| 2008年2月24日 (日) |
第8回地域伝統芸能まつり 2日目 |
会場:NHKホール 14:30開演
2日目は、2階左側中程の席で、前日の3階席に比べるとずっと舞台が近い感じで見やすい席でした。
1.秋田の「むかしこ」と「猿倉人形芝居」(秋田県羽後町) 2.「天人」と「津波古の棒術」(沖縄県南城市) 3.安来節と銭太鼓(島根県安来市) 4.ケンケト祭(滋賀県竜王町) 5.「翁」翁/観世清和、三番叟/野村萬斎 6.大蔵谷の獅子舞(兵庫県明石市) 7.盛岡さんさ踊り フィナーレ
秋田の「むかしこ」と「猿倉人形芝居」 町の伝承施設「むかしがたり館」での「むかしこ(昔話)」の様子を、舞台に囲炉裏端を囲む部屋のセットを作って再現。語り部と子供たちが囲炉裏を囲んで、秋田弁の昔話とわらべ唄などが披露されました。「猿倉人形芝居」は吉田榮楽一座による昔から伝わる人形芝居。一人で2体の人形を操り、女の山賊が旅人を殺し、お金を奪った時から顔が鬼に変化していく様を素早い首の挿げ替えの七変化で見せて面白かったです。
「天人(あまんちゅう)」と「津波古の棒術」 「天人」は天地創造の神(天人)が村の120歳の長老と孫の前に現れ、白米と赤米を授けてその育て方を教えるという話。天人は3メートルの巨人で一人がもう一人の肩の上に立つ二人一組で演じます。「棒術」のほうは、一人から五人までの棒を使った演武がダイナミックで見ごたえがありました。
「安来節と銭太鼓」 銭太鼓は一尺余りの竹をくり抜き、両端に穴のあいた銭を十文字になるよう取り付けたものを回したり床に当てたりリズミカルに動かして歌に合わせて音を出します。これは後で、竹下景子さんが挑戦していましたが、見ているより回し方が、かなり難しそうでした。 安来節のリズムに合わせての「どじょうすくい」は男踊りではユーモア溢れる写実的な踊り。独特な腰の動きに笑ってしまいました。それに対し女踊りはみんなで揃えて優美に軽快に踊っていました。
「ケンケト祭」 「長刀踊り」として知られている神事芸能だそうで、町の11歳から21歳までの長男だけが踊れる踊りだそうです。勢ぞろいした長男たちは可愛い小学生から今時の茶髪にパーマのおにいちゃんまでいるのが、いかにも町の祭りらしいです。それが長刀を振り回して踊る姿はなかなかカッコイイもんです。
「翁」 観世宗家の翁は品格を感じるし、明晰な謡いで、それに今回は舞台両サイド上の方に電光掲示で謡いの言葉とカッコ書きで現代語訳まで出ていて、翁の謡いの意味が少し分かったのが有難かった。 お囃子のメンバーも笛が藤田六郎兵衛さん、小鼓頭取は大倉源次郎さん、大鼓は亀井広忠さんというメンバーで、お囃子がまた最高でした! 萬斎さんの三番叟は、やっぱりいいですねえ。この頃はやっぱり、「揉之段」より「鈴之段」がいいなあと感じることが多いです。段々高揚してくる、昇りつめていくような感覚がたまらないです。会場がシーンと静まり返って、大勢の観客の気持ちが集中しているのが良くわかりました。幕が下りて大きな拍手が起きた後、「はー」とため息のような声も聞かれ、みんな息をのんで観ていたという感じでした。 今回の面箱持ちは遼太くんでした。幕が上がって舞台上にしつらえた能舞台に、それぞれの位置に座って控えた形で始まり。最後も「鈴の段」が終わった時の状態で幕が下りました。時間の関係もあったのでしょうが、本当は面箱持ちを先頭に出てくるところから、皆引き揚げるところまで観たかったです。やっぱり、出てくる時から厳かな雰囲気につつまれますから。それに、遼太くんが面箱持ちだというのが、初めて観る人には分からないでしょう。
「大蔵谷の獅子舞」 次々と獅子の中の人が変わって繋ぎながら勢いのいい獅子舞を見せてくれます。後ろ脚をやってる人の肩に頭の人が乗って立ち上がったり、「3人継ぎ」というので、それが一番上を子供にして3段になったりと見せ場も多く面白かったです。獅子は常時1頭か2頭出てましたが、終わってから挨拶に揃ったら、獅子頭は大小4頭あったようでした。
「盛岡さんさ踊り」 さんさ踊りは地域ごとに踊りや太鼓のリズムが異なるそうですが、今回は代表で「盛岡さんさ踊り清流会」の人たちが踊りを披露してくれました。最初に映像で、実際のお祭り「盛岡さんさ踊り」の光景を見せてくれましたが、3万人以上が踊り、太鼓の数の多さは日本一というこの祭りはまさに壮観!実際に見に行ってみたいものです。 大きな太鼓を前につけて、テンポよくバチ捌きも見事に太鼓を叩きながら大勢で踊るのは見ていても浮かれてきそうで、最後は、祭り気分最高潮でのフィナーレとなりました。
ロビーでは各地の特産品も売られていて、かなり売れていた様子でした。 |
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| 2008年2月23日 (土) |
第8回地域伝統芸能まつり 1日目 |
会場:NHKホール 14:30開演
席はハガキと引き換えで先着順ではなく、無作為に渡されるということで、案の定3階席になってしまいましたが、それでも思ったほど見難くはなくて良かったです。休憩時間を入れて全体で4時間かかりました。 日本各地に伝わる伝統芸能と古典芸能が2日間に渡って演じられます。 今回のテーマは「翁と童子」ということで、各地の祭礼や古典芸能に出てくる神は翁や童子の姿を借りて現れる。お爺さんと子供は神に近いということです。 司会は水谷彰宏アナウンサーと竹下景子さん。オープニングは上田秀一郎さんの和太鼓で始まりました。
1.猿の子踊(鹿児島県指宿市):下門猿の子踊保存会 2.奈良豆比古神社の翁舞(奈良県奈良市):奈良豆比古神社翁舞保存会 3.豊前市の岩戸神楽(福岡県豊前市):大村神楽講 4.地唄「雪」:舞/大和松蒔、唄・三弦/富田清邦 5.狂言「金津地蔵」:野村小三郎、野村信朗ほか 6.角兵衛獅子(新潟県新潟市):角兵衛獅子保存会 7.酒田まつり(山形県酒田市):酒田まつり実行委員会
「猿の子踊」 竹に菓子を飾ったものを立て、その両側に白装束、赤い袴で右手に扇子、左手に御幣を持った太夫(猿使い)が立ち、猿は赤頭巾に上下赤の衣装、顔も赤く塗っています。笛、鉦、太鼓の音楽と猿使いの台詞で猿が芸をする様を親猿、小猿の3歳から15歳の子供たちが演じますが、まだ出来ない技の時は小さい小猿は後からついて行くだけなのですが、それがまた可愛くて可愛くて(^^)、見ているだけで微笑ましくて楽しかったです。
「奈良豆比古神社の翁舞」 これは、能「翁」ができる前の原型ともいうべきものです。千歳は12歳から15歳までの少年と決まっているそうで、面箱持ちと兼ねていました。翁は太夫の舞と太夫と脇の三人舞があり、三番叟の前舞、千歳と三番叟の問答、三番叟の後舞で構成されています。お囃子は笛と小鼓が二人で、能のようなリズム感はなくて淡々と同じリズムを刻んでいる感じ、舞もゆっくり歩くほうが多くて、やっぱり能のように洗練されていく前の素朴な神事としての原型なんだなという感じが強くしました。申し訳ないことに、この時はとっても眠かった(^^;)。
「豊前市の岩戸神楽」 この岩戸神楽は33番といわれ、たくさんの演目があるそうですが、今日はその中から「盆神楽」と「湯立神楽」が演じられました。「盆神楽」は二つの盆にいっぱいに入れられた米をこぼさずにくるくる回ったり手を回したりして舞うのが見事。「湯立神楽」では神主と鬼が出てきて、鬼が高さ10メートルもある柱に登り、斜めに張られたロープをつたって下りてくるというなかなかスリリングなもの。「お〜!」と声も上がる、離れ技的な芸能で非常に面白かったです。お見事!
地唄「雪」 地唄舞は日本舞踊のような華やかな動きは無く、お座敷の狭い空間で内面の想いを表す、しっとりした舞。この曲は今は浮世を捨て尼になった女が昔語りで、愛しい人と別れた女心を雪の中に舞い描くというもの。白い着物に黒地の帯、着物の裏地もグレーで、番傘も全体的にモノトーンの中、ちらちらと雪の降る情景としっとりとした舞が本当に美しかった。
狂言「金津地蔵」 これは、小三郎さんと信朗くんの親子共演。後で、小三郎さん親子のインタビューもありました。お祖父ちゃんの又三郎さんとの親子三代でやった最後の演目がこの「金津地蔵」だそうです。信朗くんは、もう6歳になるらしいですが、地蔵さんに化けた信朗くんは本当に可愛くて、会場も笑いに包まれ、ほのぼの楽しい気分になりました。又三郎さんももっと初孫の信朗くんと一緒に舞台をやりたかっただろうなあと、ちょっと思いました。
「角兵衛獅子」 新潟市が発祥で全国各地を渡り歩いた大道軽業芸で、角兵衛さんが作ったので「角兵衛獅子」というのだそうです。保存会が出来て地元の小中学生が受け継いでいるとのことですが、お囃子をする人がいなくなってしまったため、お囃子と歌はテープです。非常に体が柔らかい動きは、女の子の方が合っているらしいです。
「酒田まつり」 きやりを歌う人たちが客席の中を通ってあらわれ、舞台の幕が上がるとやぐらの上に太鼓囃子の一団が酒田ばやしの太鼓を打ち、最後に大獅子の山車行列が出てきます。子供が引いてくるのは赤い獅子、その後、大きな黒獅子が出てきました。舞台上は2台の獅子でいっぱいでしたが、賑やかな祭り気分での締めくくりにはぴったりでした。 |
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| 2008年2月15日 (金) |
国立能楽堂定例公演 |
会場:国立能楽堂 18:30開演
「痩松」 山賊:山本東次郎、女:山本則重
『小塩』 シテ(老人・在原業平):友枝昭世 ワキ(花見の者):宝生閑 ワキツレ(同行の者):則久英志、御厨誠吾 アイ(里人):山本東次郎 笛:一噌仙幸、小鼓:大倉源次郎、大鼓:亀井広忠、太鼓:前川光長 後見:中村邦生、友枝雄人 地謡:粟谷充雄、金子敬一郎、長島茂、内田成信 粟谷明生、粟谷能夫、香川靖嗣、大村定
「痩松」 最近稼ぎの悪い山賊が、仲間内で稼ぎの良い時を「肥松(こえまつ)」、悪い時を「痩松(やせまつ)」というので、今日は「肥松」になりたいと出掛けてきます。そこへ郷里に親を訪ねる女が通りかかったので、山賊は長刀を振り上げて女を襲い、持っていた袋を取り上げて、追い払ってしまいます。山賊が袋から帯や小袖を取り出して喜んでいると、女が戻ってきて、置いてあった山賊の長刀をつかむと、逆に山賊を脅して自分の物だけでなく、山賊の刀や小袖を取り上げて持って行ってしまいます。
「痩松」というと、以前の新宿狂言でやった時、バックの松を描いたカーテンが広がったり、縮まったりして、「肥松」「痩松」を表していたのをなんとなく思い出してしまいました。 東次郎さんが山賊役はなんとなく珍しい気がしますが、女を脅して取り上げた袋の中から白粉や帯、小袖などの戦利品を取り出して大喜びして油断している隙に、戻ってきた女の反撃にあって、取り戻されてしまうだけでなく、自分の物まで取り上げられてしまうという、情けない結末。体格も良くて強そうな則重さんの女に脅される東次郎さんの山賊が、よけい情けなく気の毒に見えてしまいました(笑)。ここでも、したたかでたくましいのは女ですね。
『小塩』 下京に住む男たちが大原山で花盛りの桜を見物していると、そこへ、桜の枝を頭に挿した老人が現れ、古歌を口ずさむのを聞いて、都の男は「大原や小塩の山も今日こそは、神代の事も思い出づらめ」という和歌について尋ねます。老人は、それは二条の后がこの大原野にいらした時、業平が后との深い契りを結んだ昔を思い出して詠んだもので、夫婦の情は神代から今に至るまで変わらず深いものだと語ります。男たちは風雅な老人と一緒にあちこち花見をしてまわりますが、老人はいつの間にか消え失せてしまいます。 里人から小塩明神の事や業平と二条の后の事などを聞いた男は先ほどの老人が業平の亡霊だと聞いて弔っていると、一台の花見車が現れ、中から業平が昔の姿で現れ、月夜の花見を始めます。業平は昔を思い、数多くの和歌を引用しながら男女の恋心を語り、優雅に舞を舞います。そして、二条の后が小塩山に御幸になった時のことが忘れられないと語るうちに、曙とともに業平の姿は消えてしまうのでした。
ワキ、アイ、囃子方とも最高のメンバーでした。後シテの業平の霊は綺麗な薄紫の狩衣、初冠に追掛をつけ、面は若い美男子の「十六」という面だったそうです。黒垂を使わず耳が見えていたのはプログラムや本に出ている写真でもそうなので、「小塩」ではそういうものなのかもしれませんが、初めて観たせいもあり、最初は横を向くと素顔が見える感じで、ちょっと違和感がありました。しかし、観ているうちにそんなことは気にならなくなり、桜の花の中で優雅に舞う、まさにこの世の者でない者を観ている、美しさにただうっとり、じんわり、静々と幕入りする姿も息をのんで見守るばかりでした。いつも友枝さんの舞台の幕入りは余韻に浸って静まり返り、囃子方が幕入りするのを見送って拍手が起こります。こういうひと時を味わえるのも、やっぱり友枝さんならではです。 |
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| 2008年2月10日 (日) |
大藏会 大藏流狂言第25世宗家大藏彌太郎宗家継承披露 |
会場:国立能楽堂 14:00開演
「三本の柱」 果報者:茂山忠三郎 太郎冠者:茂山良暢 次郎冠者:古川道朗 三郎冠者:河原康生 大鼓:大倉三忠、小鼓:亀井俊一、太鼓:観世元伯、笛:寺井久八郎
「素襖落」 太郎冠者:大藏千太郎、主:大藏基誠、伯父:善竹忠重
舞囃子「高砂」 金春安明 大鼓:大倉三忠、小鼓:亀井俊一、太鼓:観世元伯、笛:寺井久八郎 地謡:井上貴覚、中村昌弘、高橋忍、高橋汎、山井綱雄
「釣狐」白式 伯蔵主(狐):大藏彌太郎、猟師:山本東次郎
「寝音曲」 太郎冠者:茂山千作、主人:大藏吉次郎
「福部の神」勤入 鉢叩き:善竹忠一郎 鉢叩き:善竹十郎 参詣人:善竹隆司、善竹徳一郎、善竹隆平、善竹忠亮、榎本元、宮本昇 福部の神:大藏教義
附祝言:茂山忠三郎、大藏吉次郎、大藏千太郎、大藏基誠、茂山良暢
大藏流宗家継承披露と言うだけあって、こういう時でないと見られない大蔵流各家代表揃い踏みの贅沢な顔ぶれ。普段はめったに見られない共演もあり、これを観ない手はありません。
「三本の柱」 家を新築する為の柱を、三人の召使達に山へ取りにいかせる果報者ですが、三人の知恵を試すために「三本の柱を三人の者共が、銘々二本づつ持って来い」と言いつけます。三人の冠者達は試行錯誤の末、柱を三角形に置き、それぞれが2本の柱の端を持って、囃しながら帰ってきます。謎解きをしたことに喜んだ果報者も一緒になって浮かれて喜ぶという、家の新築を題材としためでたい話。
忠三郎さんのおっとりおおらかな雰囲気が、さらにめでたさを醸し出していました。二人は忠三郎家のお弟子さんだと思われますが、三人が合ってないところがあって、ちょっと残念。結構年配の方たちのわりに、忠三郎さん親子に比べるとだいぶ実力に差があるような感じがしました。
「素襖落」 急に伊勢参りに行くことにした主人は、前から約束していた伯父を一応誘っておこうと太郎冠者を使いにやり、餞別をもらうと土産物が大変だから、伯父に聞かれても共は決まっていないというように命じます。ところが伯父の家で酒を振る舞われ、餞別の素襖まで貰ってしまった太郎冠者はすっかり酔っ払って上機嫌で帰ってきます。そして迎えに出た主人の前で調子に乗って謡いを謡い、動き回るうちに隠していた素襖を落してしまい、それを拾った主人はあたりを探しまわる太郎冠者をからかい、目の前に素襖を突きつけます。あわてて主人から素襖を取り戻した太郎冠者は叱られて逃げていきます。
この曲は、なんとなくベテランの年配者がやるものと言う印象があったのですが、若手の大藏兄弟による「素襖落」いやぁ、面白かった♪千太郎さんの酔いっぷり、表情、「なにが〜」と聞き返す間の取り方。主人役の基誠さんの最初の不機嫌な様子から素襖を見つけて、してやったりの嬉しそうな表情への変化。この二人、上手いじゃないかと、感心してしまった。
舞囃子「高砂」 この地謡は、気合が入ってる感じがしました。高砂明神になってからの舞ですから、力強さと勢いと威厳があって良かったです。
「釣狐」白式 先代宗家が継承披露で演じたのが「釣狐/白式」でまだ三十代だったそうですが、今回の彌太郎師は還暦を迎えるそうです。二十代の披きの「釣狐」、四十代の「釣狐」、六十代の「釣狐」、やはりそれぞれ全く印象の違うものです。出てくる時から「釣狐」独特の緊張感が会場に漲ります。白狐なので白い狐面に白蔵主の姿も白い頭巾を被って、ちょっと尼僧のように見えました。若い狐に比べ、勢いや動きは少ないですが、老狐の悲しみは感じられました。それに東次郎さんの猟師が、さすがです、非常に良かったですねえ。後シテの白狐が罠にかかるのを見守る目の鋭さ、捕まえる時の緊張感が一気に高まるのは東次郎さんだからこそという感じでした。
「寝音曲」 茂山千之丞さんと、大藏吉次郎さんの共演は初めてみました。この公演ならではのことですね。やっぱり、千之丞さんの太郎冠者は最高です。いつもながら千之丞さんの細かい演技がなんとも可笑しい。主人の膝を貸してやろうという時に主人の膝をちらっと見る目つきなど、狂言では、あまり目で演技をしないと言うけれど、千之丞さんは演劇的なところもあるのか、結構そういう細かい演技で、くすっと笑わせてくれます。吉次郎さんの主人は正面を向いて座るのではなく、横向きに座って正面を向いた太郎冠者の頭を受け止める形です。初めは横になった状態で一回謡い、もう一度謡わせる時にそっと頭を上げたり下げたり。いつもながら声のいい千之丞さんの謡いに聞き惚れてしまうところ、苦しそうに声が出ないふりをするのが面白い。ついには調子に乗って舞いだす太郎冠者ですが、主人はそれを上機嫌でにこにこ見ています。ふと気付いた太郎冠者が「あっ!」「しまった」この間の取り方が見事です。逃げる太郎冠者を主人がもう1曲謡ってくれと追いかけて幕入りになります。和泉流だと、主人が怒って追いかけますが、大藏流の主人はそんな太郎冠者を許して「もっと謡ってくれ」となります。どちらも面白いですが、大蔵流の主人の方がおおらかで、祝いの席には相応しいですね。
「福部の神」勤入 都の鉢叩きが朋輩を伴って、北野天神の末社、福部の神に参詣して、踊り念仏をすると、参詣を喜ぶ福部の神が顕れて、めでたく舞い納めるという話。最後もおめでたムードで締めくくり。プログラムでは、この日のお囃子は皆同じ面々のはずでしたが、太鼓方が観世元伯さんから別の人に代わっていました。お名前はちょっとわかりません。 関東、関西の善竹両家の面々と、大藏家のお弟子さんが鉢叩きと参詣人になり、福部の神を吉次郎さんの息子の教義さんがやりました。普通だと福部の神がシテでベテランがやるような気がしますが、「福の神」と違い、鉢叩きの二人がシテでした。以前に万蔵家の鉢叩きでの踊り念仏は万之丞さんの演出ということで動きが多く踊りという雰囲気で面白かったですが、これは正統派の鉢叩きという感じで、鉢や瓢箪を叩いて念仏を唱えながら歩くというものでした。福部の神様は若い人がやったので、まだ若々しい神様という感じでした。でも、忠一郎さんの声と十郎さんの醸し出す雰囲気はやっぱりいいです。
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