| 2010年1月17 (日) |
能楽現在形 劇場版@世田谷 能は能か、演劇か |
会場:世田谷パブリックシアター 13:00開演
半能『高砂 八段之舞』 シテ(住吉明神):観世銕之丞 ワキ(神主):宝生欣哉 アイ(所の者):野村萬斎 笛:杉信太朗、小鼓:幸正昭、大鼓:亀井広忠、太鼓:大川典良 地謡:梅若晋矢、山崎正道、角当直隆、長山桂三、川口晃平
能『邯鄲』 シテ(盧生):観世喜正 ツレ(舞女):鵜澤光 ワキ(勅使):宝生欣哉 ワキツレ(廷臣):工藤和哉、森常太郎、野口琢弘 ワキツレ(輿舁):梅村昌功、大日方寛 アイ(宿の女主):野村萬斎 笛:一噌隆之、小鼓:成田達志、大鼓:亀井広忠、太鼓:観世元伯 後見:佐久間二郎、坂真太郎 地謡:梅若晋矢、山崎正道、角当直隆 長山桂三、谷本健吾、川口晃平
今回は、三日間の公演で配役を変えて、すべて観世流のシテ方が演じられました。私は三日目に行ってきました。 世田谷パブリックシアターでの「能楽現在形」は三本の橋掛りの使い方や照明効果で、いつもの能とは違う楽しみ方ができます。
半能『高砂』 左右の橋掛りと正面後方に松の絵のスクリーンが掛っています。舞台の右に地謡、左に囃子方が座ります。 半能なので、後場の住吉の神の「神舞」が中心です。左右の橋掛りの手前に黒い通路が設けられていて、右からワキの宝生欣也さん、左からアイの萬斎さんが紋付袴姿で現れ、ワキの神官が船に乗るところから始まって、有名な「高砂」の謡を謡います。 住ノ江に着くと2人は舞台上から去り、松の絵のスクリーンに隠れていた正面の橋掛りが現れ、ゆるやかなスロープになった橋掛りの上から住吉の神が現れ神舞を舞います。銕之丞さんが黒地に金糸の華やかな装束で登場!銕之丞さんのシテは足拍子も力強くてやっぱり迫力あります! この舞の時に勢いよく舞う時とゆっくり舞う時に照明の当て方が変わり、勢いよい時は全体が明るいのに対し、ゆっくりの時は周りが少し暗くなってシテに上からスポットライトが当てられるので、緩急が強調され、シテの面の表情も変わって不思議な効果がありました。
『邯鄲』 今日は観世喜正さんがシテです。 一畳台が正面にあり、これが床と同じ高さに引っ込んだり競り上がったりする仕組みで、王座に変わる時はさらに高くなって階段まで出てくる仕掛けになっていました。 夢の中で宮殿に着くと、最初は王座が宮殿そのものを表しているのですが、宮殿から周りの風景や庭を見降ろす盧生の姿が、高い台が正面に置かれていると、よく解り、本当に周りの風景や庭が盧生の目の前に広がっているように見えました。 舞女は観世流シテ方の鵜澤久さんのお嬢さんだそうです。長い髪を束ねててっぺんにお団子を作り、残りを長く垂らした髪型で、面は掛けず、化粧をして眉間の少し上に赤い花のような印を付けていました。 季節が巡る時には、照明や背景の模様や色もくるくる変わり、宮廷の舞女や臣官たちも舞台上をぐるぐる回ってからさーっと右の橋掛りから去って行きました。 夢から覚めて悄然とする盧生の姿も、正面一畳台にポツンと残されたことで強調されているよう。 最後に、邯鄲の枕に感謝して女主人に枕を渡し、女主人が帰郷する盧生に、「またいらっしゃい」と呼びかけるのは、この舞台のための新しい演出なのか、観世流にあるものなのか?今まで観たことがないような気がします。能舞台で今まで観た『邯鄲』では、枕は一畳台の上に置き、盧生が去った後にアイが出てきた時と同様に枕を抱えて幕入りするか、後見が枕を持って切戸口に入る場合がありましたが(たぶん流儀による違い)、盧生が女主人に枕を渡すのは観たことが無いような気がします(覚えている限りでは)。 女主人が呼びかけると、盧生の足が一瞬止まって、また歩き出すのも、何か考えさせられる余韻があって面白いと思いました。
まあ、今回も結構面白く観させてもらいました。能舞台でまた観る時に、今回現実的に感じたことにより、また今までと違う観方ができるような気がします。
そういえば、今回は幸弘さんが出てませんでしたね。 |
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| 2010年1月14日 (木) |
第49回野村狂言座 |
会場:宝生能楽堂 18:45開演
「音曲聟」 聟:野村遼太、舅:野村万作、太郎冠者:月崎晴夫、教え手:深田博治
「悪坊」 悪坊:野村萬斎、僧:野村万之介、茶屋:高野和憲
素囃子「神楽」 大鼓:佃良太郎、小鼓:鳥山直也、太鼓:大川典良、笛:藤田貴寛
「勧進聖」 勧進聖:石田幸雄 船頭:野村万之介 道者:深田博治、竹山悠樹、中村修一、岡聡史 鮒:野村萬斎 地謡:加藤聡、野村万作、高野和憲、野村遼太
今回は、「音曲聟」「悪坊」「勧進聖」と、どれもあまり演じられない曲ばかりで、「悪坊」以外は初見です。「悪坊」は、たしか大藏家で観た記憶があったので、調べたら「第5回善竹富太郎の会」で大藏教義さんのシテ、僧が千太郎さん、茶屋が善竹十郎さんの配役で観ていました。
「音曲聟」 「鶏聟」と同じような内容で、知り合いの教え手に嘘の聟入りの作法を教えられた聟が、舅の家で言われたとおりにやると、舅が聟に恥をかかせまいと合わせるという微笑ましい話。「鶏聟」が鶏の真似をするよう教えられるところが、用件をすべて節を付けて謡うというふうに変わっていると考えれば同じ内容。鶏の真似をする方が面白いので、この曲はやる機会が少ないのでしょうが、謡い舞いでめでたく、温かくみせるこの曲もなかなか良いものです。 遼太くんの成長も著しく、しっかり謡い舞い、素直で初々しい聟役にぴったりでした。万作さんの舅は、いきなり謡いだす聟に目をまん丸くして驚く様など、ちょっとした表情の変化で驚きや優しさがにじみ出ていてさすがです。
「悪坊」 「悪太郎」の原型と思われる曲で、「悪太郎」よりも単純な形のものです。 大酒飲みで乱暴者の悪坊という男が通りがかりの僧と道連れになり、酔っ払って長刀を振り回したり、手を引かせたりしたあげく、馴染みの茶屋に連れ込んで腰を叩かせたりとやり放題。そのまま寝込んでしまった悪坊に、僧はこの隙にと長刀と刀を取り上げ、代わりに自分の衣や傘を残し僧形にして逃げていきます。目が覚めた悪坊は自分の姿に驚くもののそれを契機に道心をおこすというもの。 萬斎さんの悪坊、千鳥足で派手に長刀を振り回し、舞台からもう少しで落ちそうな所までよろけて行くなど、なかなかスリリングで、僧を脅して絡む様子が楽しげ(笑)。 振り回されておどおどする万之介僧もお気の毒。寝たすきにちょっと懲らしめてやろうというしたたかさも万之介さんらしく嫌味がなく、悪戯っ気が感じられます。
「勧進聖」 能『白髭』の替間だそうで、聖の乗る船と道者の乗る船と二つの船の作り物が出て、大人数でお囃子も付く、にぎやかな曲です。小舞の「鮒」は観たことがありますが、この替間に出てくる鮒の舞だったんですね。 白髭明神に仕える聖が明神の屋根の葺き変えをするため、勧進に出かけ、琵琶湖上で別の船に乗ってきた道者たちに勧進を求めますが、貧乏な道者は持ち合わせがなく断ると、それでもしつこく勧進するので、道者の船の船頭が見かねてくってかかり、言い争いになります。すると、怒った聖は水神に祈って大きな鮒の精を呼び出だし、驚いた道者たちは自分の着ていた衣を聖に渡します。 まあ、石田聖のしつこくてイヤラシイこと、でも石田さんだと陰湿な感じがありません。ムキになって怒る石田聖と冷静に断る万之介船頭の対象も面白い。 最後に現れた萬斎さんの鮒の精は、頭に鮒を乗せた冠に賢徳の面、細かい足運びや飛び返りなど美しく派手で切れのいい舞が目福でした。 |
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| 2010年1月13日 (水) |
新春名作狂言の会 |
会場:新宿文化センター大ホール 19:00開演
レクチャートーク:茂山千三郎、野村萬斎
「縄綯」 太郎冠者:茂山千五郎、主人:茂山千三郎、何某:茂山千作 後見:茂山茂
「千切木」 太郎:野村萬斎 当屋:野村万作 太郎冠者:月崎晴夫 立衆:高野和憲、竹山悠樹、深田博治、岡聡史 妻:石田幸雄 後見:時田光洋
レクチャートーク いつも千三郎さんと萬斎さんのレクチャートークと連れ舞があります。 まず、千三郎さんが出てきて最初の演目の解説をするのですが、正月の話をしているうちに「縄綯」の解説をするのを忘れてしまったらしく、後から呼び出した萬斎さんに解説をお願いしていました。 今回は、それぞれの構えや基本の型の違いを比べてみようということになり、まず、構えから、茂山家では、足を八の字に開くのに対して野村家は殆ど開かない。挨拶の時も茂山家が膝を割って足を開くのに対し、野村家はそのまま膝を曲げて腰を降ろします。山本家はかなり足を開いて挨拶しますねと、千三郎さんが真似して大きく開いて見せます(笑)。鬼足やハコビの違いでは足をよく見せようと袴の裾を上げて見せていたのが笑えました。ハコビでは萬斎さんが、山本家の早い足の動きを真似て、千三郎さんに「お上手ですね」と言われていましたが、最後に萬斎さんが「山本家も見てください」と見所に向かって言っていました。 さて、今回の連れ舞は大蔵流では「いたいけしたるもの」和泉流では「風車」とか「小弓」と言われている小舞で、子どもの遊びを詞にしたもの。同じ詞でも謡い方や舞が全然違い、飛び返りが入ったり、かなり動きのある舞でしたが、それでも終わりがぴったり合っていたのが面白かったです。 舞い終わって、いつものように、千三郎さんが最初の演目の準備に下がると、萬斎さんが、今回は二つの演目の解説をして退場しました。
「縄綯」 和泉流では、何某の名前がないので、役者の下の名前で呼ぶため妻の悪口を言う場面で「万作殿の奥様は・・・」と言われて、お母様が腹を立てたなんて話がありましたが、大蔵流では、それでは具合が悪いということで、太郎という名がついています。 この曲は、太郎冠者がベテランでないとなかなか難しい曲ですが、千五郎さんが、ずいぶんと柔らかい雰囲気になってきたので、よい感じでした。千作さんは大分足腰が弱くなって正座から立ちあがる時には後見の介添えが必要ですが、お声は相変わらずお元気で、表情と言い方だけで笑ってしまいます。
「千切木」 でしゃばりで空威張りなだけでホントは気弱な太郎、萬斎さんがやるとキュートで可愛い。夫の尻を叩く気の強い妻でありながら、上手く夫を持ち上げて愛情たっぷり、石田さんのわわしい妻は愛嬌があって微笑ましいです。 |
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