『葵上』梓ノ出 火入れがあり、ろうそく能での『葵上』は雰囲気満点でした。 六条御息所の魂が意識を離れ生霊となって葵上にとり付いて、懐妊した葵上を苦しめている。ここでも、車争いの屈辱を語るうち激して葵の上を打ち据える前場の霊。そして、後場では鬼となって現れる生霊。横川の小聖との戦いで、人の心を取り戻し、再び葵上を襲わないことを誓って消え失せるのですが、位の高い貴婦人であるがゆえに、理性によって抑えられた感情が分裂して生霊となってさまよってしまう。『野宮』とあわせて見ると、恐ろしさよりも女の悲しさを感じてしまいました。
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| 2007年7月20日 (金) |
第30回納涼能《第一部》 |
会場:宝生能楽堂 14:30開演
舞囃子「高砂」八段之舞 観世清和 大鼓:亀井実、小鼓:観世新九郎、太鼓:小寺真佐人、笛:一噌仙幸 地謡:角幸二郎、藤波重彦、浅見重好、関根祥六、関根知孝
仕舞 「田村」キリ 友枝昭世 地謡:友枝雄人、長島茂、中村邦生、狩野了一 「羽衣」キリ 豊嶋訓三 地謡:田村修、見越文夫、坂本立津朗、遠藤勝實 「三輪」キリ 近藤乾之助 地謡:東川光夫、今井泰行、金井雄資、辰巳満次郎
「蝸牛」 山伏:野村万蔵、主:吉住講、太郎冠者:野村扇丞 後見:山下浩一郎
『乱』双ノ舞 シテ(猩々):金春安明 ツレ(猩々):高橋忍 ワキ(高風):村瀬純 大鼓:柿原崇志、小鼓:曽和正博、太鼓:観世元伯、笛:寺井宏明 後見:櫻間金記、井上貴覚 地謡:金春憲和、山井綱雄、本田芳樹、中村昌弘 吉場廣明、高橋汎、横山紳一、辻井八郎
舞囃子、仕舞とも、さすが各流儀の代表的実力者揃いで、流儀による違いが解るほど詳しくはありませんが、かっこよく、美しく、品格がありました。
「蝸牛」 最後は最近多い、うかれ留でしたが、主が「面白そうだ」と言って加わるのではなく、山伏の動きに乗せられて術にかかったように自然に体が動いてしまうという感じで、いつか山本家で見た「蝸牛」を思い出しました。 万蔵さんの山伏は楽しそうで、でも法力はありそうに見えました。乗せられてしまう扇丞さんの太郎冠者や、主の吉住さんの雰囲気も良かったです。
『乱』双ノ舞 演目は『猩々』ですが、特殊な足使いの「乱」の舞を舞うものです。でも、最近は「乱」の舞の方が多いような気がしますが。 双の舞の演出は猩々が二人出てきます。二人とも赤頭に赤づくめの装束、同じ猩々の面で出てきます。背の高さと声で、後から出てきたのがシテの金春宗家だとわかりました。先にツレが出てきて舞い謡い、少ししてからシテが出てきます。連れ舞いのように二人で舞ったり、橋掛かりと本舞台に分かれて舞ったり、ゆっくりめな動きですが、海の上を足を蹴上げるように歩く特殊な足使いや酒を酌み交わしたりして、楽しそうに見えました。ツレの高橋さんは流れるような優しい動きに対し、金春宗家は間や動きにメリハリがある感じで見ていて気持ちよかったです。 |
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| 2007年7月16日 (祝) |
座・SQUARE 第10回記念公演 |
会場:国立能楽堂 13:00開演
『翁』 翁:辻井八郎 三番三:山本東次郎 千歳:山本凛太郎 笛:一噌幸弘 小鼓:鵜澤洋太郎、田辺恭資、古賀裕己 大鼓:柿原弘和 後見:金春安明、横山紳一 狂言後見:山本則俊、山本泰太郎 地謡:芝野善次、金春憲和、中村昌弘、岩田幸雄 山井綱雄、本田光洋、吉場広明、井上貴覚
『羽衣』替ノ型 シテ(天人):高橋忍 ワキ(白龍):宝生欣哉 ワキツレ(漁夫):大日方寛、御厨誠吾 笛:松田弘之、小鼓:大倉源次郎、安福光雄、太鼓:観世元伯 後見:横山紳一、辻井八郎 地謡:芝?眞理、本田布由樹、中村昌弘、後藤和也 金春穂高、金春安明、井上貴覚
「素襖落」 太郎冠者:山本則俊 主:山本則孝 伯父:山本東次郎 後見:遠藤博義
仕舞「舟弁慶」キリ シテ:金春安明 地謡:金春憲和、高橋忍、辻井八郎、中村昌弘
『石橋』古式 シテ(老人・白獅子):山井綱雄 ツレ(赤獅子):井上貴覚 ワキ(寂昭法師):森常好 間(仙人):山本則重 笛:一噌隆之、小鼓:観世新九郎、大鼓:柿原光博、吉谷潔 後見:本田光洋、本田布由樹 台後見:金春穂高、中村一路 地謡:大塚龍一郎、中村昌弘、高田富夫、後藤和也 辻井八郎、高橋汎、高橋忍、本田芳樹
『翁』 辻井八郎さんの披きで、若い翁という感じです。やはり、かなり緊張した面持ちでしたが、正先で深々と礼をして、この時間が結構長く、丁寧に礼をしていたように思います。そして謡の声がとても良かった。 金春流の場合は他流と違い、面箱から翁面を出して整えるのはシテが行ないます。前の方の席だったので、手元をじっと見てました。プログラム解説によると、シテが面箱から翁面を取り出し、紐をほどき、「開眼」し、紐を揃える。と、あります。面に掛けてあった布を取るのが「開眼」ということでしょうか、そんな意味を考えると、これは面箱持ちが面を出すより、シテが行なうほうが理にかなっているような気がしました。 「どうどうたらりたらりたらりら」という翁の謡は、諸説あって、はっきりとはしないようですが、近年では滝の落ちる音を表したという説が有力らしいです。その後の千歳の「鳴るは滝の水 鳴るは滝の水 日は照るとも たえずとうたり ありうどうどう」という謡からも、なるほど、そうかもと思えます。 山本凛太郎くんによる千歳。シテ方がやる千歳の場合はこのくらいの子供がやったりしますが、狂言方の千歳では初めて観ました。堂々と、そして颯爽として清々しい千歳でした。 山本東次郎さんの三番三は、好きです。あの歳でエネルギッシュ、そして足捌きが美しく(ちょっと足元に集中してしまいました。)、安定感があって、力強い。 お囃子も鵜澤洋太郎さんの小鼓も好きなのですが、笛も幸弘さんだし、気合が入ってて気持ち良かったです。
『羽衣』替ノ型 天人の装束が、腰に巻いた縫箔が白地に金の地紋があり、鳳凰や花の模様が品よく美しく、ピンクの花のついた天冠で、羽衣は朱の舞衣を壷折に着付けていて、面も品よく可愛らしかったです。松田さんの笛が気持ちよく、ちょっと睡魔に負けてしまいました(^^;)。
「素襖落」 プログラムでは、シテは則直さんでしたが、具合が悪いのか配役が変わっていました。シテの太郎冠者は則俊さんに、則俊さんの役だったアドの伯父を東次郎さんが演じました。 いつも、あまり表情を変えず硬い感じのする則俊さんの太郎冠者はどうなんだろうと思っていましたが、これが、普段真面目くさった人が泥酔したらこんな感じになるんじゃないかと思えて、非常に面白かったです。改めて、酔っ払いの雰囲気をよく描いている台詞の面白さにも感心しました。相対する東次郎さんのちょっとあきれて困惑する伯父が面白さを増していました。 太郎冠者が貰った素襖を落として、どこへやったやらと急に不機嫌になるさまも、楽しく酔っ払ってたのがいっぺんに醒めたような変わりようが則俊さんらしく、思いのほか楽しかったのが、うれしい誤算でした。
仕舞「舟弁慶」キリ 後場の平知盛の霊が長刀を持って現れ、義経に襲いかかって、弁慶に祈り伏せられるまでのシテの舞ですが、長刀を持っての舞はかっこ良かったです。
『石橋』古式 普段は後場だけの半能が多い『石橋』ですが、前場からの通しで、前シテは童子ではなく、老人でした。背中に背負っ柴に紫の花が付いていたのが、なんか可愛らしかったです。前半は床机に掛けて語り、それも地謡がほとんど謡って動きが少ないのですが、石橋の凄まじい様はわかりました。 アイの仙人の則重さんの語りははっきりと解りやすくて、私は今まで獅子は対岸の文殊の浄土に現れるのだと何となく思ってたのですが、仙人の語りで、どうやら石橋のこちら側に現れて牡丹と遊び戯れるのだと気がつきました。 山井さんの獅子は群勢の時は勢いのいい赤獅子でしたが、今回はシテの白獅子でなかなか威厳がありました。ツレの井上さんの赤獅子も勢いがあって良かったです。 |
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| 2007年7月6日 (金) |
千五郎狂言会 第六回 |
会場:国立能楽堂 19:00開演
新作狂言「宗旦狐」作:井口海仙 補筆・演出:茂山千之丞 数寄人:茂山千五郎、狐:茂山正邦 笛:杉信太朗 地謡:茂山茂、茂山千之丞、茂山千三郎、松本薫 後見:茂山七五三
「魚説経」 出家:茂山千作、施主:茂山七五三 後見:島田洋海
「首引」 親鬼:茂山千五郎 鎮西ゆかりの者:茂山茂 姫鬼:茂山千三郎 眷属鬼:茂山正邦、井口竜也、島田洋海、松本薫 後見:茂山千之丞
この日は、かなり寝不足気味のため、どうしても時々意識が飛んでました。初めて見た「宗旦狐」については、もう一度見ないとちゃんとした感想も書けないかと思いますが、覚えているところで、気のついたことなど書いておきます。「宗旦狐」については、昭和51年初演で、千宗旦の没後350年を記念しての新配役での上演だそうです。
新作狂言「宗旦狐」 近頃洛中の茶会に、千家の宗匠・宗旦の偽者が出没するというので、下京に住む数寄人が一計を案じて、偽りの茶会を催すと言いふらして偽者をおびき出します。しかし、その立ち居振る舞い、お点前は見事なもので、数寄人も感服しますが、ただ一つ、月影に映るその影は・・・。
まず、千宗旦の弟子である千五郎さんの数寄人が、師匠宗旦の偽者が洛中の茶会に、それも日暮れころから催される茶会に現れるというので、おびき寄せるために茶会を催すと触れ回ります。さて、待っていると、偽宗旦が現れますが、「釣狐」の伯蔵主のような面をかけた偽宗旦が、出てきた時には伯蔵主狐のような動きで、あたりを伺い、やがてゆっくり歩いてきます。装束は茶人や新発意の装束ですが、雰囲気は「釣狐」の伯蔵主というところでしょうか、下に縫いぐるみは着てないようでしたが。 お茶会でお茶を点てる場面では、千五郎さんのお茶を点てる身振りの細かいこと。懐紙を畳む仕草も細かくやっていて面白かったです。お点前も見事にやって見せる偽宗旦ですが、茶を飲もうとするとなぜかくしゃみが出る。どうやら数寄人が用意していた天ぷらの匂いに反応しているらしい。「クシー、クシー」と、とうとう我慢しきれず油揚げの匂いに反応する狐の仕草になり、思わず四つんばいになった偽宗旦の月に照らされた影を見た数寄人がこの狐めと怒ると、正体がばれた狐さん、「月を騙すのを忘れた」としっぽを出してしまいます。隠していたしっぽがにょろり、最後は数寄人に追われて逃げていきました。 「釣狐」をやった人でないと出来ないような、エッセンスが入った曲でした。お茶を点てる仕草が細かくてちょっと面白かったです。
「魚説経」 プログラムでは配役が逆でしたが、変更になったそうです。 和泉流と大藏流では少し違って、和泉流では新発意が住持の留守にお布施欲しさに堂の供養を頼みに来た男について行ってしまうわけですが、だから、子どもがやったりするのですが、大藏流では殺生が嫌になった漁師が出家したことになっています。俄か坊主で経も読めず説経もできないので、都で勤め口を探そうと海道に出ると、たまたま道連れになった信心深い男に持仏堂で法事をしてくれる僧を探していると聞き、早速話がまとまって付いて行くわけです。 魚の名を並べて説経する俄か坊主の魚のダジャレづくしの説経にはいつも笑ってしまいますが、千作さんは表情や言い方も相まってとぼけぶりも面白い。おかしいと気付いた施主に咎められても、なおも魚の名でからかうあたりも、ホントに調子に乗って面白がってるという感じです。 ただ、最初に持仏堂に着いて座った時に千作さんの息使いがハアハアと非常に荒かったのが気になりました。時々足の具合が悪かったり、体調がすぐれない時もあるようで、それでも声も力強い千作さんですが、やっぱりお歳なので心配です。
「首引」 いつも、女役が多い茂さんが力自慢の鎮西ゆかりの者で、姫鬼が千三郎さん。親に喰い初めをしろと言われた姫鬼が、ちょっと凛々しくてイイ男の鎮西ゆかりの者に、恥らっているように見えたのが面白かった(私にはそう見えちゃったのですが)(笑)。腕押し、すね押しで、すぐ負けては大げさに痛がる姫鬼に千五郎さんの親鬼の親バカぶりも楽しい。 最後に眷属鬼どもを呼び出して首引きの加勢をさせるものの、みんな将棋倒しになってほうほうの態で逃げていく後に倒れた姫鬼だけ置き去り(オイオイ)、お父さんそれは無いでしょう(爆)。出てきた時と同じく可愛い子ぶって帰る千三郎さんの姫鬼がツボでした。千五郎家、やっぱり笑いのツボ押さえてますねえ。 |
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