| 2008年10月30日 (木) |
第18回狂言鑑賞会 |
会場:国立能楽堂 18:30開演
ミニ講座「狂言の世界」−狂言に現れる願い事について− :善竹十郎
「伊文字」 霊夢の女・道通り:山本則直、主人:山本則重、太郎冠者:山本則俊
「仁王」 博奕打:善竹十郎、 博奕打:大藏吉次郎 立頭:善竹富太郎 立衆:善竹大二郎、大藏教義、大藏基誠、大藏千太郎、善竹忠一郎
毎回この狂言鑑賞会では、はじめに善竹十郎さんのお話があります。今回は、大藏流でも芸風の違う山本家が出演。「伊文字」は妻を得たいと願い、「仁王」では、偽仁王に参詣して願い事をするという、両方とも願い事に関係ある演目でした。お話の中で、昔、山本則直さんと野村万之介さんと十郎さんと3人の会をやっていたという話を聞きました。流儀や芸風の違う3人の狂言会ってどんなだったんでしょう。また、やってくれたら面白そうですけど。 仁王の参詣人の願い事は、やはりアドリブだそうで、楽しみにしてくださいとのこと。 また、狂言では、拍手したければ、したい時に拍手してもかまわないんですよ。なんてお話もされていました。
「伊文字」 和泉流では、霊夢の女と道通りの男は元々は別の人が演じ、登場人物が4人なのだそうですが、最近は大藏流と同じに3人でやることが多いそうです。そういえば、私が観た和泉流の「伊文字」も霊夢の女と道通りの男が同じで、演者が3人だったように思います。 このごろ、平日の仕事の後だと、どうも、特に最初の演目では睡魔に勝てず、狂言でも沈没することが多い(^^;)。本日も正直なところ、山本家の「伊文字」で、ほとんど沈没してしまいました。m(_ _)m。
「仁王」 和泉流でも何回か観た演目ですが、そういえば、大蔵流でも、大藏吉次郎さんのシテで観たことがありました。 偽仁王に参詣する人たちのアドリブの願い事では、富太郎さんが、父親が足が痛い、腰が痛いと言うので、早く良くなるようにと願い、思わず、偽仁王の十郎さんのことだと、会場から笑いが起こっていました。今年結婚した教義さんは、子を授かりましたとのことで、安産を祈願していました。最後に出てくる足の悪い年寄りは、忠一郎さんでしたが、忠一郎さんがやると、やっぱり品がいいですね。大袈裟に足を引きずることもなく、自然な演技で、嫌味がありません。 欲を出したゆえに二度目には印相が違う、動いたとバレ、最後は皆にくすぐられて、逃げ出してしまう偽仁王の十郎さん。若い人のようにお馬鹿っぷり満開というのではないけれど、どっか間抜けで可愛らしい(^^)。十郎さんらしい偽仁王の博奕打でした。 |
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| 2008年10月26日 (日) |
第24回 狂言やるまい会 東京公演 【第二日】 |
会場:セルリアンタワー能楽堂 13:30開演
「本日の演目について」 奥津健太郎
「痺」 太郎冠者:野村信朗、主:野村小三郎 後見:奥津健太郎
居囃子「八島」 謡:水上優 大鼓:柿原光博、小鼓:住駒匡彦、笛:藤田貴寛
披キ「釣狐」 伯蔵主・狐:野口隆行、猟師:松田?義 後見:野村小三郎、野村万作
「千切木」 太郎:野村万作 太郎の妻:野村小三郎 当屋:野村万之介 太郎冠者:野村裕基 講の連中:井上靖浩、高野和憲、藤波徹、奥津健太郎 後見:伴野俊彦
今回は又三郎家のお弟子さん奥津健太郎さんと野口隆行さんが「釣狐」を披くということで、2日間連続公演でした。一日目は仕事だったため、二日目だけ観に行きました。 最初に、小三郎さんが舞台に現れて、ご挨拶がありました。今年亡くなったお父様の又三郎さんのお話があり、今回のお二人の稽古も又三郎さんがやってらしたそうで、最後まで自分も舞台に立つつもりで稽古されてたそうですが、とうとう叶わぬことになりました。 お二人の披きについては、一周忌が過ぎてからということも考えたそうですが、又三郎さんの供養のためにも今回やることにしたようです。 二日目は野口さんの披き、一日目は奥津さんが披きで、この日の演目についての解説は奥津さんがしました。
「痺」 信朗くんも小学校二年生になったそうです。初舞台の時、揚幕の内側で泣いて、なかなか出て来れなかったのが昨日のようですが、もう、すっかりしっかりして、お父さんとの舞台も大きな声で長い台詞も立派にこなしていました。主人に用事を言いつけられると、親から譲り受けた痺れが出たと言って足を撫で、食事に呼ばれたと聞けば、聞き分けの良い痺れだから治ったといい。なんとも可愛くて可笑しい(^^)。又三郎さんも、もっと共演したかっただろうなあと思います。
「釣狐」 いよいよ野口さんの「釣狐」。いや、しかし、改めて狐は大変だなあと感じました。前シテの終わりころには、かなり荒い息使いになっています。後で、野口さんのブログを見たら、本人も、そうとう厳しかったらしく、後半も、いっぱい、いっぱいだったようです。万作家とは、型も少し違うようでしたが、キレがちょっとなかったかな。しかし、本当にがんばって、お疲れ様でした。難しい型と肉体的、精神的厳しさに耐えて長丁場をやりきるのは、やっぱり凄いです。 萬斎さんが最後のほうで、欄干跳びをやったことを考えると、改めてあの人は超人的だな、なんて思ってしまいました。
「千切木」 万作さんの太郎に小三郎さんの妻。裕基くんが太郎冠者でした。すっかり舞台度胸のついた裕基くんの太郎冠者は安心して観ていられますが、やっぱり可愛いです。 万作さんの臆病なくせに空威張りの太郎も可愛く、小三郎さんの迫力があって、温かみもある妻も良くって、楽しい「千切木」でした。 |
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| 2008年10月16日 (木) |
万作を観る会 喜寿記念公演 |
会場:国立能楽堂 18:30開演
連吟「猿唄」替 竹山悠樹、高野和憲、深田博治、月崎晴夫、破石澄元
「酢薑」 酢売:野村万之介、薑売:石田幸雄 後見:高野和憲
「花子」 夫:野村万作、妻:野村萬斎、太郎冠者:三宅右近 後見:石田幸雄、深田博治
半能『石橋』三ツ臺 シテ(獅子):粟谷能夫 ワキ(寂昭法師):森常好 間(仙人):野村小三郎 大鼓:國川純、小鼓:鵜澤洋太郎、太鼓:観世元伯、笛:松田弘之 後見:中村邦生、内田安信、狩野了一 地謡:金子敬一郎、友枝雄人、長島茂、内田成信 粟谷明生、香川靖嗣、友枝昭世、塩津哲生
連吟「猿唄」替 「靱猿」の中で猿曳が猿を舞わせるときに謡われる唄で、茂山さんなんかだと、最後のところを附祝言で謡ってますね。全部を連吟で聞くのは今回が初めて。連吟だと迫力あります。
「酢薑」 今回は、万之介さんの酢売りと石田さんの薑売りのコンビ。おとぼけ万之介さんとまったり石田さんの秀句争いと和解は、それぞれの雰囲気が出ていて、それなりに良かったのですが、先日の野村四郎の会での萬さん万作さん兄弟の完成度の高い「酢薑」を観てしまうと、やっぱり何か物足りない気がしてしまうのでした。
「花子」 今回は万作さんの「花子」が目当てでした。やっぱり万作さんは、可愛いさと品がありますね。長い謡い舞いもかなり体力がいると思いますが、さすが、万作さんです。ちょっと声は時々かすれますが。 萬斎さんの妻は、やっぱり良家の奥様風で、男が衾を被っている妻を太郎冠者だと思って、妻のことを「深山の奥のこけ猿めが・・・」というあたり、どうも違和感を感じてしまいます。山奥のこけ猿にはどうしても見えませんね。こんな綺麗な妻がありながら、なんで浮気をしたのかというと、怒ると怖そう、かなり束縛するタイプ。それから逃げたくてというところでしょうか。 品よくまとめている二人に対し、太郎冠者役の三宅右近さんが、奥様に身代わりがバレて、ぶるぶる震えたりするリアルさが、ちょっと万作家と違うアクセントになっていて、可笑しさを感じました。
半能『石橋』三ツ臺 前場の無い半能なので、ワキの寂昭法師が清涼山の石橋について渡ろうとすると、アイの仙人が現れ、人間の渡れる橋では無いことを語って、やがて、文殊菩薩の霊獣の獅子が現れると山に帰って行きます。獅子は咲き匂う牡丹に戯れて舞い遊び、御代を祝福して舞い納めます。 三つ臺の小書では、一畳台を三つ凸型に正先に並べます。下に二つ、間を開けて並べ、その上に橋のように一つ台を載せます。この小書は以前『塩津哲生の会』で塩津哲生さんがやったのを見たことがあり、重ねた台のすぐ後ろに立ち、ほとんど垂直に近く飛び上がって安座したのが見事で印象に残っていました。喜多流では一人獅子の時は巻き毛の赤頭を使うので、これは、塩津さんの時と友枝さんの時に見たことがあります。ちょっと縦ロールになってるのが、ベルバラ風(^^;)。 粟谷能夫さん、三つ臺に飛び乗って、狭い台の上を後ろギリギリまで下がって飛び降りるのも見事に決めて、足元など見えていないでしょうに歩数や足裏の感覚で分かるのでしょうか、凄いです。『石橋』は「獅子」のお囃子も大好きです。
今回は万作さんの喜寿記念公演ということで、プログラムもとってもオシャレです。 |
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| 2008年10月13日 (祝) |
古稀記念 第二十回万之介狂言の会 |
会場:国立能楽堂 14:00開演
『翁』 翁:野村四郎 三番叟:野村万之介 千歳:野村昌司 面箱:高野和憲 小鼓頭取:大倉源次郎 脇鼓:田邊恭資、古賀裕己 大鼓:亀井広忠 笛:一噌仙幸 後見:寺井栄、木月孚行 地謡:角幸二郎、藤波重孝、藤波重彦、上田公威 鵜澤郁雄、浅井文義、浅見真州、永島忠侈
「小傘」 僧:野村萬斎 田舎者:深田博治 新発意:野村万作 立衆:野村万之介、高野和憲、月崎晴夫、竹山悠樹 尼:石田幸雄
この会も20回目を迎え、さらに古稀記念ということで、万之介さんが、なんと約40年ぶりに「三番叟」をやるという。兄弟の中でも一番足元が不安な万之介さんなので、最初に演目を知った時から「大丈夫かいな」と思ってしまいました(^^;)。 プログラムの万之介さんの挨拶に、披きの時のお父様の6世万蔵さんとの稽古のことが書いてありました。ご本人はこの時の稽古がいやでいやで仕方なかったそうです。なぜかというと、テレビの撮影が入って、万蔵さんがカメラを意識して「演技」する稽古だったので、万之介さんは、ふてくされていたそうです(笑)。その映像、なんかでちらっと見たことある気がしますが?そういえば、萬斎さんが子供のころに万蔵さんに稽古を受けてる撮影の時も、いつもより厳しかったとか、言ってたのを聞いたことがありますね。万蔵さんもテレビ撮影となるとやっぱり意識して、カッコつけてたんですね。 「三番叟」も「花子」も「釣狐」も他の狂言師と比べればほんのわずかな回数しかやっていないという万之介さん。でも、最近は体力的な不安もあり、「これからはすべての面においてあるがまま、「分相応」でいきたい」と、書いてありました。
『翁』 四郎さんの翁太夫は、さすがに威厳があっていいです。お囃子もベストメンバー。 問題の万之介さんの三番叟は、観てる方が妙に緊張してしまいました(^^;)。躍動感があって力強い「三番叟」とは全然違い、やはり、跳ぶのもやっとという感じだったし、体力的に結構厳しそうでした。だけど、素朴な土臭さみたいなものを感じて、何より無事にやりおおせたことにホっとしました。本当にお疲れ様でした。
「小傘」 いつもながら萬斎さんのいい加減な俄か坊主ぶりと新発意の万作さんとのコンビが軽妙で可愛い。それに、石田さんの老尼はやっぱり最高(笑)。 万之介さんは、やっぱり普通の狂言の方が安心して観られますね。いつもの飄々とした万之介さんらしさが良かったです。 |
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| 2008年10月10日 (金) |
現代狂言? |
会場:あうるすぽっと 19:00開演
ご挨拶:南原清隆
「佐渡狐」 佐渡の百姓:野村扇丞 奏者:野村万録 越後の百姓:山下浩一郎
「東京パンダ」 東京の政治家:嶋大輔 総理大臣:岩井ジョニ男(イワイガワ) 関西の政治家:彦摩呂
「サードライフ」 サルヒコ:南原清隆 信長:野村扇丞 義経:佐藤弘道 弁慶:ドロンズ石本 サラリーマン:森一弥(エネルギー) 在原業平:平子悟(エネルギー) 一休:井川修司(イワイガワ) 有栖川宮識仁:岩井ジョニ男(イワイガワ) 打楽器:山下由紀子、管楽器:稲葉明徳
まず、ナンチャンが舞台挨拶に登場。 遅れて来たお客さんに「あ、今駆け込んで来た人いますね。大丈夫ですまだ始まったばかりですよ。」とか、携帯の着メロが鳴ると、「携帯切っといてくださいね、今ならまだ大丈夫ですよ。」とか、客席とのやりとりがナンチャンらしい。 「狂言を見たことがある人」「現代狂言を見たことがある人」「見たことがない人」との質問には、狂言を見たことがある人が、この日は多かったようです。「さすが、最終日に来る人は通ですね。」とか、「舞台裏で、皆ビビってます。」みたいなことを言ってました。 また、古典狂言を観るのに「初めはわからなくても、3分間我慢してください。」は、この間、千作さんの文化勲章受章記念公演で、宗彦さんも言ってましたね。 演目は、古典の「佐渡狐」、「東京パンダ」は「佐渡狐」を基にした現代版。「サードライフ」はナンチャン脚本、演出のコントと狂言の融合で、パソコンの中のバーチャル世界の話です。 来年の1月末から、また再演されるので、ネタばれは、なるべくひかえましょう。 今回は、チケット予約したさいには、万蔵さんが出ない日があるとは知らなかったのですが、この日は万蔵さんの出ない日でした。万蔵さんの役は扇丞さんが代わりにやりましたが、最後の「サードライフ」は万蔵さんバージョンと扇丞さんバージョンと両方観られると面白いかもしれません。次回は万蔵さんバージョンを是非観てみたいです。
「佐渡狐」 若手の配役による「佐渡狐」、これは初めて観る人にも解りやすい演目で、最初は言葉が解らなくても、奏者と3人のやりとりになると、「狂言を見たことない人」で手を挙げていた人も大笑いしてました。
「東京パンダ」 さて、現代版ですが、狂言の様式を残しながら、かなりコントよりになってて、嶋大輔さんが「パラパラパラ」と言いながら暴走族バイクに乗ってる風で登場したり、道行の途中でラーメン屋に寄って、彦摩呂さんが「麺とスープが絡まって・・・」と、グルメレポート風にやったりと、それぞれのキャラを取り入れての遊びも入ってました。 「現代狂言?」でミスターオクレに似てるなと思った岩井ジョニ男さんが、今回は入院中の総理大臣役。彼が二人とのやりとりで出すボケがハマりすぎで大笑い。それも毎回アドリブで違うボケを披露するらしく、嶋さんと彦摩呂さんの二人が何度か笑いをこらえてぶるぶる震えてる場面もあり(笑)。ジョニ男さんのキャラは見かけだけじゃなく面白かった。 「佐渡狐」の後に「東京パンダ」をやることによって、「佐渡狐」の台詞も、あれはこういう意味だったんだと、初心者にも、より分かりやすいという効果があったように思います。 ところで、「東京パンダ」というと、東京にはパンダがいるか、いないかという話かと思いきや、パンダは今、東京にはいないというのが解っているので、それはすぐ認めてしまい、他のことで、賭けをします。それが何かは・・・次回もあるので、お楽しみ。
「サードライフ」 パソコンの中のバーチャル世界の話。案内人のサルヒコの前に青年サラリーマンが、現実世界に疲れ、癒しを求めてやってきます。サルヒコは、ここは、和文化で成り立つ国で、皆で新しい幸せの国を作ろうとしていると説明し、ここでは幸せの単位を1ハピとして、100ハピ貯まると幸せな事が起こるのだと言います。 1人では出来ないというサラリーマンに、サルヒコは仲間を紹介します。雅(みやび)組は、在原業平、義経、有栖川の三人。カブキ組は、信長、弁慶、一休の三人。どちらも仲間を増やすとハピが増えるのでサラリーマンを必死に勧誘します。
さて、ここで、雅組が優雅に舞いを舞えば、カブキ組はラップを踊っちゃうし、カブキ組に入っている扇丞さんが汗をかきかきラップを踊っているのが結構、様になってるし、童顔の扇丞さんは親しみが持てて、本人もノリノリで楽しそう。最後には一人ずつ一発芸を披露。扇丞さんもやらされていたけれど、これはご愛敬(笑)。体操の弘道お兄さんは、身軽にバック転をするし、ナンチャンのダンスも観られるし、とにかく楽しいです!
最後のカーテンコールの時にナンチャンが、次回の再演について言っていましたが、「東京パンダ」には、嶋大輔さんと彦摩呂さんに代わって、大物狂言師(笑)の島崎俊郎さんと野々村真さんが出演するとのこと、出演者が変わるので、アドリブ的演出も変わるでしょう。それから、ナンチャンがいよいよ古典の狂言「佐渡狐」に挑戦するそうです。ナンチャンのチャレンジャー精神に期待です。
旗揚げ公演から東京と地方での連続公演となり、規模も益々大きくなりました。狂言見巧者の方には不満もあるでしょうが、普段敷居が高いと思っている古典芸能も、見慣れたお笑いタレントの人が出るとなれば、初めて見に来る人もたくさんいるでしょう。そこで古典狂言もやって、初心者にも、結構分かるし面白いなあと思ってもらえれば、観客の裾野も広がるし、大いに普及に役立ちます。今回観て、いいなあと思ったのは、古典の後に、それを基にした現代版狂言をやる効果です。解りにくい言葉が、後で現代版を観ると、非常に解りやすく、これは初心者が観るには、プログラムに語句解説を載せたり字幕表示するより、スッと入ってきて、効果的なんじゃないかなあと思ったことです。 今は狂言師も大藏流、和泉流を問わず、野村家や茂山家ばかりでなく、関東、関西の善竹家や狂言共同社の方たちも新作狂言や他ジャンルの人たちとのコラボをやってます。きちんと伝統を受け継ぎながらも、お互いに刺激しあって、いいもの、いい関係が出来ていくといいなと、一つ大きな心で見守ってあげたいものです。
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| 2008年10月7日 (火) |
宝生流第二十代宗家継承披露能 |
会場:宝生能楽堂 12:00開演
『翁』 翁:宝生和英 三番三:山本東次郎 千歳:武田孝史 面箱:山本泰太郎 大鼓:亀井忠雄、小鼓:幸清次郎、幸正昭、野中正和、笛:一噌庸二 後見:寺井良雄、田崎隆三 地謡:小倉伸二郎、水上優、東川光夫、金森秀祥 當山孝道、佐野萌、三川淳雄、前田晴啓
独吟「鶴亀」 渡邊三郎
仕舞「難波」 観世清和 地謡:浅見重好、岡久廣、武田宗和、関根祥人
「八島」 金春安明 地謡:山井綱雄、高橋忍、辻井八郎、井上貴覚
狂言小舞「七つ子」 野村萬 地謡:小笠原匡、野村万蔵、野村万録、野村扇丞
舞囃子「高砂」 三川泉 大鼓:安福建雄、小鼓:幸正悟、太鼓:金春惣右衛門、笛:一噌仙幸 地謡:大友順、?橋亘、登坂武雄、近藤乾之助、小倉敏克
仕舞「草紙洗」 金剛永謹 地謡:工藤寛、金剛龍謹、今井清隆、坂本立津朗
連吟「岩船」 大島輝久、松井彬、大村定、佐々木多門
「福の神」 福の神:大藏彌太郎、参詣人:善竹十郎、大藏吉次郎 地謡:善竹大二郎、大藏教義、大藏千太郎、大藏基誠、善竹富太郎
『春日龍神』別習・町積 シテ(老宮守・春日龍神):今井泰男 シテツレ(龍女):小林与志郎、中村孝太郎 シテツレ(龍神):水上輝和、佐野由於、今井泰行、金井雄資 ワキ(明恵上人):宝生閑 ワキツレ(従僧):宝生欣哉、梅村昌功 アイ(末社):野村萬斎 大鼓:柿原崇志、小鼓:大倉源次郎、太鼓:観世元伯、笛:寺井久太郎 後見:本間英孝、塚田光太郎 地謡:小林晋也、小倉健太郎、野月聡、朝倉俊樹 大坪喜美雄、?橋章、亀井保雄、渡邊荀之助
お父様の英照宗家が病気から舞台復帰叶わず、宗家職を全うできないこととなり、長男和英さんが大学を卒業した本年4月に宝生流第二十代宗家を継承し、今回継承披露能となりました。まだ二十二歳の若い宗家で、今回の『翁』は披きとなります。 プログラムの「御挨拶」の中で、「『翁』はこれが初演となります。何故まだ十分な経験もございませんので、皆さんに御納得いただける様な舞台を勤めることは出来ないと思いますが、精一杯勤めさせていただきますので御高覧下さい。」と、ありました。
『翁』 山本泰太郎さんの面箱を先頭にゆっくり、静々と厳かな入場。翁太夫の宗家が正先に座って、烏帽子が床に着くくらい深々と礼をしてから、定位置に着きます。 武田孝史さんの千歳は若手や子方と違って、勢いだけでないキレの良さと安定感のある千歳でした。 和英さんの翁は、品格があって、きちっとした舞。そして、若さの美しささえ感じる翁でした。 翁面をはずして、また、正先で深々と礼。千歳を従えて橋懸りを引き上げていきます。なんか、すごくこの方、いいと思いました。謙虚さと品格があります。このまま精進していけば、きっと素晴らしい宗家になると思います。 三番三は山本東次郎さん。型の美しさと安定した腰を感じる三番三。そして、あのお歳で、力強い跳躍!素晴らしい。
この後の各宗家の仕舞が、また見ごたえあり! 喜多流だけは、喜多六平太師が怪我のため、連吟に変更になりましたが、その分、連吟は気合が入っていたみたい。 各宗家とも、声がいい。そして、さすがに流儀を代表するだけあって、舞に品格があって美しいと、改めて思いました。 萬さんの狂言小舞もさすが、美しさを大切にする野村家の舞。扇を持つ手の動きの美しいこと。
「福の神」 「福の神」というと千作さんのイメージが強いですが、面をかけて、非常にノーマルな「福の神」を観たような気がしました。彌太郎宗家の福の神に善竹十郎さん、大藏吉次郎さんの参詣人。笑いよりも祝言性の高さが、場に相応しく、ほっこりとした気分になれました。
『春日龍神』別習・町積 今回は、記念にふさわしい小書が二つ付くものでした。「別習」は、後半の春日龍神が白頭に白狩衣という、威厳のある老体となり、竜女二人と竜神九人が勢揃いする賑やかなものになります。また、「町積(ちょうづもり)」は狂言方の小書で、日本から唐、天竺までの行程をこまかく説明するというめずらしい立しゃべりとなります。 この演目は初見でした。 京都栂尾(とがのお)の明恵上人(みょうえしょうにん)は、唐・天竺に渡り、かの地の霊仏霊社を隈なく拝みたいと発願し、春日大社に暇乞いに行きます。 上人が社前にぬかづいて祈願していると、どこからともなく宮守の翁が現れて、上人の話を聞き、翻意を促しますが、上人は容易に承知しません。翁はさらに、渡海して現地に行かなくても春日山こそ霊鷲山、比叡山こそ天台山なのだから、これを拝すれば足るではないかと説諭し、それが証拠に釈迦の生誕から入滅までを眼前にお見せしようと約束して消え失せます。 中入りで、末社のアイが三蔵法師の先例をはじめ唐、天竺までの行程の苦難を語ります。 やがて、春日野の周辺に神々しい光が満ち、景色は金色世界と変じて、猿沢の池に棲むという春日の龍神がたくさんの眷属を引き連れて現れ、約束どおり釈迦一代記を現前に展開させます。明恵上人は目もくらみ、低頭するうち龍王に入唐渡天の意志を問われ、即座に諦めると答えると、この大パノラマの光景はいつの間にか幻像となって上人の脳裏に強く刻まれたまま終曲となります。
シテの今井泰男さんは、かなりお歳の方のようですが、前シテの宮守の翁で、普通は面をかけるのでしょうが、直面でした。でも違和感なしでした。 後場は、もう龍女、龍神が橋懸りにずらりと並んだ様が圧巻。きらびやかで美しい龍女の舞に、雄々しい龍神たちの舞。後シテの春日龍神は白頭の老体の龍神なので、勇ましさより、いるだけで老体の威厳という感じでした。 いかにも祝いの場にふさわしい華やかな曲でした。
どれも襲名披露能の祝いにふさわしく、何より演者も見所も若い宗家を盛り立てていこうという雰囲気に包まれて、とても良い舞台でした。 |
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