| 2009年8月29日(土) |
納涼茂山狂言祭2009 |
会場:国立能楽堂 開演:18:30
お話:茂山逸平
「昆布売」 大名:茂山宗彦、昆布売:茂山千之丞 後見:島田洋海
「泣尼」 出家:茂山千五郎、尼:茂山あきら、施主:茂山童司 後見:島田洋海、増田浩紀
新作狂言「だんご聟」作・演出/茂山千三郎 聟:茂山千三郎、女房:茂山逸平、舅:丸山やすし、太郎冠者:茂山茂、 後見:鈴木実
毎年、夏に行われる「納涼茂山狂言祭」。今回の東京公演は、本日の昼と夜、明日の昼の3回公演で3回とも演目が違います。いつもどの回にしようかと迷うところですが、今回は、新作狂言の「だんご聟」が観たことがなかったので、この回にしました。
まず、逸平くんが出てきて「お話」。明日は総選挙という話から入って、演目の解説ですが、「昆布売」の解説では、「横柄な大名が、太刀を自分で持つのが嫌なので、通りがかりの人に持たせてしまおうと、いや〜なやつですねぇ」「昆布を売る人なので、持ち方を知らない。そのうち、ムカッとして斬ってやろうと・・・」「人に刀を持たせたらあぶないという狂言ですね」客(大笑)、そんな話だったっけ?(苦笑)。そんな調子で、超端折った解説です(笑)。 とにかく「面白くなくても、まず笑ってみよう」「笑っているうちに面白くなる」「隣の人より先に笑ってみよう」と(笑)。 最後に、ロビーで売ってる、プログラムやグッズの宣伝。これが肝心!プログラムには速報として、来年1月の「新春天空狂言」の発売が載っています。もう、会場ロビーで先行発売しているとのこと。天空狂言では、86歳の千之丞さんが毎年「三番三」を踏んで、最高齢記録を更新中とのこと。自らの記録を更新している千之丞。ボルト!のごとし(笑)。 茂山狂言カレンダーも販売中。来年のカレンダーは正邦さんの双子ちゃんの初舞台写真が表紙に載って4世代共演です。茂山家も若いと思っていたら、もう20代は童司だけ、そこで新入りの4歳が入って、一気に若返りを図ります!茂山狂言カレンダー、めざせ、嵐の売上!と、なんで「嵐」の売上かと思ったら、千駄ヶ谷で「嵐」のコンサートがあったもよう。帰りに千駄ヶ谷駅に「嵐」の団扇を持った、コンサート帰りのファンと思われる人たちがいました(笑)。 終始、笑いが絶えない、さすがに話上手な逸平くんでした。
「昆布売」 供を連れずに外出した大名が、誰かに太刀を持たせようと通りかかった若狭の昆布売りに声をかけて無理やり同行させて家来のように太刀を持たせます。初めのうちは言うとおりにしていた昆布売りも我慢できなくなって持たされていた太刀を抜いて大名を脅して仕返しするという、狂言によくあるパターンですが、それが昆布売りなので、大名に昆布を売らせるという話です。 宗彦さんが、ドラマで若狭小浜と縁を持ったことで、ぜひ「若狭小浜の〜」と売り歩いて欲しいとのリクエストに答えての配役だそうです。 横柄で威張った大名が、太刀で脅かされて言いなりになって売るわけですが、「二人大名」でもあるように、最後には結構大名の方がノッテきちゃったりするんですよね。最初から大名より1枚も2枚も上手に見える千之丞昆布売にいいようにいじられてるって感じですが、いつもながら千之丞さんは良いお声です。
「泣尼」 説法をしたことがない出家が、説法を頼まれ、近所のよく泣く尼を連れて行って同席させ、泣かせれば説法もありがたく聞えるだろうと、お布施の半分を渡す約束をして連れていきます。ところが、出家が説法を始めると尼は泣くどころかついには寝てしまいますが、説法が終わると約束のお布施を要求するので、出家は怒って尼を押し倒して逃げいくという話です。 万作家でも何度か観た演目ですが、今回はあきらさんが尼の役。茂山家では祖父や老尼の役は千三郎さんがはまり役ですが、あきらさんは腰の曲がり方が千三郎さんほど曲げられないのか、いつもわりと背中が伸びた感じになってます。やっぱり、ほとんど90度に曲げて動き回るのはかなりキツイでしょうね。 でも、あきらさんの居眠り尼さんも可愛らしくて、イラつく千五郎出家とのコンビもピッタリでした。
「だんご聟」 鳥取県の東部、佐治村(現在の佐治町)に伝わる民話集「佐治谷ばなし」を基に千三郎さんが作・演出した新作狂言です。下敷きとなる佐治谷話「だんご」は、狂言「岡太夫」と同類の話と考えられるそうですが、「岡太夫」より、こちらの「だんご聟」のほうが、ずっと面白いですとのこと。実際、これは面白かった!それに、そのまま古典狂言のようでした。
聟が祝儀の酒を持って、聟入りに舅のところへ行き、祝儀の酒に酔って上機嫌。続いて出された茶菓子をたいそう気に入り、その名を尋ねて「だんご」と教わります。娘(聟の女房)が作り方を知っていると舅が言うので、名前を忘れないように「だんご、だんご」と謡いながら家路を急ぎますが、帰り道にある、川を越える時、いつものように「ひょい」と言って越えると、いつの間にか「だんご」が「ひょい」になってしまいます。 家に着いた聟は「ひょい」を作れと言いますが、妻は何のことかわかりません。そのうち妻が、「ひょい」とは、夫はいつも川を越える時に言う掛け声ではないかと言い、夫も「はっ」と気が付きますが、どうしても名前を思い出せません。妻にせかされて怒った夫は、妻を叩き、叩かれた妻が「団子のようなコブができた」と言ったので、やっと「だんご」を思い出します。 「だんご」の三文字も覚えられないとは、と呆れる妻は、怒って夫を追い込みます。
「岡太夫」では、漢詩の内容にこじつけて食物の名をあげる趣向ですが、もっと分かりやすい妻とのやりとりが可笑しくて、聟入りの時に出てくるだんごが3色の大きな串だんごなのも笑えます。面白くない曲を新作で面白く変えてしまうというのもこの家らしい。 |
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| 2009年8月11日(火) |
万作・狂言十八選第十回 |
会場:東京芸術劇場 19:00開演
「法螺侍」 洞田助右衛門:野村万作 太郎冠者:野村萬斎 次郎冠者:深田博治 焼兵衛:月崎晴夫 お松:石田幸雄 お竹:高野和憲 笛:一噌幸弘、太鼓:桜井均 後見:岡聡史
「茸」 山伏:野村萬斎 何某:月崎晴夫 茸:中村修一、岡聡史、竹山悠樹、野村裕基、野村遼太、高野和憲、時田光洋 鬼茸:石田幸雄 後見:野村良乍
「法螺侍」高橋康也作、野村万作演出 シェイクスピア原作「ウインザーの陽気な女房たち」の翻訳による新作狂言ですが、一部映像でしか観たことがなかったので、今回は楽しみにしていました。
中年の侍洞田助右衛門は不行跡からリストラされ、お金に困って焼兵衛の妻お松と平兵衛の妻お竹に恋文を送り、たぶらかしてお金をせしめようと企みます。お松とお竹は友達で、この評判の良くない助右衛門から手紙がきたことを多いにあざ笑い、手紙を届けた召使いの太郎冠者、次郎冠者も協力して懲らしめてやるべく計略をたてます。 四人の計略に引っ掛かってお松のもとに忍んでいく助右衛門がお松を口説いているところへ、お竹が現れるという計略ですが、そこにお松と助右衛門の仲を邪推して嫉妬する夫の焼兵衛が乱入。慌てふためいた助右衛門はお松に言われて洗濯籠に隠れますが、これも計略のうちで、天秤棒で洗濯籠を担いだ太郎冠者、次郎冠者が洗濯物ごと助右衛門を川へ投げ込んでしまいます。 四人はさらに焼兵衛も仲間に加えてもう一度助右衛門を懲らしめる算段をたて、お松が逢引の手紙で鎮守の森へ呼び出します。またしても、のこのこと現れた助右衛門は、待ち合わせの場所に隠れて変装した一同に散々に驚かされてばったり倒れてしまいます。しかし、一同が正体を現すと態度を一変させて開き直る助右衛門に皆あきれ果ててしまいますが、それでも最後は鎮守の森の祭を祝い大団円に謡い舞ってめでたく終わります。
ザンバラ髪の鬘に大髭をつけ、頬や鼻の頭を赤く染めて、お腹に詰め物を入れた太鼓腹の万作さん。原作のフォルスタッフのイメージを和風にした扮装です。萬斎さんの太郎冠者は横暴な主人に投げ飛ばされたり、蹴飛ばされたりで、身体能力を生かして舞台上を走りまわったりコロコロ転がったりする姿がなんとも可愛らしい。 石田さんのお松と高野さんのお竹のコンビが助右衛門の恋文を読み上げて大笑いする場面では幸弘さんが笛で「ロミオとジュリエット」のメインテーマを吹いて益々盛り上がる二人が「ロミオ」「ジュリエット」と呼び合ってふざけるのには大笑い。 嫉妬深いお松の夫焼兵衛は焼兵衛で変装して助右衛門を騙そうとするわけですが、万之介さんの役を急遽変わったらしい月崎さん付け髭が落ちるというハプニングあり、台詞も飛んでプロンプを受けるということもあってちょっと気の毒でした。 助右衛門が洗濯籠に隠れて太郎冠者と次郎冠者の天秤棒に担がれて右に左に揺れに合わせてコロコロ転がりながら移動していく洗濯籠のパントマイムは大きなお腹でなかなか難しそう。万作さんの身体能力の高さにも感心します。 幸ちゃんの笛もやり放題のノリノリ、「ロミオとジュリエット」に始まり、超絶技巧の高速演奏に角笛も吹くわで、楽しそうでした。 台詞にはダジャレやシェークスピアを意識した、「ロミオとジュリエット」や「ハムレット」の有名な台詞を取りこんだりで笑いを誘い、遊び心満載。 最後には「笑うも人生、笑わるるも人生。人間、所詮道化に過ぎぬわい!」と開き直って懲りない助右衛門に一同呆れながらも「この世はすべて狂言じゃ、人はいずれも道化じゃぞ」「同じ道化なら踊らにゃ損々、どうどうけろけろどうじゃいな〜」と歌い踊って囃したて、会場もすっかり楽しい雰囲気に巻き込まれてしまいました。
新作狂言というよりは、狂言風演劇でしょうか。シェークスピアの原作ということで海外公演もやった作品なので、フォルスタッフのイメージを意識した扮装をしたのでしょうが、新作狂言として残すならば、化粧やお腹の詰め物は不要だし、台詞ももっと省略して良いと思いますが「まちがいの狂言」のように狂言風演劇として残していくのならばこのままでも良いでしょう。
「茸」 お馴染みの「茸」。今回は萬斎山伏に月崎何某、石田鬼茸という配役。茸も両側の橋掛りと壁際の花道からも増殖。祈るほどに増殖する茸にあたふたする萬斎山伏のアホっぽさが笑えます。今回は何と言っても裕基くんの姫茸が可愛かった〜(^^)最後に観客の感心をさらっていきました。 |
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| 2009年8月9日 (日) |
第25回やるまい会東京公演〜十二世・野村又三郎信廣三回忌追善〜 |
会場:国立能楽堂 13:00開演
「靱猿」 大名:野村小三郎、太郎冠者:野口隆行、猿曳:奥津健太郎、猿:奥津健一郎
一調「玉之段」 謡:観世喜之、大鼓:河村眞之介
御挨拶:野村小三郎
「六人僧」 参詣人:野村万作、野村万之介、野村萬斎 妻:高野和憲、竹山悠樹、石田幸雄
「柑子俵」 太郎冠者:野村信朗、主:松田高義、柑子売:野村小三郎
「靱猿」 今回の子猿ちゃんは、又三郎家の奥津さんのお子さんのようです。信朗くんは子猿役はもう卒業でしょうか。初演の時に鏡の間で大泣きしていたのが、ついこの間のことのようですが、早いものです。子猿の動きも家によって違うようですが、やっぱり可愛いですね。 今回は又三郎さんの追善会ということで、猿歌も少し祝言性を排して改詩した「法会之伝」で謡われました。
「六人僧」 気心の知れた仲間と連れだって旅に出掛けた男たちですが、友人二人が悪戯心を起して一人の男が寝ている間に髪を剃ってしまいます。誓いを立てていたため怒れない男は先に帰り、仕返しのため男たちの妻に、二人は溺死したから出家して菩提を弔えと勧め、妻たちを出家させてしまいます。すぐに男は二人を追いかけ、今度は妻たちが死んだと言って出家させてしまいますが、帰宅した二人は尼姿の妻に会い、男の嘘がばれて、お互いに責め合いになります。そこへ男の妻が尼姿で現れ、日頃から出家するのが望みだったと伝えると、これも機縁と6人とも仏道修行に励むこととし、別れていくのでした。
寝ている男を坊主にしてしまう万之介、萬斎の悪戯コンビぶりが笑えますが、起きてびっくり万作さんは誓いを立てたから怒るに怒れない。う〜ん、このままでは気が済まぬと悪知恵を働かせるわけですが、手が込んでいる。萬斎さんだと後のしたたかさが強調される感じですが、万作さんだと男の哀れさが感じられてあんまり憎めませんね。
「柑子俵」 商売物の柑子(みかん)を、友達にあげる約束をしてしまった主人のために、太郎冠者が一計を案じ、鬼の面をかけて俵の中に入り、道中で男を脅かし、俵を置いていかせます。
この曲は故又三郎さんも小三郎さんも勤めたことがない曲だそうですが、又三郎家では、俵に入るのが太郎冠者なので、子供とは限っていません。小三郎さんが、御挨拶のとき、小柄な又三郎さんが生きていたらこの役ができたのでは、と仰っていました。 信朗くんも台詞はまだ棒読みの感はありますが、前回見たときはお父さんが出てくるまでは、台詞も声が小さかったのが、今回は初めから大きな声でした。器用ではないけれど少しずつ進歩している信朗くんに、がんばってと声援を送りたくなりました。 |
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