| 2010年8月29日 (日) |
第3回善竹兄弟狂言会東京公演 |
会場:宝生能楽堂 14:00開演
<解説>本日の公演について:善竹隆平
「入間川」 大名:善竹隆司、太郎冠者:大藏千太郎、入間の何某:山本泰太郎 後見:上吉川徹
「茶壺」 すっぱ:善竹隆平、中国の者:大藏教義、目代:善竹忠一郎 後見:善竹富太郎
新作狂言「勘当息子」 原作:手塚治虫(ブラック・ジャック「勘当息子」より) 狂言台本・演出:善竹隆司 母:善竹隆司、旅の医師:善竹隆平、四郎:善竹大二郎 後見:上吉川徹、善竹富太郎
関西が本拠地の善竹忠一郎家の隆司(たかし)、隆平(りゅうへい)兄弟主宰の狂言会で、東京公演は一昨年から3回目になります。 最初に弟の隆平さんが、今回の公演について解説をされました。 まず、大藏流には、善竹家の他に大藏家、山本家、茂山忠三郎家、茂山千五郎家の五つの家があり、普段は、それぞれの家単位で公演していますが、同世代の者がたくさんいるので、家同士交流することで研鑚になります。と、仰っていました。確かに大藏流では、各家の交流共演が多いように感じます。和泉流でも中堅若手の交流がもっとできるといいなと思いますが・・・。 古典の「入間川」「茶壺」の演目解説の後、今回の新作狂言「勘当息子」について、これは、手塚治虫の「ブラック・ジャック」の中の「勘当息子」を狂言にしたもので、平成8年の手塚治虫生誕80周年にちなんで、手塚治虫が少年時代を過ごした宝塚で企画され、手塚プロの協力を得て、宝塚ソリオホールで初演されたものだそうです。 原作の筋を大切に作ったとのことです。そのまま「ブラック・ジャックでござる」とは、言いません(笑)。それに代わる者として旅の医師が出てきます。ブラック・ジャックもピノ子も出てまいりません(笑)と仰っていました。
「入間川」 表情や仕草も写実的な隆司さんの大名に様式性の強い山本家の泰太郎さんの入間の何某ですが、逆言葉を面白がって遊ぶ大名に律義に対応しながら機転も利く何某。山本家の独特なイントネーションの科白も意外と違和感なく、対照的な姿が強調されたのが、かえって面白く感じました。
「茶壺」 べろべろに酔っ払って道端で寝てしまう教義さんの中国地方の者。背中に茶壺を背負っていますが、それに目をつけた隆平さんのすっぱが盗もうとします。でも、片方の肩紐に手を通しているので、うまくいかず、自分ももう片方の肩紐に手を通して同じように寝て、目が醒めると自分の物だと主張します(めちゃくちゃな話です)。そこに仲裁に入った忠一郎さんの目代。いかにも公平そうで物分かりの良い目代に見えますが、すっぱが男の言うことを盗み聞きして答えるので、判断がつきません。茶を詰めた記録を二人同時に舞い語らせると、微妙にずらして最後だけ合わせてごまかすすっぱ(笑)。真似ながら最後を合わせようとする謡い舞いのずれが面白い。回る勢いで、すっぱの隆平さんが飛び返りをしたりします。最後は、真面目そうに見える忠一郎さんの目代が「昔より奪い合う物は中から取るという」と言って、ちゃっかり茶壺を持ち去ってしまうのが意外。一瞬呆気にとられて、二人で追いかけていきます。やっぱり最後の相舞が見どころですね、隆平さんの謡い舞いは上手いです。ずらし方も面白いし。
新作狂言「勘当息子」 旅の医師が山中で大雪に見舞われる中、一軒の家を見つけて泊めてくれるよう頼みます。 一人暮らしの母は、久しぶりに帰ってくる息子たちとの再会の為に一度は断りますが、困り果てた様子に招き入れます。 今日は母の誕生日で、それぞれ成功した息子たちとの祝いの宴が用意されますが、多忙を理由に誰も帰ってきません。嘆き悲しむ母の元に思いもよらず勘当した四男が尋ねてきます。息子は今は医師の見習いをしているといい、具合の悪くなった母に薬を与えますが、ますます具合が悪くなり、旅の医師の診察により改善します。助かった母は息子と和解し、旅の医師は、また旅立っていきます。息子は医者になって妻とともに母と一緒に住むと言いますが、結婚したことを知った母は、そんな大事なことを母に相談しないとは何事と、怒って息子を追いかけます。 隆司さん、老婆の役は前回の「濯ぎ川」でも観ましたが、なかなか似合っています(笑)。旅の医師の隆平さんは黒い装束に雪を被った蓑と笠で現れ、旅の医師だと名乗ります。「黒医師と、世上に言われております」と、「ブラック・ジャック」だから「黒医師」でしょうか(笑)。今日は老婆の誕生日で、家には息子たちとの宴の用意がしてあり、老婆は成功した三人の息子たちのことを、太郎は議員、次郎は大銀行の頭取、三郎は扇職人で人間国宝になったと自慢げに話しますが、そこに待っていた三人の息子たちからの手紙が届きます。いずれも、祝いの宴に行けないという断りの手紙ですが、太郎は、党の代表選で忙しい。次郎は、円高株安の対策に忙しい。三郎は、裁判員に選ばれたので、判決が出るまで帰られぬ。と、まさに今の世情を反映した内容に笑ってしまいます。 がっかりしている老婆に旅の医師は、これも何かの縁と、一緒に誕生日を祝うことにし、謡い舞いの酒宴となります。隆司さんが、老婆の姿で舞う舞は、曲がった背中を伸ばしすぎず、いかにも老人の舞う舞でありながら美しく、なかなか難しいのじゃないかと思うんですが、そこを上手く舞っていました。 原作は読んでいないので、分からないのですが、スジは原作に沿ったものとのこと、でも、最後は狂言らしいオチをつけたのじゃないかなと思いました。古典狂言の様式によりながら科白にアドリブのような現代感覚も取り入れて、狂言として違和感なく、なかなか良くできた作品でした。
関東では、馴染みが少ないため、客席の入りはイマイチでしたが、この兄弟、まだ若いのに、基本がしっかりしていて、謡い舞いがとても上手いうえに、笑いのツボも心得ていて面白い。それにちょっとイケメンで、これから大いに注目できる成長株として、お勧めです。
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| 2010年8月7日 (土) |
納涼茂山狂言祭2010東京公演 |
会場:国立能楽堂 17:00開演
お話:茂山千之丞
「福の神」 福の神:茂山千作、参詣人A:松本薫、参詣人B:島田洋海 後見:井口竜也 地謡:茂山千之丞、茂山正邦、茂山茂、茂山童司
「瓜盗人」 盗人:茂山千五郎、畑主:茂山あきら 笛:一噌幸弘 後見:井口竜也
「二人袴」 舅:茂山千之丞 太郎冠者:茂山童司 聟の兄:茂山正邦 聟:茂山茂 後見:増田浩紀
今回は、千作さんが出るのが、この回だけだったので、この回にしました。最初のお話は千之丞さん。それぞれの演目の話で、その演目の季節や当時の習慣についてのお話など、今回は、まじめでちょっと勉強になるお話でした。
「福の神」 これは、年末、大晦日の話で、昔は大晦日に神社に参詣して豆まきをしたそうです。 やっぱり、千作さんは、そのままで福の神そのものです(笑)。直面で、手をパタパタしながら出てくるだけで、笑いが起こる。反則ですよ、可愛すぎる(^^)。葛桶に座って、お酒を要求したり、座ったまま足拍子を踏んでにこにこと楽しそうに謡う姿を見ているだけで本当に和みます。もう、千作爺ちゃん可愛い!!最強の福の神です!!!
「瓜盗人」 盗人が千五郎さんで、畑主があきらさん。あきらさんのちょっとトボケた感じに、柔らかみの出て来た千五郎さんの盗人コンビがなかなか良い。案山子に化けた畑主の面が祭の時の罪人の顔に似ているということで、罪人を追い落とす鬼の練習を始める盗人。追い落とす練習をしながら案山子に化けた畑主の頭を杖でポカリ(笑)。これは、茂山家のアドリブ?大いに笑っちゃいました。
「二人袴」 和泉流に比べると、聟さんがずっと幼い感じのおバカ聟的な大藏流の「二人袴」ですが、茂さんの聟さんは初めて観ます。いつもより更に高い声で、“アホぼん”そのものの茂さんの聟に大笑い。正邦さんの兄役はいつもの配役。和泉流に比べると、ベタな感じですが、もう最初から最後まで大笑いの連続でした。茂さんのアホ聟もなかなかなものです(笑)。 |
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