| 2008年11月26日 (水) |
東京茂山狂言会 第14回 |
会場:国立能楽堂 19:00開演
「二千石」 主人:茂山千之丞、太郎冠者:茂山千作 後見:丸石やすし、松本薫
「通圓」 通圓:茂山千五郎 東国の僧:茂山七五三 所の者:茂山千三郎 後見:茂山宗彦、丸石やすし 小鼓:鵜澤洋太郎、大鼓:亀井広忠、笛:藤田貴寛 地謡:松本薫、茂山茂、茂山逸平、茂山童司
「木六駄」 太郎冠者:茂山正邦 主人:茂山宗彦 茶屋:茂山茂 伯父:茂山あきら 後見:茂山七五三、茂山逸平
三世千作さんの23回忌追善ということで、演目も大作を持ってきたなという感じです。
「二千石」 主人に無断で旅に出た太郎冠者が、昨晩帰って来たと聞いて、怒った主人が叱りに出向くと、京内参り(都の寺社参詣)に行ってきましたと詫びるので、機嫌を直し、都の様子を尋ねます。冠者が宴席で芸のない主人のために、都で流行る謡を習ってきましたと「二千石」の謡を披露すると、主人はにわかに怒りだして、それは我が家の大事の謡だと由来を語り、秘蔵の謡をみだりに持ち出したと、冠者を手討ちにしようと太刀を振り上げます。ところが、その手元が大殿様(先代)に似ていると言って冠者が泣くので、主人も一緒に泣いてしまい、冠者を許して「子が親に似るのはめでたい」と言って、ともに笑って終わります。 千作さん、千之丞さんの息の合ったコンビです。太郎冠者が都で流行っている謡を覚えて来たと話すくだりは、よく聞くと「いつも主人は宴席で、大名だから最初は中心にいても、芸がないためしばらくしたら末席にまで追いやられ、最後は畳のヘリをむしっているので、都で流行っていた歌を教えようと覚えてきました」と言う、ずいぶんと酷い言われようです(笑)。それでも喜んで聞いてる主人が、謡を聞くうちに、秘伝の謡を持ち出したと、にわかに怒りだすのには、太郎冠者もびっくり!というやつです。でも、大殿様にそっくりと言われて二人で泣き出しちゃう姿が、なんとも可愛い(^^)。なんか、太郎冠者に話をはぐらかされてるみたいですが、千作さんの冠者には、そんな様子もなく、主人も、京参りと聞いて機嫌を直したり、結局お人よしの単純な人のようです。そんな二人が最後には、子が親に似るのはめでたいと笑って終わるのも、千作さん、千之丞さんのお二人だと、ホントにめでたくて幸せな気分になります。
「通圓」 仕事帰りの夜の会は、どうも睡魔に勝てないこのごろ。能『頼政』のパロディなので、能がかりの展開についつい沈没ぎみで、今回も肝心なところを覚えてない。後日、この「通圓」で千五郎さんが、芸術祭大賞を受賞したと聞き、残念〜、もう少し頑張って観るんだった。
「木六駄」 休憩をはさんで、最後の演目。休憩時間で少し眠気解消。 見慣れた和泉流の「木六駄」とは、牛を追う型などはちょっと違うようでした。正邦さんは茂山家の若手では、やはり千五郎家の長男だけあってしっかりした演技です。でも12頭の牛が見えるようかというと、12頭の牛がつながって歩いてるようには見えませんでしたが、広い空間にばらばらにいる感じかな?それだと、追うのはかなり大変ですけど(笑)。酔っ払いぶりはさすがに面白かった。ああいう酔っ払いって、いるいるという感じです。 |
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| 2008年11月23日 (日) |
狂言劇場その伍 Bプログラム |
会場:世田谷パブリックシアター 18:00開演 「苞山伏」 使いの者:野村万之介、山人:高野和憲、山伏:深田博治 後見:時田光洋
能楽囃子 笛:松田弘之、太鼓:小寺真佐人
「彦市ばなし」作:木下順次、演出:野村万作、野村萬斎 彦市:野村萬斎、天狗の子:月崎晴夫、殿様:石田幸雄 笛:松田弘之、太鼓:小寺真佐人
Sept会員貸切公演日で、Bプロ演目。今回はこの会のみで、Aプロは観ていません。なぜか開演時間が15分ほど遅れましたが、後からコンピューターのトラブルがあったとかで、「彦市」の時に漢字遊びの映像が出なかったらしく、シンプルな演出でした。席が2階の一番前ほぼ中央で、これが実に見やすくて良い席でした。殊に、こういう映像などを使う演出では床面に投影する場合が多く、全体が観られるのが嬉しい。今回も木漏れ日のようなまだら模様や、ゆらめく水面のような模様が投影されていました。
「苞山伏」 早朝から山に薪取りにきた山人が眠たくなり休んでいると、旅の山伏が通りかかり、近くで昼寝を始めます。すると、さらに通りかかった男が、山人の枕元に置かれた昼食の藁苞を見つけて食べてしまいますが、山人の目を覚ます気配に慌てて寝たふりをします。やがて目覚めた山人は、昼食がなくなっているのに気づき、男を起こして問いただすと、男は素知らぬ顔で山伏に罪をなすりつける始末。あらぬ疑いをかけられた山伏が、犯人を明らかにしようと祈祷を始めると、たちまち男は体がしびれて動かなくなりバレてしまいます。男が白状して助けを求めるので、山伏が術を解いてやると、こっそり逃げ出そうとする男に山人が怒り、鎌を振り上げて追いかけ、二人で追い込んでいきます。
三本の橋掛りを上手く使い、3人がそれぞれ違う方向から現れ、三叉路の交わる空き地で偶然出会ったという感じが出ています。万之介さんのキャラクター(萬斎氏曰くの怪演)が光る(笑)役柄で、人の弁当を盗み食いして、すっとぼけて他人になすりつける、おとぼけっぷりがそのまんまのキャラクター。美味しそうにむしゃむしゃ食べていた弁当を山人が寝返りすると、放り投げちゃったり、山伏に祈り伏せられて足をピクピクする様も、万之介さんならではの可笑しさでした。
能楽囃子 笛と太鼓だけのお囃子というのは、あまり聞いたことはありませんが、松田さんの笛が気持良かった。
「彦市ばなし」 もう、この配役は最高で安心して観ていられます。コンピュータトラブルで、漢字遊びの演出は見られなくても充分面白い。まあ、劇場ならではの演出も楽しみの一つではありましたが。それでも、子天狗が森の中を飛び回っているのを、声はすれども姿は見えずで、音響効果であちこちから子天狗の声を飛ばしたり、彦市がお酒を飲んでいる様を、スクリーンにシルエットで映し出し、器がだんだん大きくなって最後には樽ごと飲み干す有様、それと同時に彦市の影もどんどん大きくなるなどの演出は健在。シルエットを使うのは新宿狂言の時も使ってた気がしますが、「まちがいの狂言」などでも、萬斎さんがけっこう使う手法ではあります。 月崎さんの子天狗は、可愛さが増した感じで、本当に子供のようにしか見えません。登場シーンでは宙づりで現れたり、身軽な動きで大活躍。彦市に遠眼鏡を貸して〜と、小首を傾げて覗き込む仕草やねだる声もなんとも可愛い。 お人よしそうな、石田さんの殿様ぶりも他には替えがきかないほど、すっかりハマっています(笑)。嘘が破綻をきたして四苦八苦する彦市に対し、殿様は終始、お気楽極楽。水の中で彦市と追いかけっこをする子天狗を河童と思いこんで大喜びし、自分も捕まえようと水に飛び込んで無邪気に追いかけまわす殿様は、最後まで騙されたとは知らず、一人だけ幸せそうです。やっぱり笑っちゃうのは、あの可愛いクジラちゃん(^^)。石田さんが円月殺法で切れば、ベリっと、思いっきりマジックテープを剥がす音(笑)。 萬斎さんの彦市も、ずるっこさが憎めなくて可愛い。なんともチャーミングでユーモラスです。帰り際の3人そろってのシンクロポーズも最高(大笑)。
今回は、友の会貸切なので、最後に萬斎さんのトークと今度の「解体新書」のペアチケットが当たる抽選もありました。 「苞山伏」では、萬斎さん曰く、「この演目の目玉は叔父の怪演」とのこと。万作さんはあまりやりたがらないというのは、分かる気がする。 さて、抽選会では、なんと、私の隣の席の人が当たった〜、惜しい残念〜。 |
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| 2008年11月7日 (金) |
忠三郎狂言会 |
会場:国立能楽堂 18:45開演
「文相撲」 大名:茂山良暢、太郎冠者:大藏吉次郎、新参者:大藏教義
「鳴子遣子」 茶屋:茂山千作、某:茂山千之丞、某:茂山忠三郎
「抜殻」 太郎冠者:茂山忠三郎、主:善竹十郎
附祝言
「文相撲」 何度か観ている演目ですが、若い良暢さんの主人が、いかにも新参者の相手になって相撲を取りそうで、活気があって可愛らしく、忠三郎さん譲りのほんわか、ゆったりした雰囲気もあるのがいいです。世間知らずの坊ちゃん大名のようで、厭味がありません。
「鳴子遣子」 この演目は、初めて観るものかもしれません。 野遊びに出かけた2人の男が、鳥を追う道具を「鳴子」か「遣子」かで、言い争い、「引けば鳴るによって鳴子」「放てば鳴るによって遣子」と言い、お互いの脇差を賭けることにします。街道の茶屋の主人に判定を頼んで、それぞれ、「薪はいらぬか」「炭はいらぬか」と、こっそり主人を買収にかかります。ところが、茶屋の主人は、判定にかかると西行の出家の故事や歌を聞かせて論争をいましめ、「奪い合うものは中から取る」と、ちゃっかり二人の脇差を持って逃げて行ってしまいます。 「舟ふな」のような言葉争いと「佐渡狐」の賄賂、最後は「茶壷」のような終わり方です。 いかにも、しつこそうな千之丞さんに、鷹揚な感じの忠三郎さんの対比が面白く、最後は茶屋の千作さんに皆持ってかれちゃうという感じ(笑)。 今回はどちらかというと千作さん、千之丞さんがメインのような配役でしたが、以前、お二人を相手に忠三郎さんが、シテの太郎冠者をやった「縄綯」が、とても印象に残っていて面白かったので、また、このメンバーで忠三郎さんがシテの演目を見てみたいという気がします。忠三郎さんがシテになると、また違った雰囲気になりそうです。
「抜殻」 忠三郎さんと十郎さん。私の好きな二人の共演で楽しい曲でした。 忠三郎さんのおおらかさが、お酒好きだけど、悪気がなくて、とても人の良い太郎冠者という感じを出しています。路上に寝てしまった太郎冠者のことを、心配して様子を見にきた主人が懲らしめのためにかけた鬼の面に、目覚めた太郎冠者は、本当に鬼になってしまったと驚き悲観します。 和泉流だと、鬼の面がはずれて、「鬼の抜殻だ」と面を差し出す太郎冠者を叱って終わる叱り留めですが、大蔵流では、主人が面を持って「いで喰らおう」と言い、太郎冠者が「ははー」と言って終わる。主人も洒落の分かる主人で、おおらかにほのぼのとした終わり方がまた良いです。 |
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