| 2010年9月30日 (木) |
第51回野村狂言座 |
会場:宝生能楽堂 18:45開演
「雁大名」 大名:野村小三郎、太郎冠者:奥津健太郎、雁屋:野口隆行 後見:月崎晴夫
「伊文字」 女・使いの者:深田博治、主:野村遼太、太郎冠者:野村万作 後見:岡聡史
語「定家」 野村万作
素囃子「盤渉楽」 大鼓:柿原洋太郎、小鼓:鵜澤洋太郎、太鼓:観世元伯、笛:一噌隆之
「博奕十王」 博奕打:野村万之介 閻魔大王:石田幸雄 前鬼:月崎晴夫 後鬼:竹山悠樹 鬼:野村遼太、中村修一、時田光洋、岡聡史 鉄杖鬼:高野和憲 地謡:奥津健太郎、野村小三郎、野口隆行 後見:深田博治、野村万作
「雁大名」 訴訟が無事に済み帰国することになった大名が在京中にお世話になった人たちを招いてもてなそうと、太郎冠者にふるまいの肴を買い求めてくるよう命じます。肴屋町で太郎冠者は見事な雁を見つけますが、お金が無いので買えません。そこで、大名と雁屋の前で喧嘩をし、どさくさに紛れて雁を奪ってこようと計画します。店に着くと、先に大名が雁を買おうと言い、後で来た太郎冠者がそれは自分が取っておいた物だと店先で喧嘩をはじめ、刀を抜いた大名を雁屋が止めている隙に、まんまと太郎冠者が雁を奪って帰ります。戻った大名と太郎冠者は、うまくいったと喜びますが、大名もどさくさ紛れに妻への土産の帯を盗んできていました。 これは、初見ですが、他の狂言とは、終わり方がちょっと変わっている感じがします。 普通だと、共犯がばれて雁屋に追い込まれるとか、そんな感じですが、まんまと雁を盗んだうえに、大名までいつの間にか帯をくすねてきてるって、とんだ泥棒主従です。 大名が雁屋と話をする時、田舎大名を強調するために田舎言葉を使いますが、田舎言葉というより、変なイントネーションでした(笑)。
「伊文字」 何回か観た演目ですが、妻乞いをする主人を遼太くんが、召使の太郎冠者を万作さんが演ずるという配役。初々しい主人ですが、昔なら妻を娶る年頃でしょうか、あまり違和感を感じないほど大人っぽくなった遼太くんでした。 万作さんの太郎冠者がやっぱり良いです。主人が清水の観音に妻乞いに行くのにお伴して、眠っているところを起こされた時の表情がなんとも可愛らしい。歳と共に軽味と可愛さが増しているようです。
語「定家」 能『定家』の間語りを万作さんの語りでじっくり聴かせていただきました。長い語りになると、さすがに辛そうに感じるところもありましたが、力みがなくて格調もある語りでした。
「博奕十王」 今回は、萬斎さんが出演していないので、博奕打の役は万之介さん。飄々とした雰囲気が萬斎さんとはまた全然違って面白いです。 閻魔大王は石田さん。黒頭に黒地に金の狩衣に灰色がかった緑地に金の大口、杓を持った堂々とした出で立ちでお伴の鬼どもを引き連れて現れます。六道の辻にやってきた博奕打の万之介さんは本当の幽霊のようによろよろした感じでした(笑)。 でも、まんまとイカサマ博奕にハマりこんだ閻魔大王が身ぐるみ剥がれて寒そうに身を縮める姿が何とも惨めで可哀そう。最後に極楽行きの金札を博奕打が取ろうとする時、止めようとした閻魔大王を万之介博奕打が突き飛ばしてましたよ(大笑)。 最初の堂々とした閻魔と最後の惨めな閻魔の落差の大きさを見事に表現した石田さんと飄々としながらしたたかな博奕打の万之介さん。この配役はすっごく面白かったです。 |
|
| 2010年9月7日 (火) |
狂言ござる乃座44th |
会場:国立能楽堂 19:00開演
「盆山」 盗人:野村裕基、何某:野村万之介 後見:深田博治
「鐘の音」 太郎冠者:野村万作、主:竹山悠樹 後見:高野和憲
「合柿」 柿売:野村萬斎 参詣人:石田幸雄、月崎晴夫、野村遼太、中村修一、時田光洋、岡聡史 後見:竹山悠樹
小舞「八島/後」 野村裕基 小舞「名取川」 野村遼太 地謡:竹山悠樹、石田幸雄、野村万作、月崎晴夫、岡聡史
「呼声」 太郎冠者:野村萬斎、主:深田博治、次郎冠者:高野和憲 後見:岡聡史
「盆山」 裕基くんが、また一段と大きくなった感じで、最初に出てきた時、一瞬、誰?って思ってしまいました。今年11歳になる裕くん、今回は「盆山」の盗人役を初演。葦垣を切る時の型も基本どおり、ちゃんと垣根を切っているように見え、科白も仕草も堂々としています。万之介何某が、盆山に隠れたちょっとマヌケな盗人をからかってやろうと犬や猿の真似をさせる掛け合いも万之介さんの意地悪キャラと裕くんの可愛さが相まって、なかなか微笑ましくも面白かったです。
「鐘の音」 万作さんが、主人に言いつけられた「金の値」と「鐘の音」を間違えて、鎌倉の寺を巡って鐘の音を聴き比べる太郎冠者の役。鐘の音を「ご〜ん、もんもんもんも〜ん」などと、口真似で表現するのが聴きどころ。万作さんの鐘の音の響きが綺麗で、動きもとっても綺麗です。終盤では、さすがに息が上がっているところはありましたが、楽しそうに鐘の音を聴く様子や主人に怒られて、ちょっと拗ねる様子がとってもチャーミング。万作さんの太郎冠者はすごく可愛いです(^^)。
「合柿」 萬斎さんは、映画「のぼうの城」の撮影中で、カツラのために髪を切らないよう言われているとのこと、大分伸びていて、出てきた時、真ん中分けの髪型が女の鬘のように見え、『邯鄲』の女主人かと思ってしまいました(笑)。 柿売りが渋抜きに失敗した柿を売ってしまい、怒ったお客によってたかってボコボコにされてしまうお話です。 プログラムの最初の挨拶に、萬斎さんが以前は、「渋柿を売りつけるシテが悪者の曲かと思っていた」と、書いていましたが、今回の萬斎さんの柿売りは、本当に悪気は無いのに渋抜きに失敗しちゃったのをごまかそうとして必死になっているちょっと可哀そうな柿売りに見えました。口笛を吹いてみろと言われて、口笛を吹こうとしても、渋さのために唇がこわばって吹けない時の変な顔には笑っちゃう。しかし、渋柿の代金を要求するのは、生活がかかっているとはいっても、ちょっとずうずうしい。お客が怒るのも無理はないけれど、皆でボコボコにして売り物の柿まで撒き散らすのはやりすぎ。みじめな様子を謡いに謡いとぼとぼと帰って行く萬斎柿売りは哀愁がたっぷり漂っていました。
小舞「八島/後」「名取川」 裕基くんの小舞も、動きも扇の捌き方もスムーズに美しく、跳び返りもビシっと決まってカッコ良い。裕くんの成長ぶりには驚くばかりです。 遼太くんは、謡いの声も朗々と、すっかり大人の仲間入りのようで、堂々とした小舞でした。
「呼声」 萬斎、深田、高野トリオの「呼声」は、やっぱり息もピッタリ合っていて楽しいです。 主人に無断で旅に出て帰ってきた太郎冠者を叱りつけようと、次郎冠者を連れて太郎冠者の家まで行った主人が居留守を使う太郎冠者を呼び出そうと平家節や小歌節、最後には踊り節で呼び出して、浮かれて出て来た太郎冠者と鉢合わせ(笑)。 「冠者、冠者」「留守、留守」とテンポアップして踊る調子の良さが楽しく、見合ってピタリと止まり、間を置いて「留守」で締めるとこなんか、何度みても笑ってしまいます。 |
|
| 2010年9月1日 (水) |
国立能楽堂定例公演 |
会場:国立能楽堂 13:00開演
「附子」 太郎冠者:井上靖浩、主:佐藤友彦、次郎冠者:佐藤融
『景清』 シテ(景清):友枝昭世 ツレ(人丸):狩野了一 ワキ(里人):森常好 ワキツレ(人丸の従者):舘田善博 笛:松田弘之、小鼓:成田達志、亀井忠雄 後見:内田安信、中村邦生 地謡:佐々木多門、金子敬一郎、友枝雄人、内田成信 長島茂、粟谷能夫、香川靖嗣、粟谷明生
「附子」 和泉流山脇派「狂言共同社」の「附子」は、かなり前に一回観たか、観なかったか?同じ和泉流でも他の家とは台本が違うので、科白や型も大分違います。特に良く分かったのは、型の方。 主人から毒の附子の番をするように言いつけられた太郎冠者と次郎冠者が、附子の方から吹く風に当たっても死んでしまうと言われたのに、怖いもの見たさの人間の心理で、吹く風に当たらないようにこちらから扇で仰げばよいと、「仰げ、仰げ」「仰ぐぞ、仰ぐぞ」と、仰ぎながら附子に近づく。まあ、この辺は同じかな。でも、附子を上から覗く時に、上から仰ぎながら二人でしばらく覗いて確認してました。他だと太郎冠者だけ覗いてたりする。食べる時にも、すくった附子(本当は黒砂糖)をいちいち掌に取ってから食べたり、樽が空になったことを表すために箸として使っている扇を葛桶の底につけてわざと音を出していたことなど。最後に主人に怒られて次郎冠者が追われている隙に、太郎冠者がまた樽の底についた砂糖を食べようとしたのは、樽に残った酒を飲もうとする「樋の酒」と同じバージョンですね(笑)。なんか、そんな違いを発見しながら楽しく観てしまいました。
『景清』 「悪七兵衛景清」と呼ばれた平景清は源氏に敗れた後、日向の国宮崎に流され月日を送っていると、鎌倉に住む景清の娘、人丸は従者を連れて父を探しにやってきます。 二人は宮崎について、目の前の粗末な藁屋の中に居る乞食の老人に景清の行方を尋ねると、「自分は盲目の身、よそで尋ねるように」と言われます。 実はその老人が平景清その人でした。人丸は、景清が遊女との間にもうけた娘で、亀が江が谷の長に預けたのでした。 逢うことの無かった娘との再会に声は聞こえども面影を見ることのかなわぬ悲しさに、このような境遇となった我が身を明かさぬことも親の真情と、父と名乗らなかったのです。 しかし、里人にその老人が景清と知らされた娘は、里人に頼んで父景清を呼び出してもらい再会をはたします。里人一人と思って出て来た景清は娘に恨みごとを言われますが、我が身を恥じる景清にとっては仕方のないことでした。 景清は娘の所望で、それを聞いたら故郷へ帰るよう約束させた後、屋島の戦いでの活躍を語ります。語り終えた景清は、身も衰え、この命も長くない、早く帰って自分の亡き跡を弔って欲しいと頼み、親子は永遠の別れを迎えます。 引き廻しの掛った藁屋の中から景清の友枝さんが低く呻くような声で、景清の人生の苦悩や孤独を嘆く謡いを謡い、引き廻しが下ろされ現れた姿は、黒地水衣に白大口、面は景清専用面とのこと、老いさらばえても武者の気風を残す老人の姿です。 里人は、ふつう狂言方が演じることが多いようですが、この曲ではワキ方が演じていて、それゆえに重みのある感じがします。森さんの里人が大音声で景清を呼び、不機嫌そうに現れる景清ですが、やっと親子の対面を果たします。 景清の屋島の戦いでの三保の谷との錣引きの仕方語りは、切れの良い、気迫のこもった舞いで、一つ一つの型も美しく惚れ惚れ。やっぱりいいなあ。 舞い終わって、別れを迎える時、景清が人丸の肩を抱き、杖をつきながらゆっくり歩を進める姿は、親子の情が伝わってきて、ググっときました。娘を押しやり、見えない眼で娘の姿を見送る景清の切ない胸の内、哀しくも美しい別れでした。 |
|
|