| 2009年4月18日 (土) |
春狂言2009 東京公演 |
会場:国立能楽堂 14:00開演
「三番三」 三番三:茂山千之丞、千歳:茂山茂 笛:藤田六郎兵衛、小鼓:鵜澤洋太郎、古賀裕己、飯冨孔明、大鼓:亀井広忠 後見:茂山あきら、茂山童司
お話:茂山童司
「文相撲」 大名:茂山七五三、太郎冠者:丸山やすし、新参者:茂山宗彦 後見:増田浩紀
「腰祈」 山伏:茂山正邦、太郎冠者:茂山童司、祖父:茂山あきら 笛:藤田六郎兵衛、小鼓:古賀裕己、大鼓:亀井広忠 後見:山下守之
「三番三」 80歳を過ぎた者だけに許されるという金地に鶴の丸の図柄のついた烏帽子をつけた御歳86歳の千之丞さんの「三番三」です。これが、観たかったんです。最初の出が、お囃子が始まってから揚幕から「お〜さえ、お〜さえ、お〜」と橋掛りを走り出てくる変則的(?)な演出で、ちょっとびっくり。しかし、千之丞さんはエネルギッシュですねえ、本当に86歳とは思えない軽やかな動きと力強さのある「三番三」でした。
休憩を挟んで、童司くんのお話。80歳以上になると、今日の千之丞さんが着けていた「金地鶴丸剣先烏帽子」という、金地に鶴が入った烏帽子を着けられるということですが、「昔は80以上なんて生きてる人の方が少ないと思いますけど、いつからそういうことになったんでしょうねぇ・・・。」なんて言ってました(笑)。 「腰祈」では、百歳の老人が出てきますが、年寄り役は常に腰を曲げているため、本物の年寄りがやると辛いので、そこそこの年齢の人がやります。とのこと、年寄り役といえば・・・千三郎さんが得意ですが、今回は童司さんのお父さんのあきらさんがやります。 千五郎家の人たちは、やはり関西系のノリで、若手も話がうまいですね。
「文相撲」 七五三さんと宗彦さんの親子相撲対決。 太郎冠者が連れてきた新参者が相撲が得意と聞いて、相手になる大名ですが、最初は負けてしまい、相撲の書を読んで2度目は勝ちます。しかし、三度目は足を取られて相撲の書を読んでいるうちに倒され負けてしまいます。悔しがった大名はこんなもの役にたたないと、相撲の書を破り捨て、腹いせに太郎冠者を引き倒して行ってしまいます。 七五三さんの大名の無邪気さとトボケた味がいいです(笑)。しかし、千五郎家の人たちは本当にみんな声がいい。七五三さんと丸石さんの掛け合いも「いかほど〜」「ものほど〜」「なにほど〜」と、朗々と響く声がとっても気持ち良い。
「腰祈」 修行を終えた山伏が、本国へ帰る途中、都の祖父を見舞いに立ち寄りますが、祖父の腰があまりに曲がっているので、気の毒に思い、祈りで直そうとします。ところが、呪力が強すぎるのか腰が伸びすぎたり、曲がりすぎたりで、とうとう祖父を怒らせてしまいます。 正邦さんの山伏は本当に行力が強そうな堂々とした山伏ですが、せっかくの親切が裏目に出て、ちょっと気の毒。あきらさんの祖父は杖をついて腰を曲げ、よろよろと出てきますが、やっぱり、老人役適任(笑)の千三郎さんより腰が伸びた感じが否めませんでした。 |
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| 2009年4月16日 (木) |
第46回野村狂言座 |
会場:宝生能楽堂 18:45開演
「昆布売」 昆布売:野村万之介、何某:深田博治 後見:破石晋照
「吃」 庵太郎:野村万作、妻:石田幸雄、仲裁人:野村万之介 後見:岡聡史
素囃子「神楽」 大鼓:高野彰、小鼓:住駒充彦、太鼓:小寺真佐人、笛:栗林祐輔
「猿聟」 聟猿:野村萬斎 舅猿:石田幸雄 姫猿:高野和憲 太郎冠者猿:野村遼太 供猿:竹山悠樹、深田博治、岡聡史、月崎晴夫 地謡:野村万作、野村万之介、破石晋照、加藤聡、中村修一 後見:野村良乍、時田光洋
「昆布売り」 供を連れずに北野天神参詣に出かけた男が、通りかかった昆布売りを強引に道連れにして、無理やり太刀を持たせ、供に仕立てます。最初のうちは大人しくしていた昆布売りですが、やがて持たされていた太刀を抜いて男を脅し、刀を取り上げて、さまざまな売り声で昆布を売るよう強要します。男は初めはしぶしぶ、だんだん節を付けた売り声に興に乗ってきますが、昆布売りはさんざん男をなぶったあげく、太刀を持ったまま逃げてしまいます。
初めは威張っていた男が太刀で脅されて、すっかり弱腰になる深田さんのヘタレっぷりも良く、そして今回は何と言っても万之介昆布売りの意地悪っぷりがツボ、太刀を返す振りをして「やっぱり返してやんないよ〜」と踵を返して逃げてく姿が可愛くて大笑いでした。
「吃」 初めて観る演目です。 棒を振り上げた妻に追い立てられながら庵太郎が逃げてきます。間に入った仲裁人に妻は夫が怠け者なので打ち殺してやると追いかけまわし、庵太郎は妻の方こそ怠け者の悪妻なので、離縁したいと訴えます。妻は離縁するなら、嫁入り支度に持ってきた十二単を返せと迫ります。庵太郎はどもるせいで上手く言い返せないことを悔しがりますが、謡の節に乗せればどもらないからと、妻の言い分に謡って反論します。嫁入り道具の中身を暴露され、ことごとく反撃された妻は益々激怒して庵太郎を追い回し、庵太郎はほうほうの態で逃げていきます。
揚幕から夫が妻に追い立てられて登場する「鎌腹」のような幕開けです。石田さんの妻のわわしさはそうとうなもの(笑)、万作さんのどもり方は大袈裟でなく、ちょっとどもるという感じで厭味がなくて、自然な感じです。謡になると、スラスラとかなり辛辣に妻をやり込める庵太郎。実際はどっちもどっちの似たもの夫婦なんだろうなと思えて笑えます。
「猿聟」 能『嵐山』の替間ですが、嵐山の舅猿のところへ、吉野山の聟猿が妻や供猿を連れて聟入りの祝いをする話です。なんといってもお猿さんなので、所どころに猿語の「きゃ〜きゃ〜きゃ〜」が入るのが面白いところ(笑)。大蔵流だと、謡の他は全部猿語になりますが、話の流れや言い方、身振りなどでほとんど理解できます。 猿語の台詞ばかりでなく、頭やお尻を掻いたり、四つん這いになって走りまわったり、桜の木をゆすったりと突然猿らしい動きになるのが可笑しい。一番動きのいい月崎猿は橋掛りで逆立ちも披露(笑)。 聟猿の萬斎さんは出のところで、柱に抱きついたり、欄干に上ったりと身軽に動き回り、聟さんの三段ノ舞にも身せせりなどの猿らしい動きが加わったりしますが、謡いは朗々としてかっこいい。そのギャップがなんとも言えません。最後は舅と聟の連れ舞。「俵を重ねてめんめんに〜」と「靱猿」に出てくる猿歌でぴょんぴょん跳ねたり、ゴロンゴロンと転がってめでたく締めくくり(笑)。いつ見ても何とも楽しくてめでたい気分になれます。 |
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| 2009年4月8日 、11日、14日 |
幸弘☆萬斎☆広忠☆能楽現在形 第8,9,10回公演 |
番組
第8回公演 2009年4月8日(水)会場:宝生能楽堂 18:30開演
一調「願書」 謡:野村四郎 大鼓:亀井広忠
小舞「住吉」 野村萬斎 地謡:野村万作、深田博治、高野和憲
一調一管「豊後下り端」 笛:一噌幸弘、太鼓:観世元伯
『望月』古式(観世流) シテ(小澤刑部友房):片山清司 ツレ(安田友治の妻):梅若晋矢 子方(花若):小早川康光 ワキ(望月秋長):殿田謙吉 アイ(望月の下人):野村萬斎 笛:一噌幸弘、小鼓:吉阪一郎、大鼓:亀井広忠、太鼓:観世元伯 後見:野村四郎、味方玄、浅見慈一 地謡:観世銕之丞、観世喜正、清水寛二、西村高夫 馬野正基、長山桂三、谷本健吾、観世淳夫
第9回公演 2009年4月11日(土)会場:宝生能楽堂 14:00開演
一調「起請文」 謡:辰巳満次郎 大鼓:亀井広忠
「法師ヶ母」 男:野村萬斎、妻:高野和憲 地謡:野村万作、野村万之介、深田博治、竹山悠樹、月崎晴夫 後見:時田光洋 笛:一噌幸弘、小鼓:成田達志、大鼓:亀井広忠
『望月』(宝生流) シテ:金井雄資 ツレ:朝倉俊樹 子方:波吉敏信 ワキ:宝生欣哉 アイ:野村万作 笛:一噌幸弘、小鼓:成田達志、大鼓:亀井広忠、太鼓:前川光範 後見:近藤乾之助、宝生和英、渡辺茂人 地謡:高橋章、大坪喜美雄、武田孝史、今井泰行 辰巳満次郎、佐野登、小倉伸二郎、和久荘太郎
第10回公演 2009年4月14日(火)会場:宝生能楽堂 18:30開演
「勧進帳」 謡:塩津哲生 大鼓:亀井広忠
小舞「景清」後 野村萬斎 地謡:石田幸雄、深田博治、高野和憲、月崎晴夫
一調一管「鷺乱」 謡:香川靖嗣 笛:一噌幸弘、太鼓:金春国和
『望月』 シテ:友枝昭世 ツレ:狩野了一 子方:内田貴成 ワキ:森常好 アイ:野村萬斎 笛:一噌幸弘、小鼓:大倉源次郎、亀井広忠、金春国和 後見:内田安信、粟谷浩之、佐々木多門 地謡:香川靖嗣、塩津哲生、大村定、中村邦生 友枝雄人、金子敬一郎、内田成信、大島輝久
今回も、三流三者それぞれの『望月』が見ごたえがあって本当に面白かったです。世田谷パブリックシアターでやる時と違い、能楽堂での公演なので、照明や音響効果などを使わない本来の能の形式での『望月』の面白さを堪能しました。
8回目は観世流で「古式」の小書付きのため、シテの友房と子方の花若がワキの望月を討つ場面で望月との問答があるので、よりリアルな緊張感があり、宝生流、喜多流の常の演出との違いが少なくなりました。 シテの片山清司さんは、前場の時から望月の方をキッと睨む目線と眼力を見せ、仇討の気概がひしと感じられました。獅子舞の装束は前場の素襖長袴のままで白覆面に白頭、頭頂に赤い牡丹の花がついていて、頭の扇は2枚重ねでした。長袴での獅子の舞は初めて観るので、動きづらいのではないかと思いましたが、それでも、そんなことも感じさせないキレの良い舞は、さすが! ツレの梅若晋矢さんが美しく、盲御前に扮して杖を前左右にコツコツとついて歩く姿が萬さん、万作さんのそれと同じだったのも印象的でした。 子方の小早川くんは観世ではよく出ている子方だけあって、安心して観ていられました。 お囃子もパワーがあって、小鼓、大鼓の掛け声が本当に獅子の咆哮のように聞こえました。 余談ですが、この日の萬斎さんは、なぜか髪を真ん中分けにしていて、そんなに違和感はなかったですが、ちょっと「あれっ」と思っちゃいました。
9回目は宝生流で、シテは金井雄資さんで、今回は後半の盛り上がりが凄かったです。 前場は観世流の時より地味な感じで、シテもあまり表情を変えず淡々と進んでいましたが、盲御前に扮した安田の妻が曽我兄弟の物語を語る場面で地謡の謡いが烈しくなり、小鼓の成田さんの掛声も凄い気迫で怖い顔。最高潮で子方が「討とう!」と叫ぶ緊張感溢れる場面あたりからどんどん盛り上がってきました。 子方くんは最初のツレとの謡では、ツレに声を合わせるためにだんだん謡が弱くなってしまいましたが、「討とう!」と叫ぶタイミングは今回の3人の中では一番良かったと思います。正面前の方の右よりだった私の席からは、走り込んでワキの笠を飛び越えた時、ちょっと滑ったような感じがし、ワキの肩をつかんで踏みとどまったように見えましたが、なかなか勢いがあって良かったかもしれません。 アイの語りの場面では萬斎さんはちょっとコミカルな感じが強く出ますが、万作さんだと柔らかい可愛さを感じます。刀の柄に手を掛ける場面ではどちらも一瞬にして緊張感漲るカッコ良さでした。 後場のシテは赤頭に扇は1枚。袴は白の大口でした。今回は凄すぎるお囃子にのって、金井さんの獅子の舞にも凄い気迫が漲り、その迫力に目が釘付けになるくらいでした。面を外した時の形相も、それまでの淡々とした表情とは一変して怒りと決意の漲った表情だったのにはびっくりしました。 今回のお囃子は、小鼓、大鼓ばかりでなく、太鼓まで吠えていて(驚)、幸弘さんの笛もノリノリ、とにかく凄かった!! さて、10回目は喜多流で、シテは友枝昭世さん。 シテの登場の時からスーっと運足が美しく、座っている時も袖の先まで微動だにしない。科白には説得力があり、キッパリとしたところはキッパリとして相手を納得させてしまう感じがあります。 後場は赤頭に扇は2枚、袴は白の大口でした。 そして、やっぱり、舞はピカイチ!頭のてっぺんから足の先まで一部の隙も無いとはこういうことでしょうか。美しく威厳があり、吸い込まれるように見入ってしまいました。鳥肌ものでした!こんな美しい獅子の舞は他には無いでしょう。 今回のお囃子は、前回より抑えた感じで、それが、突出することなく、友枝さんの舞には合っていたように感じました。 喜多の子方くんは一番可愛いくて(^^)、望月を討ち取った時は気合が入っていて健気な感じでした。 ツレの狩野さんはやっぱり美しい!
三流の『望月』を連続で観ると、それぞれの型の違いなども分かりやすく、ツレが盲御前に扮した時の杖の扱いの違いでは、ツレが退場する場面で、観世は後見座の前で杖を捨て、宝生は杖を静かに後見に渡し、喜多は杖を抱えて去っていくなど、それぞれの心情の表現の仕方が違います。 宿で一緒になった安田友治の妻と子と望月の位置の分け方では、観世は初めに来た妻と子が囃子方の後ろに行って、望月が別の部屋に入ったことを表し、宝生では、妻と子はそのままで、見えないという約束事の上で後で来た望月と並んでいても、別の部屋にいるという設定。喜多は後で来た望月と従者がそのまま囃子方の後ろに入って行く形でした。
ともあれ、今回は三流三様、三者三様の面白さがあり、どれも緊張感のある良い舞台で大満足でした!! |
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| 2009年4月10日 (金) |
第5回善竹富太郎の狂言会「SORORI」 |
会場:国立能楽堂 19:00開演
おはなし:善竹富太郎
「悪坊」 悪坊:大藏教義、出家:大藏千太郎、亭主:善竹十郎
「鈍太郎」 鈍太郎:善竹富太郎、下京の本妻:大藏基誠、上京の愛人:善竹大二郎
最初に舞台に紋付袴姿の富太郎さんが、にこやかに登場。今日の演目の解説など、分かりやすくお話してくれます。お話にもかなり慣れてきたのか、スムーズな解説。 「鈍太郎」では、巨体の富太郎さんが二人の手車に乗るとあって、さて、ちゃんと上がるでしょうか?と、ちなみに最初の練習では上がりませんでした(笑)とのこと。
「悪坊」 「悪太郎」に似ていると思ったら、「悪太郎」の原型と考えられる作品だそうで、「悪太郎」よりも単純な展開です。 大酒飲みで乱暴者の悪坊が、旅の僧を呼び止めて無理やり道連れとなり、長刀で脅して自分の定宿に連れこんでマッサージをさせているうちに眠ってしまいます。その隙に宿の主人に悪坊の正体を聞いた僧は、悪坊の小袖や長刀をとりあげ、代わりに自分の衣や傘を残して逃げて行きます。目が覚めた悪坊は自分の姿に驚くものの、これを機縁に出家の志を立てます。 若い大蔵教義さんが大髭で乱暴者の悪坊を熱演(笑)。いつものイメージとは違い、本当に大酒飲みの乱暴者に見えて、新しい発見(笑)、なかなかのものでした。千太郎さんはいつもながら気の弱い役が似合ってます。悪坊に振り回されて本当に迷惑そう、最後に寝入った悪坊の小袖と長刀を取り上げ、自分の衣と傘を置いて逃げて行くのに、ほとほと迷惑したと言い捨てて去って行きましたが、目覚めた悪坊が自分の姿を観て、僧を恨むのでもなく、改心して出家するなんて、本当は僧よりも悪坊のほうが単純で素直なんじゃないかと思えました。
「鈍太郎」 和泉流では、何度か観ている演目ですが、大蔵流では初めてです。やはり和泉流とは違うところがいくつかあって面白かったです。 昔は1か月は30日で、一日少ない月もあるため、鈍太郎が月の初め15日を愛人の家へ、と言うと、本妻がそれでは小の月は自分の方が一日少なくなると文句を言い、鈍太郎がそのたびに「それならば、なもーだ、なもーだ」と鉦鼓を打ち鳴らしながら立ち去ろうとして態度で脅します。二人で手車をして「鈍太郎殿の手車」と囃す時も、最初は妻が「鈍太郎メの手車」と言っています(笑)。それを聞き咎めた鈍太郎はまた「それならば・・・」と去ろうとするので、しかたなく妻も「鈍太郎殿の手車」と囃します。和泉流よりも妻の反応が正直で面白く感じました。 さて、前振りで巨体の富太郎さんが持ち上がるだろうかと皆が見守る中、ちゃんと上がった時には思わず見所から拍手が起こり、それからずっと幕入りまで拍手喝采でした。
最後に、また挨拶に現れた富太郎さん。持ち上がって拍手が起こった時は嬉しかったそうです。学校狂言などで、小柄な十郎さんが富太郎さんをひょいとおぶったりすると、子供たちがびっくりするそうですが、持ち上げるにもコツがあるんだそうです。皆まんまと、初めの思わせぶりな口ぶりに乗せられちゃったかな(笑)。でも、楽しい舞台でした。 |
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