| 2009年2月28日 (土) |
千作・千之丞の会 第4回 |
会場:国立能楽堂 14:00開演
「舟船(ふねふな)」 太郎冠者:茂山千之丞、主人:茂山千作 後見:丸石やすし、松本薫
「彦市ばなし」 彦市:茂山七五三 天狗の子:茂山千三郎 殿様:茂山千五郎 笛:栗林祐輔 後見:茂山正邦、茂山童司
素狂言「宗論」 浄土僧:茂山千作、法華僧:茂山千之丞、宿屋:茂山千三郎 後見:茂山正邦、丸石やすし
「千作・千之丞の会」と言うだけあって、今回は2演目に兄弟で出演です。
「舟船」 主人と太郎冠者が西宮見物に行く道中、太郎冠者が舟を「ふなや〜い」と呼ぶので、主人が「ふね」と呼べとたしなめると、太郎冠者は古歌を引用して「ふな」が正しいと主張します。主人も別の古歌を引用して反論するものの太郎冠者には歯が立たず、最後に太郎冠者は「そういう時は、主人を立てるものだ」と叱られます。 80代後半とは思えぬほど二人とも声が大きくて元気です。それに二人ともなんとも愛嬌があって可愛い。鷹揚な主人に小賢しい太郎冠者がそれぞれにピッタリなキャラで、大人げなく言い合う様が最高に面白い。
「彦市ばなし」 「狂言劇場」で観た万作家の劇場版とはまた違う能楽堂バージョンの「彦市ばなし」。こちらも以前に観たことがあるのですが、萬斎版の新演出が入っていないので、元々の狂言版「彦市ばなし」の演出に近いものかと思います。 舞台には一畳台とその上に山の作り物が出され、その中から天狗の子が出てくるかたちです。シンプルな作り物や小道具での演出でも舞台が山の中や川に変わる(一畳台が川岸になったり)のが能舞台らしいです。クジラも小さいクジラが出てくるわけではなくて、赤い布で、クジラの肉を表しています。まあ、クジラの作り物が出てこなくても充分面白いです。 七五三さんの彦市が、また萬斎さんとは違う小ズルさが面白く、変な表現かもしれないけれど、飄々として小ズルイ(笑)。 千三郎さんの子天狗は月崎さんの子天狗より大きい感じがしますが、もしかしたら前回観た茂山家の「彦市ばなし」の子天狗はあきらさんだったかも?高い声が可愛かった気がする。千三郎さんは結構ドスのきいた声だから(笑)。でも、仕草などに子天狗の可愛らしさが出ていました。 千五郎さんの殿様が、石田さんのように気のいい殿様というより、鷹揚で横暴な殿様の雰囲気があり、でも、目を隠してカッパが釣れるのを待ってる姿なんかホントに可愛かった(笑)。 最後に天狗の子と彦市が川の中で追いかけっこをする場面では、殿様は川へは入らず、岸の上から彦市を応援。二人が、いろんな泳ぎ方をして追いかけながら幕入りした後、殿様は舞い納めて幕入りします。 言葉が九州弁であること以外は古典狂言としても充分馴染んでしまう「彦市ばなし」でした。
素狂言「宗論」 千之丞さんが「武家の狂言 町衆の狂言」のトークで話していた素狂言の「宗論」です。 能舞台に紋付袴姿の3人が並んで座り、顔を見合わせることもなく、正面を向いたまま台本は置かず、台詞を言うのですが、これが凄い。 新作の「九十九髪」の時も、千作さんが舞い謡う姿や、業平の使者を追いかけていく姿がありありと見えるようでしたが、今回も二人のテンポの良い台詞の応酬が子供の兄弟喧嘩のように生き生きと可愛らしく、手振り身振りを加えずとも情景が目に浮かんできます。千之丞さんは先日の浄土僧とは打って変わって、すっかり剛直な法華僧になっていましたし、やはり、二人の芸の凄さに脱帽です。 |
|
| 2009年2月14日 (土) |
新宿狂言Vol.15 |
会場:全労済ホール/スペース・ゼロ 15:00開演
小舞「福の神」祝言之式 野村萬斎 地謡:深田博治、石田幸雄、高野和憲、月崎晴夫 後見:岡聡史
解説:石田幸雄
「呂連」 旅僧:野村万之介、宿の主人:深田博治、妻:高野和憲 後見:岡聡史
「木六駄」 太郎冠者:野村萬斎、主:高野和憲、茶屋:石田幸雄、伯父:野村万之介 後見:月崎晴夫
今回の舞台は、両側に橋掛りがある能舞台風ではありますが、左の橋掛りが壁沿いに客席後ろまで続く欄干のついた花道のような長い橋掛りになっています。きっと「木六駄」の時に使うんだろうなと、想像できました。
小舞「福の神」祝言之式 プログラムでは、解説が最初になっていましたが、いきなり「福の神」から始まりました。舞台後ろのカーテンが開くと金屏風が現れ、地謡の面々が前に並びます。左橋掛りから「は〜〜はっはっはっは」と笑いながら福の神の登場。面を掛け、煌びやかな装束の萬斎福の神。剛快な笑いで不景気も吹っ飛ばせという勢いでした。スペース・ゼロ20周年記念ということで、ご来場の皆様に福を授けましょうということで、お目出度い幕開けとなりました。
解説 新宿狂言では珍しく石田さんが解説で登場。プログラムでは解説が最初だったのを、楽屋の都合で急遽「福の神」と入れ替えたとのこと。演目の解説の他、新宿狂言では能舞台と違って照明、音響、舞台装置等様々な事ができるので、演じる側としては普段と違って刺激を受けるし、観る側も内容を理解する補助手段となるかと思う。ということで、能楽堂で観るほうが好きだという方は能楽堂に行ってください。と、ちょっと挑戦的発言ともとれますが、ごもっとも。スペース・ゼロや世田谷パブリックシアターのような舞台では、能舞台とはまた違った演出ができる楽しみがあり、こちらも、それが楽しみで行っているわけで、シンプルな能舞台がいいというなら、能楽堂の狂言を観ていれば良いので、わざわざ、劇場狂言を観に来る必要はないわけです。 また、「木六駄」では、よく「牛が何頭見えた」などという評価がでてきますが、そんなことより、舞台そのものを楽しんで欲しいと、穏やかな話しぶりのわりには過激とも思われる発言(笑)。
「呂連」 照明が落ちて「カ〜、カ〜」と夕刻のカラスの鳴き声、そこへ万之介さんの旅僧が登場。日も暮れたので、どこかに泊めてもらおうと探していると、後ろの幕が開いて屏風の前に深田さんがちょこんと座っています。しかし、その屏風の絵が尾形光琳の「紅白梅図屏風」の縮小版みたいな屏風なんですね、なんか豪勢じゃないですか。 旅僧を泊めることになった主人は、僧の話を聞くうちに出家したいと言いだします。身内に相談してからにした方がいいという僧に、もう、承知しているから大丈夫と、さっそく剃髪してもらって、僧形に、法名もつけてもらいたいと僧に頼むと、蓮の字に「いろは」をつけていろいろ考えますが、「い連坊」に「よた連坊」、なんとも安直なつけかた(笑)。結局「呂連坊」に決まります。ところが、そこに戻ってきた妻は、夫が勝手に出家したことに怒りまくり、夫は、僧に責任をなすりつけ、訳が分からず、猛妻にぶっ飛ばされる僧は、いい面の皮。 いつも、真面目そうな深田さんの無責任なお調子者っぷりが、妙に似合ってました。高野さんのわわしい女っぷりは、益々パワーアップ。それに、あれよあれよと振り回される万之介僧のお気の毒キャラ。すごすご帰る後ろ姿にカラスが「アホー」には、ズルッ。劇場ならではの効果ですよ(笑)。
「木六駄」 さてさて、最後の大曲にどんな舞台効果で見せてくれるかがお楽しみ。舞台奥には格子窓があり、窓の外にはちらちら降る雪。主人が太郎冠者に伯父のところへ木六駄と炭六駄、それにお酒を持って行くように命じる家の中から、外に出るとまた風景が変わります。といっても大きく変わるわけではなく、左の橋掛り(花道)から右の橋掛りまでの壁に白い線と上部から薄墨を滲ませたような線。このモノトーンな模様が雪山の木々を連想させます。花道の奥から「さぁせ〜、ほぉ〜せ〜」「ちょ〜ちょ〜ちょ〜」と牛を追いながら萬斎太郎冠者が登場。崖から落ちそうになったり、沓を切ってしまう牛達に手を焼きながら12頭の牛を追う太郎冠者。寒そうにかじかんだ手に息を吹きかけ、真っ黒になって降る雪を見上げます。左の花道から右の橋掛りまで行くと、正面後ろにまわって山道のように坂になった道を登り、左の橋掛り前から出てきます。雪の降る長い山道を視覚的にも感じられる舞台になっています。バックの雪の坂道の前に垣根が置かれると、場面は峠の茶屋に変わります。 茶屋についてからの、茶屋の主人との酒盛り、この酔いっぷりが見事というか、最高に楽しそう(笑)。べろんべろんになった太郎冠者が、茶屋の主人に気前よく木六駄をあげちゃって、出かける時に牛に声をかけて、一人で謝ったり、酔っ払いに良くある姿にちょっと笑った。今回は、太郎冠者の牛に対する親しみの情が感じられたのが収穫。舞台効果も、あまり写実的なものでなく、シンプルで想像力を駆り立て、視覚的にも雪景色を感じられ、奥行きや道のりを感じさせる効果があって邪魔にならず、良かったのではないかな。
今回も、新宿狂言ならではの舞台を楽しませてもらいました。これからも萬斎さんならではのセンスの演出を楽しみにしています。
|
|
| 2009年2月8日 (日) |
大藏会「大藏流狂言」 |
会場:国立能楽堂 13:00開演
「毘沙門」 毘沙門:大藏彌太郎、参詣人:善竹長徳、善竹十郎 地謡:善竹忠亮、大藏基誠、大藏千太郎、茂山良暢、 後見:善竹忠重
「棒縛」 次郎冠者:善竹大二郎、太郎冠者:吉田心海、主人:善竹富太郎 後見:大藏千太郎
「二人袴」 聟:善竹忠亮 舅:茂山忠三郎 太郎冠者:善竹徳一郎 聟の親:善竹忠重 後見:善竹長徳
小舞「景清」 茂山千三郎 地謡:善竹大二郎、善竹富太郎、大藏千太郎、善竹忠亮
「仏師」 素破(すっぱ):山本泰太郎、田舎者:山本則孝 後見:遠藤博義
「靱猿」替装束 大名:大藏基誠 太郎冠者:茂山良暢 猿曳き:大藏千太郎 小猿:大藏彩乃 地謡:善竹徳一郎、善竹富太郎、善竹大二郎、吉田心海 後見:大藏彌太郎、茂山忠三郎
附祝言
大蔵流の各家より若手を中心にして配役にしたという、今回の「大藏会」、大蔵流若手のレベルの高さと、各家が演目の中でも共演し合って、いっぺんに見られるのは、なかなか楽しいです。 プログラムの中に大蔵流の系図が載っていましたが、能の金春宗家と大藏家の繋がりが系図上からも有るというのは、初めて知りました。
「毘沙門」 正月の初寅の日、鞍馬へ参詣する二人の男が、毘沙門天を詣でて夜を過ごしていると、一人の男が福を授かります。もう一人の男は、毎年二人で参詣しているのだから福を分けてくれと願い、連歌を詠んでその出来によって配分しようという事になります。そこで、二人が連歌を詠み合っていると、毘沙門天が顕われ、神の由来を語って聞かせ、二人に福を授けたうえ、都への土産として鞍馬の山菜も与えて消えていくのでした。
おめでたい神物の狂言なので、特に面白いということはないのですが、ベテラン三人による共演が、まったりとして、おおらかな祝儀性を感じさせて、お祝いにはピッタリでした。
「棒縛」 狂言の代表的な演目で、何回か観てますが、今回の配役は珍しいですね。善竹十郎家の兄弟と大蔵家のお弟子さんの吉田心海さんの共演で、大蔵千太郎さんが後見です。 大蔵流では、この曲だけは次郎冠者がシテで、次郎冠者の大二郎さんと太郎冠者の吉田さんの酔っ払い振りも面白かったですが、やっぱり恐い主人役の富太郎さんの存在感が大きくて、主人がシテに見えてしまいました(笑)。
「二人袴」 これもちょっと幼いくらいに世間知らずの聟さんと、過保護親のユーモラスな話ですが、茂山家では親が兄になることも多いです。ストーリーは変わりませんが、和泉流とは導入部や台詞などがかなり違っていて、聟さんのキャラもさらに幼い感じがします。 忠亮さんは、見かけでは痩せててちょっとゴツゴツした感じ(失礼)、この聟さんキャラはどうかなあと思いましたが、いや、可愛かった。お父さんの忠重さんとのコンビもさすがに息が合ってて、二人で半分の袴を穿いて横歩きでちょこちょこ出てくるところなんかも可愛いし、忠三郎さんのおっとりした舅役もピッタリでした。しかし、忠亮さん、この演目で間違ったらしく、ブログでかなり落ち込んでました。少し台詞が早く出たところがあったような気はしますが?大蔵流の「二人袴」は茂山千五郎家のしか観てないので、あまり気が付きませんでした。
小舞「景清」 茂山千五郎家から唯一人出演の千三郎さん。八島のしころ引きの場面は千三郎さんの声と舞が力強くて迫力がありました。
「佛師」 これも、お馴染みの演目「佛師」。大蔵流だと和泉流とはまた違う台詞や動きが面白く、山本家の泰太郎さんと則孝さん兄弟が演じました。すっぱが「都人が目を抜こうぞよ」と言って、田舎者が両目を抜かれることかと驚くと、「そじゃ、そじゃと、言ってまわることを目を抜くと申す」と言ったり、すっぱが「佛師」と「仏像」を掛け持ちして行ったり来たりするところが、「仏、仏、仏」「仏師、仏師、仏師」と、とてもリズミカルなのが和泉流と違って、また面白いところでした。
「靱猿」替装束 大名が大藏基誠さん、猿曳きが大藏千太郎さん、太郎冠者が茂山良暢さん、子猿が千太郎さんの娘さんの彩乃ちゃん。彩乃ちゃんは、もう小学生くらいかな?でも、あまり大きすぎる感じはなくて、可愛かったです。和泉流のように掻く仕草は少なかったけれど、よくでんぐり返しはしていました。いつもは小猿の可愛さに気がいってしまいますが、大名の台詞に「あの猿は大きゅうもあり、毛並みも良い」というのがあったので、小猿は靱の皮にしようと言うだけあって、本当はそんなに小さい猿ではないんだなということに気が付きました。小猿に芸をさせるところで、「つっと出て田を植えい」で田植えをする仕草があったりするのも和泉流と違うところかな? 今回は20代、30代の若手ばかりによる「靱猿」でしたが、猿の皮をよこせと言う大名と、拒む猿曳きの緊迫したやり取りや、間で戸惑う良暢さんの太郎冠者、しかたなく猿を殺すことになった猿曳きの涙こそ流さないけれど、子猿に対する情がとっても出ていて上手かったですねえ。大名役の基誠さんも、初めの大名の怖さと後で子供のように子猿と戯れる姿のメリハリがあり、ドラマチックな展開と和合の祝言性がよく表現されていました。 ベテランが出なくとも20代30代の若手だけで、これだけ充実した舞台になるとは驚き。千太郎さん、基誠さん兄弟は昨年、他の演目で観た時も上手いなあと思ったことがあり、最近、特に良くなった感じがします。
|
|
| 2009年2月2日 (月) |
鎌倉能舞台四十周年記念特別公演「乱能」 |
能楽では、シテ方、ワキ方、囃子方、狂言方で役割がはっきり決められているものを、それぞれが役割を入れ替えてやるのが乱能。 正統派で、本職顔負けの腕を披露する方もいれば、笑いをとる方もあり、本人は頑張ってるのに、なんか可笑しい人とか、いろいろありましたが、楽しい会でした。
『邯鄲』 最初に舞台に出される引立大宮を後見役の狂言方の山本則俊さんと小鼓方の古賀裕巳さんが持ってきますが、やはり慣れていないせいか、一畳台の上に屋根付きの宮を立てるのがなかなか上手くいかず、最初から笑いをかっていました。 地謡の森常好さんはカメラマン?地謡座からデジカメでパチリ(笑)。 シテ方によるお囃子は、音はイマイチでしたが、掛声もしっかりと、かなり堂に入ってました。 まず出てきた宿の女主人、笛方の一噌隆之さんですが、直面で長い髪の鬘を付けたこの女主人は誰がやっても、まず似合う人は無くて笑ってしまう。本人も可笑しいのか、自分で笑っちゃってましたが、それでも台詞は声も良く、しっかりと語ってました。 シテの盧生は、めずらしい黒頭の若い男の姿で、太鼓方の観世元伯さんは本気モードでまじめに舞ってました。宮台の上での舞は柱に時々コツコツぶつかりながらの舞になってましたが、改めて、一畳台の上で大きく舞えるシテ方は大したもんだなと思いました。 盧生の夢に出てきた侍臣の一行。本来、子方がやる舞童を大柄な小鼓方の鵜澤洋太郎さんがやるというのが無謀(大笑)。唐織に大口を穿いて女姿ですが、巨大子方に、出てくる時から笑いが起こります。片膝立てで座るのも慣れてないのか、ごそごそ動く。隣の侍臣役の太鼓方徳田宗久さんに時々扇で叩かれてました(笑)。 舞童がいよいよ舞を舞うだんになると、いやあ、足拍子を踏むのが、どう見ても相撲取りがシコ踏んでるようにしか見えないんですよ〜(爆) 盧生が舞っているときも、ごそごそ動いているので、元伯さんに唐扇で叩かれてました。
舞囃子「小袖曽我」 万作家の深田さん高野さんコンビの舞。舞うだんになると、なぜか、ちょんまげ鬘を乗せられての舞(笑)。 お囃子はかなりメタメタ。まともに音が出ていたのは笛の御厨さんだけで、小鼓、大鼓ともまともに音が出てませんでした。それでも小鼓は調子よくポンポン打ち続けてましたが、大鼓は「いや〜、は〜」という掛声が、なんとも情けなく、掛声のたびに笑い声が起こってしまいます。とうとう見かねたのか、お父さんの中森貫太さんが途中から大鼓の後見に付いて、何か話し掛けてから、後ろで調子をとっていました。でも終り頃に貫太さんが引っ込むと、また、たちまち調子が取れなくなって、時々手が止まってしまいます。 一方、深田さんと高野さんは、そんなお囃子はまったく意に介さないような、二人の息の合った見事な舞。最後に狂言の「わ〜はっはっは」という笑い留も余裕の感じでした。
「土蜘蛛」 土蜘蛛の精は糸を吐きまくる、ド派手な「土蜘蛛」でした! 小鼓のシテ方五木田三郎さんは小鼓にカンペを立てて笑いをとってましたが、始まるとほとんど見ずに打ってたみたいです。掛声も堂に入ったものでした。 病床の頼光(大鼓方佃良勝さん)の元に見舞いに来る侍女の胡蝶は善竹富太郎さん。太めな女ですが、シテ方にもかなり太めの方(失礼)もいますし、「邯鄲」の巨大子方が強烈すぎて、ほっそり見えちゃいました(笑)。 善竹十郎さんの土蜘蛛の精。蜘蛛の糸を吐くのが上手で、見事にぱ〜っと広がって、たちまち舞台上は糸だらけ。 頼光の元から去る時に橋掛りで、独武者(大鼓方安福建雄さん)とすれ違い、すかさず糸をかける、するとなぜか独武者も御返しに糸を吐く。 安福建雄さんの独武者は、頼光との受け答えの最後に「どうしました?」とか「わかりました」とか、とぼけた調子で現代語を言うのが可笑しい。 後場では、作り物の蜘蛛の巣にオレンジ色のテープで「十郎」の文字があったそうですが(他所のブログより)、細すぎて気付かなかったのでは、ということ。確かに、オレンジ色のテープが張ってあったのは気付きましたが、「十郎」の文字になっているとは気付きませんでした。35周年の時はシテが山本家で、蜘蛛の巣が「山本」になってましたね(笑)。 最後は、ド派手に蜘蛛の糸が入り乱れ、クラッカーのピンクやブルーの糸まで出て、善竹兄弟がバズーカ砲のようなものを構えて金の糸を飛ばすわ、たちまち糸だらけの大立ち回り(大笑)。倒れた十郎蜘蛛を息子たちが「お父さ〜ん」と抱き起して、抱えて行きました。
「蚊相撲」 登場人物3人ともシテ方による狂言です。あちこち脱線するので、30分くらいの演目が45分くらいかかっていました。最初から太郎冠者が呼び出されるのに、「ねんのう早かった」と言われるところを、モタモタして「遅かったな」と言われるしまつ(笑)。シテ方がやると、大名もちょっと貫禄がある感じがします。 大名と蚊の精が相撲を取る段になると、橋掛りで待たされている蚊の精がシコを踏んだり、押し出しの稽古をしているのが可笑しい。腰が座っているので様になってるんですよ。 相撲を取る時には、塩ならぬ飴が見所に撒かれるし(笑)。今回は大蔵流の「蚊相撲」だったので、和泉流のように大名が大団扇で扇ぐのではなく、太郎冠者が普通の扇で扇いでました。終りの方で、ちょっと端折って進行したら、大名が「なんか、途中飛んだような」と言ったのも笑えました。 一調「勧進帳」「西行櫻」 これは、もう正統派。「勧進帳」は万作さんに小鼓がシテ方武田宗和さん。「西行櫻」は大鼓方國川純さんに太鼓がシテ方関根祥六さん。上手すぎる。お笑いモードがキリっと締まった感じです。
『猩々乱』双之舞、和合三段之舞 シテが萬斎さんに、ツレが広忠さん。 舞台正先に大きな壷が置かれ、蓋を後見の万作さんが取って壷の横に置いて行きます。 舞には自信ありそうな二人なので、正統派で見せるかなと思いましたが、もっと余裕綽々という感じでした。萬斎さんはもちろんですが、広忠さんの謡いの声の良さにも感心。 萬斎さんは、見事に舞いながらも壷に頭を突っ込んだり、つま先立ちの動きの時にバレーのような跳びを入れてみたり、広忠さんの後ろから足を高く跳ね上げて、蹴るような仕草をしてみたり、挙句の当てに狂言の寝方でゴロリ。すべてが余裕の行動に見えました。 広忠さんも、舞ながら大鼓の音が気になるんじゃないかと思っていたら、やっぱり、途中で大鼓の森さんに拍子の取り方を教えたり、二人とも余裕でしたね。この時、森さんのブログによると本当に間違えて、すかさず注意されたそうです。
舞囃子「吉野天人」 舞はちょっとギクシャクした感じでしたが、シテ方の女性二人の笛と太鼓がとっても上手い!
一調 「屋島」は小鼓方の久田舜一郎さん。堂々としていて、シテ方の謡いよりも言葉がはっきりしていて解りやすい。 「放下僧」は太鼓方の大江照夫さん。謡いだすと、とってもいいお声、でも途中で詞章を忘れてしまったのか、プロンプが入る。その後も何度も詰まって、大鼓を打つシテ方の中森貫太さんが代わりに謡ったり、御簾の裏から何人かが助け舟で謡いだすので、最後には、なんだか地謡のような合唱状態になってました(笑)。
半能『融』十三段之舞 シテは笛方の一噌庸二さん。なぜか直面でした。あるシテ方のブログによると、今回の『融 十三段之舞』の装束や特殊な出方(一度橋掛りに出て後ろ向きに揚げ幕に戻り、幕を下げずにまた出てくる)は金剛流の型によるものだそうです。たぶん、庸二さんは金剛流を習ってたんでしょうね。 大鼓のシテ方味方健さんは、なぜか途中から大鼓が拍子盤に替っていていて、扇で拍子盤を打っていました(笑)。でも、最後はまた大鼓に替っていましたが。
「菌」 後見以外は全員下掛り宝生流のワキ方による「菌(くさびら)」。大きなキノコを退治しようとする山伏が祈るほどに、どんどんキノコが増殖しちゃうやつですが、これも大蔵流のもの。和泉流では「茸」と書きます。 さすがワキ方、僧姿には慣れている殿田謙吉さんの山伏はかなり貫禄があって、大僧正みたいです。法力も強そうに見えちゃいます。頭に頭巾を被っているし、山伏姿も大口を穿いて『安宅』の弁慶のよう。 それに対して、ちょこちょこと出てくるキノコたち。最初に一人出てきたキノコの姿を見た何某役の舘田善博さんは、よっぽど可笑しかったのか、何度も吹いてました(笑)。ちょっと太めなキノコ、殿田山伏には「おまえは梅村だな」「ダイエットにはちょうどよいぞ」などと言われて、祈り出されて退散。でも、その後、どんどん出てくるキノコたち、「おまえは御厨だな、そんなへっぴり腰ではワキ方は勤まらんぞ」などと言われつつ、最後にはキノコ達に追い詰められて、山伏も逃げて行ってしまいます。 大蔵流と和泉流だと随分違うもんだと新たな発見。そういえば、大蔵流の「菌」は、意外と見たことなかったっけ。
半能『石橋』大獅子 山本東次郎さんのシテで、山本家総出の『石橋』。正統派で、見せてくれるだろうと思った通り。本職顔負けかと思われる立派な獅子の舞でした。白獅子の東次郎さんに赤獅子は3頭も出て華やか、動きも素晴らしい。さすが山本家です。囃子方で笛を担当していた則秀さんも上手でした。大鼓のシテ方柴田稔さんの掛声、なるほど獅子の咆哮に聞こえました。
|
|
| 2009年2月2日 (月) |
鎌倉能舞台四十周年記念特別公演「乱能」 出演者 |
会場:国立能楽堂 11:00開演
『邯鄲』 シテ(盧生):観世元伯(観世流太鼓方) 子方(舞童):鵜澤洋太郎(大倉流小鼓方) ワキ(勅使):安福光雄(高安流大鼓方) ワキツレ(侍臣):徳田宗久(観世流太鼓方) ワキツレ(侍臣):小寺真佐人(観世流太鼓方) ワキツレ(侍臣):加藤洋輝(観世流太鼓方) ワキツレ(輿舁):小野寺竜一(一噌流笛方) ワキツレ(輿舁):鳥山直也(観世流小鼓方) 間(宿の女主):一噌隆之(一噌流笛方) 大鼓:関根祥人(観世流シテ方) 小鼓:八田達弥(観世流シテ方) 太鼓:中森貫太(観世流シテ方) 笛:中所宜夫(観世流シテ方) 後見:古賀裕己(大倉流小鼓方)、山本則俊(大蔵流狂言方) 地謡:田邊恭資(大倉流小鼓方)、大川典良(金春流太鼓方) 大日方寛(下掛宝生流ワキ方)、梅村昌功(下掛宝生流ワキ方) 亀井広忠(葛野流大鼓方)、小寺佐七(観世流太鼓方) 安福建雄(高安流大鼓方)、森常好(下掛宝生流ワキ方)
舞囃子「小袖曽我」 深田博治、高野和憲(和泉流狂言方) 大鼓:中森貫太(観世流シテ方) 小鼓:古川充(観世流シテ方) 笛:御厨誠吾(下掛宝生流ワキ方) 地謡:月崎晴夫(和泉流狂言方)、河村眞之介(石井流大鼓方) 白坂信行(高安流大鼓方)、舘田善博(下掛宝生流ワキ方)
『土蜘蛛』 シテ(土蜘蛛の精):善竹十郎(大蔵流狂言方) ツレ(源頼光):佃良勝(高安流大鼓方) ツレ(胡蝶):善竹富太郎(大蔵流狂言方) ツレ(頼光の従者):善竹大二郎(大蔵流狂言方) ワキ(独武者):安福建雄(前述) ワキツレ(独武者の従者):柿原光博(高安流大鼓方) ワキツレ(独武者の従者):佃良太郎(高安流大鼓方) ワキツレ(独武者の従者):大倉栄太郎(大倉流大鼓方) 間(独武者の下人):高野彰(高安流大鼓方) 大鼓:佐久間二郎(観世流シテ方) 小鼓:五木田三郎(観世流シテ方) 太鼓:中森健之介(観世流シテ方) 笛:野村小三郎(和泉流狂言方) 後見:山本則孝、山本則直(大蔵流狂言方) 地謡:栗林祐輔(森田流笛方)、山本則重(大蔵流狂言方) 梶谷英樹(金春流太鼓方)、桜井均(金春流太鼓方) 吉谷潔(金春流太鼓方)、大江照夫(金春流太鼓方) 國川純(高安流大鼓方)、殿田謙吉(下掛宝生流ワキ方)
「蚊相撲」 大名:駒瀬直也(観世流シテ方) 太郎冠者:遠藤喜久(観世流シテ方) 蚊の精:奥川恒治(観世流シテ方) 後見:長沼範夫(観世流シテ方)
仕舞 「高砂」 河村眞之介(石井流大鼓方) 「三笑」 桜井均、大川典良、梶谷英樹(金春流太鼓方) 「船弁慶」後 吉谷潔(金春流太鼓方) 地謡:小野寺竜一(一噌流笛方)、徳田宗久(観世流太鼓方) 安福光雄(高安流大鼓方)、鳥山直也(観世流小鼓方)
一調 「勧進帳」 野村万作(和泉流狂言方) 小鼓:武田宗和(観世流シテ方) 「西行櫻」 國川純(高安流大鼓方) 太鼓:関根祥六(観世流シテ方)
『猩々乱』双之舞、和合三段之舞 シテ(猩々):野村萬斎(和泉流狂言方) ツレ(猩々):亀井広忠(葛野流大鼓方) ワキ(高風):古賀裕巳(大倉流小鼓方) 大鼓:森常好(下掛宝生流ワキ方) 小鼓:味方玄(観世流シテ方) 太鼓:坂真太郎(観世流シテ方) 笛:中森貫太(観世流シテ方) 後見:野村万作、高野和憲(和泉流狂言方) 地謡:小野寺竜一(一噌流笛方)、小寺真佐人(観世流太鼓方) 野口能弘、則久英志(下掛宝生流ワキ方) 白坂信行(高安流大鼓方)、助川治(観世流太鼓方) 観世元伯(観世流太鼓方)、松田弘之(森田流笛方)
舞囃子「吉野天人」 飯冨雅介(高安流ワキ方) 大鼓:桑田貴志(観世流シテ方)、小鼓:弘田裕一(観世流シテ方) 太鼓:墨敬子(観世流シテ方)、笛:新井麻衣子(観世流シテ方) 地謡:加藤洋輝(観世流太鼓方)、吉谷潔(金春流太鼓方) 河村眞之介(石井流大鼓方)、佃良太郎(高安流大鼓方)
一調 「屋島」 久田舜一郎(大倉流小鼓方) 小鼓:足立禮子(観世流シテ方) 「放下僧」 大江照夫(金春流太鼓方) 大鼓:中森貫太(観世流シテ方)
半能『融』十三段之舞 シテ(源融の霊):一噌庸二(一噌流笛方) ワキ(旅僧):白坂信行(高安流大鼓方) 大鼓:味方健(観世流シテ方) 小鼓:河村晴道(観世流シテ方) 太鼓:小島英明(観世流シテ方) 笛:鈴木啓吾(観世流シテ方) 後見:善竹十郎(大蔵流狂言方)、一噌隆之(一噌流笛方) 地謡:栗林祐輔(森田流笛方)、鳥山直也(観世流小鼓方) 大倉栄太郎(大倉流大鼓方)、善竹富太郎(大蔵流狂言方) 柿原光博(高安流大鼓方)、寺井宏明(森田流笛方) 國川純(高安流大鼓方)、鵜澤洋太郎(大倉流小鼓方)
「菌」 山伏:殿田謙吉(下掛宝生流ワキ方) 男:舘田善博(下掛宝生流ワキ方) 菌:大日方寛、則久英志、御厨誠吾、野口能弘、梅村昌功、森常太郎 (下掛宝生流ワキ方) 後見:永島忠侈(観世流シテ方)
半能『石橋』大獅子 シテ(白獅子):山本東次郎(大蔵流狂言方) ツレ(赤獅子):山本泰太郎、山本則孝、山本則重(大蔵流狂言方) ワキ(寂昭法師):山本則直(大蔵流狂言方) 大鼓:柴田稔(観世流シテ方) 小鼓:味方團(観世流シテ方) 太鼓:山本則俊(大蔵流狂言方) 笛:山本則秀(大蔵流狂言方) 後見:遠藤博義(大蔵流狂言方)、野村小三郎(和泉流狂言方) 地謡:田邊恭資(大倉流小鼓方)、月崎晴夫、深田博治(和泉流狂言方) 吉谷潔(金春流太鼓方)、安福光雄(高安流大鼓方) 久田舜一郎(大倉流小鼓方)、安福建雄(高安流大鼓方) 松田弘之(森田流笛方) 台持:善竹富太郎(大蔵流狂言方)、大倉栄太郎(大倉流大鼓方) 加藤洋輝(観世流太鼓方)、小寺真佐人(観世流太鼓方)
|
|
|