| 2010年2月24日 (水) |
千作・千之丞の会 第五回 |
会場:国立能楽堂 19:00開演
「福の神」 福の神:茂山千五郎、参詣人甲:茂山あきら、参詣人乙:茂山七五三 地謡:茂山千三郎、茂山正邦、茂山茂、茂山逸平 後見:井口竜也
素狂言「武悪」 主人:茂山千作、太郎冠者:山本東次郎、武悪:茂山千之丞 後見:丸石やすし、松本薫
「二人袴」 聟:茂山童司、舅:丸石やすし、太郎冠者:茂山茂、兄:茂山正邦 後見:茂山逸平
東京では、24日と25日の2回公演で、配役を変えていますが、24日に行ってきました。素狂言「武悪」はどちらも同じ配役です。
「福の神」 千五郎家の「福の神」というと、直面でやる千作さんの「福の神」が最高ですが、今回は千五郎さんの面をかけた「福の神」でした。千五郎さんも最近、穏やかな柔らかさが出るようになってきて福の神らしく見えました。
素狂言「武悪」 千作さんも大分足腰が悪くなって、最近は、立ちあがる時に必ず後見の支えが必要ですが、座ったままで演じる素狂言が多くなりました。千之丞さんも最近具合が悪かったりしたことがあってか、大分弱ったみたいで、千之丞さんにも後見の支えがついていました。でも、お二人とも相変わらず声はお元気です。 今回の素狂言「武悪」は、千作さんの主人、千之丞さんの武悪に山本東次郎さんの太郎冠者というスペシャルな配役。 座ったままで、身振り手振りもなく、台詞と表情だけなのに、前場のピリピリするほどの緊張感や後場の可笑しさが見事に伝わり、動きが無い分、観る方も台詞に集中するので、まったく飽きさせない。さすがの実力のお三方だからこそ成り立つ舞台だと感心しました。 特に東次郎さんが太郎冠者に加わったために、武悪と太郎冠者の掛け合いも引きしまったものとなり、お互いの思いがズシンときました。普通の狂言としても、この三人の共演が観てみたかったです。でも、本当に素晴らしかった!これだけでも観られて良かったと思いました。
「二人袴」 童司さんの聟に正邦さんの兄のコンビは前にも観たことがありますが、今回も童司くんのおバカ聟っぷり全開で大笑いしました。 |
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| 2010年2月14日 (日) |
第二十四世宗家大藏彌右衛門七回忌追善大藏会 |
会場:国立能楽堂 14:00開演
「二千石」 主人:大藏彌太郎、太郎冠者:善竹忠一郎 後見:大藏千太郎
「膏薬煉」 都の膏薬煉:大藏教義、鎌倉の膏薬煉:大藏基誠 後見:宮本昇
小舞「祐善」 茂山忠三郎 地謡:大藏基誠、大藏彌太郎、大藏吉次郎、茂山良暢
「花子」 男:大藏千太郎、妻:善竹隆司、太郎冠者:善竹隆平 後見:大藏吉次郎
「宗論」 浄土僧:善竹長徳、法華僧:善竹忠重、亭主:善竹徳一郎 後見:大藏忠一郎
「煎物」 煎物売り:大藏吉次郎 亭主:善竹十郎 太郎冠者:善竹大二郎 立頭:善竹富太郎 立衆:宮本昇、榎本元、吉田信海、善竹忠亮 稚児:大藏彩乃 笛:寺井久八郎 後見:大藏教義
附祝言 謡:大藏基誠、大藏彌太郎、茂山良暢
先代宗家大藏彌右衛門さんの三回忌追善会ということで、大藏家、善竹家、茂山忠三郎家が出演しています。関西の善竹忠一郎家の隆司、隆平兄弟も久々に観ることができました。
「二千石」 無断で旅に出た太郎冠者の帰宅を知った主人は腹を立て、太郎冠者の私宅へ出向きますが、京都見物をしてきたと詫びる太郎冠者に怒りを鎮め、都の様子を聞いてみると太郎冠者は、都で流行る謡を覚えて来たと、主人の前で謡ってみせます。ところがそれは、主人の家に伝わる家宝の謡いで、功を挙げた祖先に対する恩賞として授かって以来、粗末にしないようにと大切に奉ってあったもの。大切な謡を勝手に持ち出して太郎冠者が都で流行らせたに違いないと、さらに怒る主人は、手討ちにしようと太刀を振り上げますが、その手元が大殿様(先代)に似ているといって太郎冠者が泣くので、主人も思わず落涙し、太郎冠者を許して、子が親に似るのはめでたいと言ってともに笑います。 彌太郎さんが「しさりおろう」と太郎冠者を叱りつける声が本当に怖かったですね。それに対し、忠一郎さんも「斬ってすてる」と言われて驚いて泣く姿がとてもリアルでした。その後、先代の大殿様に打ちすえるお手元が似てござるとか、打ち払おうというお手元やら、すぐ、お気を直されるところ、物を取らせるお手元など、いちいち似ていると言う太郎冠者。本当は主人のご機嫌の取り方をよく承知しているしたたかな召使なんじゃないでしょうか。それに、いちいち親に似ていると言われるたびに泣く主人は怒りっぽいけれど単純な人で憎めません。太郎冠者の方が一枚も二枚もうわて、こうやって、いつも太郎冠者にうまく乗せられてやっているのでしょう。
「膏薬煉」 関東一の鎌倉膏薬煉と、天下一を自負する都の膏薬煉が互いに引かれ合い、鎌倉と都を結ぶ上下の街道で、天下一の称号をかけて勝負をすることになります。鎌倉の膏薬煉が、鎌倉時代に、逃げてしまった名馬「いけづき」を、膏薬の薬力で親指に吸い寄せ、馬吸膏薬と名を賜ったと自慢するのに対し、都の膏薬煉は、三千人でも動かせなかった大きな庭石を、たった一人、膏薬の薬力で動かし、石吸膏薬と名を賜ったと応戦します。薬の成分も奇想天外な物を自慢しあい、いよいよ互いの力を試すため、吸い比べをすることになりますが、鼻につけた膏薬で吸い寄せたり、吸い戻されたり、さらにねじり引きやしゃくり引きとエスカレートの末、最後は都の膏薬煉が勝ちます。 薬の成分の自慢が都方は「山に棲む鯛」「海の底を走る白カラス」「石臼のはらわた」、鎌倉方が「木になるハマグリ」「幽霊の陰干し」「ミミズの胴骨」など、おかしな物ばかり、薬力自慢も大法螺合戦と思われる内容ですが、鼻に短冊をつけての吸い比べの大げさな動きにはやっぱり笑ってしまいます。鎌倉の膏薬煉の基誠さん、最後に倒される時、見事にズデンと一回転していました(笑)。
小舞「祐善」 日本一の傘張りの下手と言われた祐善が傘の張り死にをして幽霊となり、僧に弔いを請うて謡い舞う話です。忠三郎さんが傘を持っての小舞をやりましたが、葛桶に座ったままでの小舞で、やはり足腰が弱ってきているせいでしょうか。でも謡いの声はとても力強かったです。
「花子」 千太郎さんの披きです。妻と太郎冠者は、善竹忠一郎家の隆司、隆平兄弟が演じました。 手ごわい奥さんをやっと騙して、花子の方へ向かう男、太郎冠者と妻が入れ替わっているとも知らず、うっとりと、まだ夢うつつのように出てくる男を丁寧に演じていました。太郎冠者だと思って、座禅衾を被っている妻に、花子との逢引の様をいい気になって聞かせる男が衾を取ると!怒った妻が座禅衾を叩きつけ、妻役の隆司さん怖〜い!!!
「宗論」 浄土僧がゆったりした感じの長徳さんで、法華僧が細くて神経質そうに見える忠重さんというのがぴったり。 最後の踊り念仏、踊り題目の掛け合いはやっぱり面白かったです。
「煎物」 町内の人々が集まり、祭りの稽古をしているところへ、商売に来た煎じ物売りが煎じ物を勧めてまわります。稽古の邪魔になるから売るなと言われて、それならばと囃子物の拍子にかかって売り、鞨鼓を打ちながら舞うのを見て、商売道具の焙烙を腹に括りつけて松葉のバチで打ちながら真似をして舞いますが、水車の真似をして回ろうとしてお腹の焙烙を割ってしまいます。 今回も、見事に焙烙が割れて「数が増えてめでたい」で終わりました。萬斎さんの時は、おじゃま虫的な可笑しさでしたが、吉次郎さんの煎じ物売りは、したたかな商売人、でも、最後は調子に乗りすぎちゃったかな(笑)という感じでした。
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| 2010年2月5日 (金) |
現代狂言? |
会場:あうるすぽっと 19:00開演
ご挨拶
「附子」 太郎冠者:野村万蔵、主人:南原清隆、次郎冠者:野村扇丞
「チョコレート」 修道者:佐藤弘道、村の男:ドロンズ石本、神父:セイン・カミユ
「コンカツ」 三角(みつかど):南原清隆 翁:野村万蔵 珠音(たまね):さとう珠緒 赤の男:石井康太(やるせなす) 青の男:セイン・カミユ 黄の男:中村豪(やるせなす) 緑の男:平子悟(エネルギー) 灰の男:森一弥(エネルギー) 猫・天女:佐藤弘道 スノーマン・天女:ドロンズ石本
打楽器:和田啓、管楽器:稲葉明徳
「狂言とコントが結婚したら」をコンセプトに旗揚げ公演から、もう4年、現代狂言も4回目を迎えました。 ナンチャンは最初の演目に出演のため、演目の解説はエネルギーのお二人が受け持ちました。エネルギーの二人は、萬狂言の前にやるファミリー狂言会でも解説をやっているらしく、慣れたものです。ちょうど朝青龍の引退報道があった後だったので、「朝青龍引退記念」と言ってたのが笑えました。
「附子」 狂言を観たことがない人でも、どこかで聞いたような話。一休さんのとんち話に同じようなのがあるので、分かりやすくて誰が観ても面白い演目です。 今回はナンチャンは主人の役で出演です。主人は、最初に太郎冠者、次郎冠者に黒砂糖を猛毒の附子だと言って、それを見はりながら留守をするよう言いつけて出掛けて行き、最後に戻ってきて二人が大事な掛け軸や天目茶碗を割って、附子まで全部食べてしまったのを知って叱りつける役なので、最初と最後だけが出番です。後は万蔵さんと扇丞さんの太郎冠者、次郎冠者が怖いもの見たさから、附子を黒砂糖だと知って食べてしまうやりとりの可笑しさが見どころになります。この主人役は前回の「佐渡狐」の奏者のように面白いところがあまりないので、ちょっと堅く見えてしまいますが、ナンチャンも真面目に取り組んでいる成果で、あまり違和感なく古典狂言に溶け込んできている感じがしました。
「チョコレート」 「附子」を元に現代狂言としてアレンジしたものです。ただ古典の舞台を現代に直すのに、設定や結末もちょっとひねってあります。 庶民に手の届かないチョコレートがやっと日本に入ってきた頃。 教会にあるらしいとの噂を聞きつけた村一番の食いしん坊(ドロンズ石本)がこっそり忍び込み、真面目な修行者(佐藤弘道)から何とかチョコレートの在処を聞きだし食べようとする設定になっています。教会の神父がセイン・カミユさんですが、背が高っ!顔ちっちゃい! 食いしん坊のドロンズ石本が教会に忍びこむと、あっさりブラザー弘道に見つかってしまい、修行に来たと嘘をつきます。それで、ドロンズ石本もブラザー石本と呼ばれますが、神父さんが登場して英語で話すのをブラザー弘道が通訳します。でも、長くなると訳せなくなるブラザー弘道(笑)。 神父さんが出かけた後、ブラザー石本は、なんとかブラザー弘道からチョコレートの在りかを聞きだそうと迫り、最初はごまかしているブラザー弘道ですが、結局教えてしまいます。2つの入れ物に入ったチョコレートを発見して食べようとする二人ですが、一緒に食べようと言いながらブラザー石本はブラザー弘道が食べる様子を窺っています。すると、急にうめきだすブラザー弘道。しかし、すぐ華麗な動きを見せ、おいしいあまりの表現と知って石本も食べだします。その後は、ブラザー弘道の「おいしさが伝わらない」とのダメ出しから、ブラザー弘道とブラザー石本のリアクション競争が始まりますが、弘道おにいさんの華麗な動きについていけない石本。ふたりのやりとりが笑えます。 二人で「やめられない止まらない」と食べつくして、客席から入れ物の底が見えると、ブラザー弘道の入れ物にはスマイルマーク、ブラザー石本の入れ物にはドクロマークがついています。 チョコレートを食べつくしてしまったので、部屋の中の大事なものを壊して、死んだふりをする二人ですが、神父が帰ってきてびっくり!一つにはネズミ退治用の毒が入っていたとのことで、起きない石本が本当に死んでしまったと思ったら、「よく寝た」と起き上がり、本当に寝てただけでした(笑)。 不審に思った神父がドクロの入れ物に残った物を舐めてみると、とたんにお腹が痛くなり、医者に連れて行ってくれと、石本に背負われて行くのですが、石本、本当のチョコレートを食べていないと舐めに戻り、神父は医者にと、今度は反対に石本が背負われて行ってしまいます(大笑)。 「附子」を元にしながら一捻り、二捻り、摺足など狂言の型を使いながらも、これはコントですね。でも、面白かった。
「コンカツ」 狂言の型や謡いを使っての新作の現代狂言です。 結婚したい珠音と結婚に踏み出せない三角が、神社にお参りに行きます。珠音は、“幸せの丘”というパワースポットを目指して行くと、不思議な翁に出会い、家具屋の一人娘がかぐや姫に間違えられて、結婚を申し込む男が何人も現れます。そこに、帝(みかど)と間違えられた三角(みつかど)も巻き込まれ、5人の「色の国」の王子が彼女をめぐってアプローチ合戦を始めます。それぞれの国に招待してアプローチするのですが、どれも自分の求めている幸せとは違うような気がして珠音は結婚を決められません。最後に残った珠音と三角は、幸せは身近にあったと気付きます。しばらくして、大きなお腹をかかえた珠音と、それを気遣う三角が出てきます。不思議な翁の万蔵さんが、「コンカツ」とは魂の活動「魂活」と言って、なんか温かい気持ちになる終わり方でした。
さとう珠緒さんは、いつもブリッコな感じがしてあまり好きじゃなかったのですが、所作も綺麗でそれなりにちゃんと稽古した様子がうかがえ、好感が持てました。5人の「色の国」の男たちによる「嵐」ならぬ「カラシ」や万蔵さんとエネルギー平子さんの舞い謡い、それに、いつものアドリブ合戦など、今回も大いに笑い楽しみ、最後はほのぼのとした公演でした。
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