| 2008年7月27日 (日) |
萬狂言 夏公演 |
会場:国立能楽堂 14:30開演
「空腕」 太郎冠者:野村万禄、主:小笠原匡
「伊呂波」 太郎冠者:野村眞之介、主:野村萬
素囃子「羯鼓」 大鼓:柿原光博、小鼓:森澤勇司、笛:槻宅聡
「鬮罪人」 太郎冠者:野村万蔵 主:野村扇丞 町内の人:野村萬、小笠原匡、山下浩一郎、吉住講、野村祐丞
「空腕」 臆病者のくせに嘘の腕自慢をする太郎冠者に、主が一計を案じて、来客のために魚を求めてくるように、淀まで使いを命じます。太郎冠者は主人の命令なので、しぶしぶ用心のために太刀を借りて出かけますが、日が暮れてくると、臆病な冠者は物陰におびえ、命乞いをして太刀まで差し出してしまいます。様子をみるため後を追ってきた主人は、それを見つけ、怒って冠者を打ち、太刀を取り上げて帰って来ます。気絶した冠者は目が覚めて生きていたのを喜びますが、太刀がない。帰った冠者は、主人に大勢の男たちに襲われて斬り伏せてきたという武勇を語り、太刀が折れてしまったので投げつけて帰ってきたと言いますが、折れたはずの太刀を見せられ、なおも「御出世の瑞相に太刀が癒え合った」と言い訳して叱られてしまいます。 太郎冠者の独り芝居が多く、演者の力量が出る演目ですが、万禄さんの怯えっぷりと、帰ってからとうとうと語る武勇伝も、万禄さんもとぼけた雰囲気が出て良かったように思いました。
「伊呂波」 プログラムでは、太郎冠者と主になっていましたが、配役は父と子(金法師)の間違いだと思います。 男が息子も成人したので寺子屋へ入れて手習いをさせようと言って、いろはを教えますが、親が「い」と言えば「灯心」、「ろ」と言えば「櫂」と、先走った知恵を出すので、今度は、何でも言う通りに口真似をせよと命じます。今度は、すべて鸚鵡返しに余分なことまで真似するので、叱ると、それまで真似します。父が怒って引き倒すと、それも真似して親を引き倒してしまいます。 「口真似」や「咲華」と同じようなストーリーですが、子供がやるとまた可愛らしい。和泉流では「靱猿」が初舞台ですが、大藏流では「伊呂波」で初舞台が多いとか。でも、台詞が多くて難しそうです。 万蔵さんの三男の眞之介くんは、長い台詞もしっかりとしていて、それでいてとっても子供らしい可愛さがあって、とにかくメッチャ可愛かったです(^^)。後見の万蔵さんはやっぱり心配なのか、ちょっと厳しい顔をしてましたが(笑)。父親役のお祖父ちゃんの萬さんも穏やかな表情が良かったです。
「鬮罪人」 これは、以前、萬さんが太郎冠者で、万蔵さんが主のものを観ましたが、今回は万蔵さんの太郎冠者に扇丞さんの主。町内の人の筆頭が萬さんという珍しい配役でした。 以前観た萬さんの太郎冠者がとっても印象に残っているのですが、最近三宅家の若手の「鬮罪人」を観たばかりだったので、万蔵さんが橋懸りから様子を窺う時の表情など、やっぱり上手いなあと感心することが多かったです。扇丞さんの主も怒って刀を抜こうとするところはなかなかの迫力でしたが、恐い主人は萬さんか万蔵さんの方が迫力ありそうです。 |
|
| 2008年7月26日 (土) |
セルリアンタワー能楽堂 定期能7月公演―喜多流― |
会場:セルリアンタワー能楽堂 16:00開演
[第二部]
解説:馬場あき子
「栗焼」 太郎冠者:野村万作、主:野村万之介 後見:深田博治
『鵺』ろうそく能 シテ(舟人・鵺):友枝昭世 ワキ(旅僧):森常好 アイ(里人):深田博治 大鼓:亀井広忠、小鼓:曽和正博、太鼓:大川典良、笛:槻宅聡 後見:粟谷能夫、狩野了一 地謡:大島輝久、友枝雄人、金子敬一郎、内田成信 中村邦生、出雲康雅、香川靖嗣、長島茂
二部には、万作さんと友枝さん二人の人間国宝が登場ということで、やっぱり馬場さんテンション高い! 南北朝という激動の時代背景に現れた鵺は、頭は猿、足は虎、尾は蛇で声が鵺(鵺とはトラツグミという鳥の異名)という妖怪。その時代の人心を表したものでもあるようです。 また、鵺を一矢で落としたという頼政は、馬場先生の話では、見た目も所作も美しく、よい声で歌を詠んだとのこと。かなりいい男だったようです。 それから、鵺の詞章には、いくつもの恋の歌が使われていて、人生の悲しみや挫折を恋の歌で表しているところが面白いところだそうで、能も和歌が分かると、もっと面白いんだろうなと思いました。 鬼や化け物が出てくる能というと、現在能として演じられるのが普通ですが、この『鵺』は世阿弥が修羅能として表したもので、そこに世阿弥の思いがこめられているようです。 最後に、馬場先生が大阪湾の旗印が、フランスと友好姉妹都市を結ぶ時に、大阪湾に空舟に押し込められて流されたという鵺をデザインしたものに変えたそうで、旗の絵のコピーまで見せてくれました。貴族の紋章みたいでした。
「栗焼」 万作さんの太郎冠者に万之介さんの主人が、やはり息が合っていて面白い。万作太郎冠者が栗を焼いて、はねさせて驚いたり、焦がしたり、アツアツの栗を息を吹きかけてさましながら食べる様子が、焼ける栗が見えるようで美味しそう。あまりの美味しさに思わず全部食べてしまい、主人に言い訳する太郎冠者。確かに、美味しい栗は後を引いて止まらなくなっちゃう太郎冠者の気持ちが分かるけど、あまりにあっけらかんと調子に乗った言い訳にはやっぱり無理が・・・最初の竈の神の話には、しかたがないと納得した万之介主人も、全部食べたと知っては、「なんじゃ〜」という感じ。軽妙な万作さんの太郎冠者と、ちょっとネットリ万之介さんの主人の雰囲気が合った楽しい「栗焼」でした。
『鵺』 旅僧が摂津国芦屋の里につき、里の人に宿を乞いますが、旅人に宿を貸すことが禁じられていると言われ、洲崎の御堂で一夜を明かすことにします。そこへ異様な風体をした舟人が現れ、自分は、鵺の亡魂であることを明かし、頼政によって退治されたときの様子を詳しく語り、夜の波間に姿を消します。 僧を心配して見舞いにやってきた里人に、旅僧は頼政の鵺退治の物語を所望します。語り終えた里人は、鵺の亡霊への供養を勧めて帰ってゆきます。 僧が読経していると、鵺の亡霊が現れ、供養を感謝し、頼政が主上より御剣を賜ったことなどを語り、僧に回向を頼んで、再び海中へと消えてゆきます。
前場の黒頭に黒い水衣の舟人の出の時から、怪しい雰囲気が漂っています。ワキの旅僧が「舟の形は有りながら 乗る人影も定かならず〜」というように、足が無いようにスーっと近づいてきます。僧の問いに鵺の亡魂であることを明かした後、頼政の側になっての仕方語りが凄い。にわかに立ち来たった黒雲を前髪を掴んでキっと見上げる姿に、御殿の上を覆う黒雲が見えるよう。矢を放って落ちた鵺を家来の猪の草太がエイエイとばかりに刺し殺す様子も恐ろしい。メリハリのある力強い動き。語り終わると、舟人は空舟に乗り、夜の波に浮きぬ沈みぬ見えつ隠れ、鵺の声が響き渡る中(大鼓の掛声が鵺の声のよう)を消えて行きます。 中入りで、僧の様子を心配して見にきた里人の深田さん。僧に問われて鵺退治の物語をしますが、きちんとした間語りが雰囲気に合っていて良かったと思います。 後場は白頭に猿飛出の面、装束も前場に比べるとずっと派手で、妖怪鵺の本性を現した姿。僧の読経の声に引かれ、供養を感謝し、また、頼政に退治された時のことを語ります。「我悪心外道の変化となって 仏法王法の障とならん」と帝を苦しめた妖怪も頼政に射落され、矢がささって、よろよろと後退して膝をつく。頼政は主上から御剣を給わり名をあげたのに対し、鵺は汚名を流し、空舟に押し込められて淀川に朽ちながら流されていく。 シテが鵺でありながら、頼政や猪の草太にもなり。鵺は頼政でもあり世阿弥自身でもあり、鵺に投影した世阿弥の思いを感じます。鵺と頼政をくっきりと演じ分け、息詰まる展開に目が離せない、そして最後には鵺の哀しさが・・・すさまじい能でした。
|
|
| 2008年7月26日 (土) |
セルリアンタワー能楽堂 定期能7月公演―喜多流― |
会場:セルリアンタワー能楽堂 13:00開演
[第一部]
解説:馬場あき子
「棒縛」 太郎冠者:野村萬斎、主:深田博治、次郎冠者:石田幸雄 後見:月崎晴夫
『杜若』 シテ(杜若の精):友枝昭世 ワキ(旅僧):森常好 大鼓:亀井広忠、小鼓:曽和正博、太鼓:大川典良、笛:槻宅聡 後見:香川靖嗣、中村邦生 地謡:井上真也、金子敬一郎、内田成信、大島輝久 狩野了一、出雲康雅、粟谷能夫、長島茂
馬場あき子さんの解説は、友枝さんが人間国宝認定後、今日が初めての能ということで、テンション上がり気味でした。 伊勢物語の業平についての話。女にもてて、斎宮までと交わってしまったために、そのおとがめを受けて、旅に出たともいわれていて、源氏物語の光源氏の話と通じるところがあるという。しかし、昔は親が亡くなると、三年ほど休みがもらえたため、他にも親を亡くした友人二人ほどと一緒に旅にでたのではないかとのことです。そして、それぞれの供のものまで入れると、そうそうたる人数での行列であったろうとのことでした。 そんな業平たちが、三河の国にきて休んでいた場所が杜若の名所であったとのこと。
「棒縛」 萬斎太郎冠者と石田次郎冠者のコンビはやっぱりイイ(笑)。 縛られてもなんとしても酒が飲みたい2人のやりとり。飲めば縛られていても舞えや謡えやと浮かれだす。そこまでやるか、と思う酒好きのしょうもなさが何度見ても面白いです。
『杜若』 旅僧が三河の国へやってきて、八橋の沢辺に美しく咲く杜若の花に見とれていると、里女が現れ、八橋の杜若にまつわる故事を語り、杜若こそ在原業平の形見の花だと言って、僧に自分の庵に泊まっていくよう勧めます。やがて女は初冠・唐衣に装いを改めたため僧が素性を尋ねると女は自分が杜若の精であると告げ、業平は菩薩の化身で、その詠歌の功徳により非情の草木も成仏したと告げます。さらに『伊勢物語』や業平について語り、舞を舞い、やがて消えてゆきます。
前場の娘姿の友枝さんの杜若の精は、朱地に縫箔の花模様の着物が若々しく華やかで美しく、物着後は透ける絽の長絹が一見黒のように見える濃い藍か青紫のような色、上半身に金扇の模様があり、裾に草の模様。 スーッとした立ち姿の美しさ。女の生々しさがなく、まさに杜若の精として、見事に美しく静かな舞でした。 |
|
| 2008年7月23日 (水) |
第43回野村狂言座 |
会場:宝生能楽堂 18:30開演
「簸屑」 太郎冠者:野村万作、主:深田博治、次郎冠者:野村萬斎
素囃子「早舞」 大鼓:柿原弘和、小鼓:森澤勇司、太鼓:桜井均、笛:成田寛人
「瓜盗人」 盗人:石田幸雄、畑主:月崎晴夫
「骨皮」 新発意:高野和憲 住持:野村万之介 檀家:竹山悠樹、月崎晴夫、深田博治
「簸屑」 主人が宇治橋供養の参詣人に茶をふるまうことにして、太郎冠者に茶の簸屑を挽いておくように命じますが、太郎冠者は挽きながら、すぐ居眠りを始めます。使いから帰ってきて、それを見た次郎冠者が面白い話を聞かせたり、舞を舞ったりして起こそうとしますが、とうとう太郎冠者はぐっすり寝てしまいます。怒った次郎冠者は太郎冠者に鬼の面をかぶせますが、主人は本物の鬼と思いこみ家には置いておけないと言い出します。主人に言われて追い出そうとする次郎冠者と揉み合ううちに太郎冠者の面がはずれ、太郎冠者は大喜び。しかし次郎冠者の仕業と知って怒って追いかけていきます。 万作さんの太郎冠者が簸屑を挽きながら船を漕いで居眠りする様子、いつもながら臼を挽く手の位置が水平なのは見事。次郎冠者が起こそうと相撲の話をしたり、舞を舞っても、ついには、ごろんと寝転がってしまう姿は可笑しくて可愛い。次郎冠者の萬斎さんも「七つ子」を舞ったりみどころがあり、寝ている太郎冠者に鬼の面をかけて悪戯っ子ぶり発揮が似合います(笑)。本当に鬼になっってしまったかと、嘆いて主人に置いてほしいと頼み込む太郎冠者の姿がちょっと可哀相になってしまいました。
「瓜盗人」 何回か観てる演目ですが、石田さんの盗人は、畑にごろんと転がりながら瓜を見つけてツルを切る様子など、そこに瓜が見えるようでした。月崎さんの畑主はちょっと泥臭い感じが似合ってますが、棒がうまく盗人に当たらなかったり、ちょっとモッタリした感はありました。
「骨皮」 この住持は、やっぱり万之介さんがピッタリです。生臭坊主ぶりがプンプン匂うよう(笑)。高野新発意は、天然ぽいところが可笑しくて良かったです。 馬を貸すのを断る言い訳の「青草を食べさせていたら駄狂い(発情)をして腰が抜けた」というのを、住持を招待に来た檀那に言ってしまう新発意ですが、檀那役の深田さんの「私だからいいものの、他の人には決して言わないように」と言う様子が、本当に驚き呆れて意味深。この「青草」というのも「若い女」という意味になるんでしょうね。 |
|
| 2008年7月21日 (祝) |
善竹狂言会 |
会場:観世能楽堂 14:00開演
「鬼瓦」 大名:善竹長徳、太郎冠者:善竹徳一郎 後見:善竹十郎
「薩摩守」 出家:善竹忠一郎、茶屋:善竹隆司、船頭:善竹忠重 後見:善竹隆平
「鬼の継子」 鬼:善竹富太郎、女:善竹忠亮 後見:野島伸仁
「不聞座頭」 座頭:大藏吉次郎、太郎冠者:善竹十郎、有徳人:善竹大二郎 後見:榎本元
素囃子「下り端」 大鼓:高野彰、小鼓:野中正和、太鼓:小寺真佐人、笛:藤田次郎
「財宝」 祖父:大藏彌太郎、孫:大藏千太郎、大藏基誠、大藏教義 後見:宮本昇
附祝言:善竹徳一郎、善竹長徳、善竹十郎、善竹富太郎、善竹大二郎
関東、関西の善竹家と大藏家の総出演とも言える善竹狂言会でした。忠一郎氏は時々、善竹十郎家や大藏家の狂言会に出られるので、東京でも観たことがありますが、他の関西の方は、ほとんど初見です。
「鬼瓦」 善竹長徳、徳一郎親子はまったく初見です。おっとりした感じの長徳さんの大名に、ちょっと真面目そうな徳一郎さんの太郎冠者でした。鬼瓦を見て、郷里の妻にそっくりだと泣く大名にはやっぱり笑ってしまいます。鬼瓦にそっくりとは、ずいぶんなことを言いますが、そんな妻が恋しくて泣く姿は可愛いですね。
「薩摩守」 以前、1回か2回見た覚えのある演目です。 遠国から上方見物に来た出家が住吉・天王寺へ参詣する途中、喉が渇いたので茶屋へ立ち寄り、二杯茶を飲んで茶代を払わずに立ち去ろうとします。茶屋はそれを咎めますが、本当に持ち合わせが無いと分かると気の毒に思い、この先渡る神崎の渡しをただで乗れるよう秀句を教えます。渡し場で船に乗った出家は、船賃を請求され、茶屋に教えてもらった通り、「薩摩守」と答え、心は岸に着いてから教えようと言いますが、岸に着いて問われても「忠度(ただのり)」が思い出せず、苦し紛れに「青海苔の引き干し」(只だ海苔)と答え、船頭に叱られてすごすごと帰るのでした。 小柄な忠一郎さんに対し、忠重さんはかなり背の高い人です。忠重さんも1回ぐらい観たことがある気がします。品が良くて、いつも淡々とした感じの忠一郎さんに対し、忠重さんの船頭は、いかにも秀句好きらしく、「薩摩守」と聞いた時から、そのシャレの心を聞くのが楽しみでしょうがないという感じでとっても嬉しそう。ちょっと雰囲気が七五三さんに似てるような気がしました。 今回、楽しみだったのが忠一郎さんの長男、隆司さんが出ていること。初めて観ますが、ちょっとイケメンなだけでなく、柔らかい雰囲気と良い声、なかなか上手いし、萬斎さんとはまた違う花があるなと思いました。また、観てみたい人です。
「鬼の継子」 富太郎さんの鬼は大きくて貫禄たっぷり。それに対して忠亮さんの女は細くて品の良さそうな女です。鬼が、美しい女だと一目惚れするのも無理ない感じ。大きな鬼が赤ん坊を相手にあやしている様子は、微笑ましくて可笑しいけれど、最後にはやっぱり本性が出て、というか、食い意地に負けてか(笑)、「旨そうだ」と食べてしまおうとします。すわ大変!と、赤子を鬼からひったくって逃げる女と、追いかける鬼。富太郎さん、こういう役は合うなあ。
「不聞座頭」 2,3日外出する主人は、留守番をする太郎冠者が難聴者なので心配し、相留守に出入りの座頭の菊市を頼み、二人に留守を頼んで出かけます。留守をする二人は、互いに相手を蔑んで、それを笑いものにします。菊市が盗人が入ったと嘘をついて太郎冠者を慌てさせれば、太郎冠者は舞を舞いつつ菊市の顔を足で撫でて楽しみます。菊市が平家節に太郎冠者の悪口を込めて謡って喜べば、再び太郎冠者が舞を舞って菊市の顔を足で撫でようとします。気づいた菊市が太郎冠者の足を取って投げると、怒った太郎冠者は逆に座頭を突き倒して逃げて行きます。 差別される者が、なお差別する相手を求めるという人間の持つ嫌悪すべき部分が赤裸々に描かれているというので、ほとんど上演されなくなった狂言だそうです。でも、それも人間の本性なんではないでしょうか。 しかし、これが十郎さんと吉次郎さんのコンビになると、なんか嫌味が無いんです。十郎さんの太郎冠者も、歳とって耳の遠くなったおじいさんに、こんな人いるよなあと思ってしまう。ちょっと頑固で、自分のことは棚に上げて、人の悪口言ってる。身障者、健常者を問わず、世の中にはそう言う人がたくさんいます。でも、見ていると子供じみていて、いい歳した大人が子供の喧嘩みたいで、すごく滑稽でなんか可愛い(笑)。そういう人間の愚かさを笑いとばしている狂言だなと思いました。十郎さんがやっぱり上手い!
素囃子「下り端」 能の「猩々」などで聞いたことがある曲です。藤田次郎さんの笛の澄んだ音色が素敵でした。
「財宝」 百歳の財宝という祖父に、三人の孫たちが名を付けて貰って、引き出物にあずかろうという話です。祖父は3人に「興がり」「ま興がり」「面白う」という名を付けて、祝儀に銭百貫づつ与え、めでたく酒宴となって舞を舞います。最後には孫たちの手車に乗って、三人の名を拍子にかかって囃子ながら退場するという目出度い演目です。 彌太郎さんの祖父に千太郎さん、基誠さん、教義さんの三人の孫。ほのぼのとした雰囲気が伝わってきて、めでたさが出ていました。彌太郎さんの祖父もけっこう可愛い感じでした。 最後の附祝言は猿歌にお囃子の四拍子が付いたのは初めて聞きました。 |
|
| 2008年7月18日 (金) |
第七回兄弟会 |
会場:セルリアンタワー能楽堂 19:00開演
「秀句傘」 大名:三宅近成、太郎冠者:高澤祐介、坂東方の者:前田晃一 後見:金田弘明
「鬮罪人」 太郎冠者:三宅右矩 主人:三宅右近 立衆:高澤祐介、吉川秀樹、河路雅義、金田弘明 笛:成田寛人 後見:前田晃一
三宅右近さんの二人の息子さんが「兄弟会」を立ち上げてもう7回目の公演になるんですね。前に一回観に行ったのが、何回目の公演だったのか?その後1,2回、日にちが合わなくて行かれなくって、今回になりました。もう、7回目なのかぁ。
「秀句傘」 大名が流行に乗り遅れないために秀句(洒落)を習おうと、秀句の得意な者を召抱えることにします。太郎冠者が連れてきたのは傘の秀句が得意な坂東方の者。大名はさっそく秀句を所望しますが、「得申さぬ」などと言われて怒ってしまいます。ところが太郎冠者に、今のは全部秀句だったと教えられ、あわててその場を取り繕って、今度は男の言葉はすべて秀句だと思い込んだ大名は、褒美に着物まで与えてしまいます。男は傘を手渡して立ち去り、残った大名は下着姿のまま傘をさして小歌を謡い、「秀句というのは寒いものじゃ」と言います。 この演目は、どこかで1回観たことがあるのですが・・・。残念ながら、ここのところ連日の残業疲れにより沈没(^^;)。最初、出てきたところと、所々気がついたものの、あとは終りの方でした。なので、弟の近成さんのシテはよく観られませんでした。でも、真面目に精進されているようで、所々観た感じでも、以前より表情や雰囲気に変化があり、今が伸びる時期なのか進歩してるなと感じられました。
「鬮罪人」 こちらは何回か観てる演目ですが、右近さんの主人の苦々しげな表情と、右矩さんのちょっとでしゃばり太郎冠者ぶり、主人の右近さんはさすがピッタリという感じ。そして、右矩さんのでしゃばり太郎冠者ぶりが、意外なほどしっくり合って面白い。黙っていられずに自分の意見を言いにしゃしゃり出てくる太郎冠者の嬉しそうな表情など、以前この兄弟に感じてた硬さが取れて柔らかさやひょうきんな雰囲気すら出てきたのに驚き。若い人は進歩が早い。 今まで観たのとちょっと違ってたのは、囃子方が笛だけで、後の鼓は立衆の面々が祭の自分たちの役の練習らしく、扇で手のひらを叩きながら、鼓の掛声をかけていたことです。このほうが、立衆が黙って座っているより、祭りの稽古らしくていいなと思いました。 |
|
| 2008年7月3日 (木) |
千五郎狂言会 第七回 |
会場:国立能楽堂 19:00開演
「止動方角」 主人:茂山千五郎、太郎冠者:茂山正邦、伯父:茂山千作、馬:島田洋海 後見:松本薫
「柿山伏」 山伏:茂山茂、畑主:茂山宗彦 後見:井口竜也
「釣針」 太郎冠者:茂山千五郎 主人:茂山千三郎 姫:茂山莢 女:茂山宗彦、茂山童司、島田洋海、井口竜也、山下守之、鈴木実、松本薫 後見:茂山正邦、茂山茂
「止動方角」 万作家では、何回か観た演目ですが、茂山家では初めてです。伯父役の千作さんは、最近は膝が悪くなったのか、立ち上がる時には後見が後ろから手を添えてますが、立ってしまえばスタスタ歩くし、声もしっかりしていて、いたって元気。千作さんが出るとおおらかな雰囲気がします。それに対して怖い主人役は千五郎さんにぴったりで、正邦さんが、しれっとして主人に仕返しすると、ざまあみろという感じ。茂山家親子の主人と太郎冠者のやりとりは、なんかホントに憎々しげに見えました(大笑)。
「柿山伏」 この演目、ポピュラーな演目のような感じがするのに、あまり舞台で観たことがありません。 出羽・羽黒山の山伏が、大峰、葛城の霊地で修行して帰国の途中、道端の柿の木に登って柿を食べていると、それを見つけた畑の持ち主は腹を立てて、梢に隠れた山伏をなぶってやろうと、烏や猿や鳶ではないかと言います。そのたびに鳴き真似をしてごまかそうとする山伏ですが、鳶ならば飛べるはずという畑主の言葉に飛び降りて腰をしたたか打ってしまいます。怒った山伏は法力で畑主をすくませて、治療をしろと負ぶわせますが、畑あれt主は山伏を放り出して逃げていきます。 茂さんの山伏、ちょっと弱そうで間抜け(失礼)ですが、「盆山」のようなやりとりの後、跳び下りる時に宙返りしてどすん!やっぱり若くて身軽でないとこれは出来ないですねえ。あまり他で観ないのはそのせいかな? 宗彦さんのちょっと意地悪そうな畑主と、空威張りでお間抜けな山伏の茂さんの組み合わせは合っているかも。
「釣針」 和泉流で、良く観る「釣針」とは大分違ってました。 まず、和泉流では、妻を得るために参籠して釣針を得るわけですが、いつも参詣している西宮の戎に参籠すると、望みのものが手に入る釣針を賜り、浜に出た主人と太郎冠者は、それなら妻を釣ろうということになります。まず、主人の奥方になる姫を釣り、続いて腰元たちを釣りますが、太郎冠者はその中から自分の妻を選ぼうと女たちと対面すると、見めの良いのを釣ったはずが・・・ということになるわけです。 腰元たちの中から選ぶということで、和泉流のように最後に自分の妻を釣るわけではないので、全員の顔をみることになります。釣る時も一辺にぞろぞろではなく、初めは一人、次は二人という具合に数が増えていき、途中で逃げられたりします。姫役は千三郎さんの娘さんでしょうか、小さい子が出てきて、見所も思わず「可愛い〜」という笑い声。主人が姫をおぶって先に帰ると、張り切った太郎冠者がいよいよご対面では、どの女も乙の面で、囲まれて迫られるのは怖〜い!最後の腰元は足が悪い女で、ダメ押しということでしょうか、ちょっとやりすぎな感はありますが、大藏流はこうなのか、茂山家の演出なのかはわかりません。 でも、囲まれて迫られるのはさらに怖いですね〜(笑)。 |
|
|