| 2010年10月29日 (金) |
第二回萬歳楽座 |
会場:国立能楽堂 18:30開演
舞囃子「安宅」瀧流 弁慶:大槻文藏 大鼓:亀井広忠、小鼓:大倉源次郎、笛:藤田六郎兵衛 地謡:武富康之、観世喜正、梅若玄祥、山崎正道
連管「津島」 一噌流:一噌隆之 藤田流:藤田六郎兵衛 森田流:松田弘之
素狂言「九十九髪」 老母:茂山千作、三郎:茂山千三郎、業平の使者:茂山七五三 笛:藤田六郎兵衛
『葵上』古式 シテ(六条御息所生霊):梅若玄祥 シテツレ(青女房):観世喜正 シテツレ(巫女):大槻文藏 ワキ(横川ノ小聖):宝生閑 ワキツレ(朱雀院臣下):宝生欣哉 アイ(下人):山本泰太郎 大鼓:亀井忠雄、小鼓:大倉源次郎、太鼓:助川治、笛:藤田六郎兵衛 後見:観世銕之丞、武富康之、山崎正道 地謡:川口晃平、長山桂三、小島英明、古川充 角当直隆、片山清司、片山幽雪、味方玄
今回も豪華なメンバーで、なかなか面白い演目揃いです。
舞囃子「安宅」瀧流 瀧流の小書が付いて、扇を落として清流に流される型があります。大槻文藏さんは、女性の役など、とっても美しいのですが、やっぱり力強さよりも美しさを感じる弁慶でした。
舞囃子の後に、六郎兵衛さんがまた切戸口から出てきてご挨拶。 連管「津島」について、笛の各流儀はすべて檜垣本彦兵衛(通称笛彦兵衛)から始まったもので、笛方は他流儀の譜も演奏できるのだそうです。「津島」については、秘曲稀曲の扱いになっていて、滅多に演奏されることがないので、古いままの譜で流儀による違いがほとんどないため、かえって三流儀による連管が可能になったとのこと。 一噌隆之さんと松田弘之さんも呼ばれて登場。いつもあまり喋らない笛方の声を聞いてもらおうということで、一言インタビュー。隆之さんはこの「津島」を演奏するのは、初めてとのこと。忘れないうちに(笑)と言うことで、今回の質問は短めに、隆之さんは六郎兵衛さんと同じに流儀の子なので、子どもの頃からやっていて、選択の余地がなかったみたいですが、松田さんは最初は西洋音楽をやっていて、大学からこの世界に意識を持って入った人だそうです。「もし、他の職業を選ぶとしたら?」の質問には、二人とも「分からない」とのお答え。やっぱり、これしかないってことでしょうか。松田さんへ「なんで、能の笛をはじめたのか?」との問いには「知っている音だと思った」とのこと。なんとなく、日本人だから分かるような・・・気がする。
連管「津島」 秘曲稀曲というだけあって、今までに聴いたことのない曲。神楽のような感じもあり、なんか懐かしい感じもありました。 三人での合奏になると、微妙にずれた感じになるのが、また面白い。それぞれソロで吹くとまた、流儀の違いか、個性による違いか、その両方か、これも面白い。やっぱり、滅多に聞けないものでした。
素狂言「九十九髪」 今回で2回目の鑑賞になります。前回は一昨年の「納涼茂山狂言祭」でした。また観たいと思っていたので、「萬歳楽座」でやることを知り、絶対行こうと思ったものです。
これは初演の時に、六郎兵衛さんが笛を担当し、作曲されたそうで、六郎兵衛さんにとっても思い入れのある演目のようでした。 最近は、千作さんも足腰が悪くなったために、他の曲も素狂言で行うことが多くなりましたが、これは千作さんに演じて貰うために作者の高橋睦郎さんが作った新作で、千作さんがお歳のため、新しい科白を覚えるのは無理ということで、台本を見ながらできる素狂言という形を千之丞さんが考えたものだそうです。 直面で座ったまま、台本を台に置いてやるのですが、本当に場面がありありと浮かぶように見事なのです。やっぱりこれは千作さんでなければ、と思います。千作さんが業平に恋をする99歳の可愛いお婆ちゃんにしか見えません(笑)。 六郎兵衛さんの笛も、業平の格調高い雰囲気を表現して盛り上げますが、前回の笛無しでの舞台と比べると、笛の間、演者が黙って座っているのは、ちょっと話のテンポを削がれるような感じがしました。
『葵上』古式 玄祥さんは、能の演出についても毎回変えているようで、今回も古式ということで、車の作り物やお伴の青女房が出るものの、玄祥さんが新たに考えた演出も入っているものと思われます(どこまでが元の通りかは分からないけれど)。
正先に病臥する葵の上の象徴として小袖が置かれ、最初に朱雀院の臣下の欣哉さんが名乗りと葵の上の病状を語り、照日の巫女(文藏さん)に占わせます。(文藏さんはやっぱり女役が似合います。)巫女が葵の上の前に座り、梓の弓を鳴らして呪文を唱えると、粗末な牛車を表した作り物が後見によって大小前に置かれ、御息所の生霊とお伴の青女房が現れます。御息所の玄祥さんは、泥眼の面に唐織を壷折に着て緋の長袴、その長袴が普通の物とは違って、大口のように腰を大きく膨らませたものでした。やっぱり、かなりふくよかな御息所。御息所は牛車の中に、青女房の喜正さんは車の脇に控えます。 御息所は、後ろの車の中からも葵の上をじっと睨みつけているようで、凄みと懊悩の深さを感じさせて、ちょっとゾッとする。面が生きていると思いました。 従来の演出では出ない青女房が、自身の科白や型を行うのが新鮮。車の轅に取りすがって泣くところや、御息所が葵の上を打ち据えようとするのを止めようとする場面なども青女房がやるので、観ている方にとっては分かりやすいです。 御息所が葵の上を扇で打ち、恨みごとを言って去る時、車に乗って行くように、橋掛りの二の松まで下げられた作り物に一旦乗る形をとってから揚幕の中に入っていきました。 古式の小書では、前場が従来のものとはかなり異なります。 中入でアイの泰太郎さんが朱雀院の臣下の命で横川の小聖(閑さん)を呼びに行き、小聖が祈祷を始めると、鬼女となった御息所の生霊が現れます。巫女も切戸口から去り、御息所の生霊と小聖の二人だけのバトルとなり、やがて祈り伏せられた生霊は、怨念も消え、成仏得脱して去って行きます。 前場の時と同じ大口のような長袴で、鬼女の本性を現した生霊とのバトルは、むしろ緩やかな動きで重圧感のあるバトルでした。
玄祥さんらしく考えられた演出で、古式演出も分かりやすく面白かったですが、具体的な前場が生々しすぎて省略されてきた理由がわかるような気がしました。今回は、そういう意味でも面白いと思いました。 |
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| 2010年10月24日 (日) |
第22回万之介狂言の会 |
会場:国立能楽堂 13:00開演
「井杭」 算置:野村万之介、井杭:野村裕基、何某:石田幸雄
「清水座頭」 座頭:野村万作、瞽女:野村萬斎
「鈍太郎」 鈍太郎:野村万之介、下京の女:深田博治、上京の女:高野和憲
「井杭」 裕基くんも、もう11歳か、子どもの成長って早いもんだなあとつくづく思います。ずいぶんと大きくなった裕基くんですが、今回は「井杭」のシテ。子どもがやる場合は、算置がシテになるそうですが、この場合はやっぱり万之介さんがシテということでしょうか。 井杭を可愛がる何某役の石田さんが本当に可愛くてしょうがないというような笑顔で井杭の頭を扇で叩きにくるのが微笑ましい。叩かれる方はたまったもんじゃないと、観音様から賜った「隠れ頭巾」で姿を消して悪戯するわけですが、たまたま通りかかった算置の占いがよく当たるのに、あわてて居場所を変えたりするうち悪戯がエスカレート。見えないのをいいことに算木を隠したり、二人の鼻を弾いたり、叩いたり、とうとう二人が喧嘩を始めたので姿を現して逃げて行きます。子どもにいいようにもてあそばれてアタフタする大人たち、こういう役も万之介さんはピッタリですね(笑)。
「清水座頭」 座頭と瞽女がそれぞれ良縁を求めて清水の観世音に詣でて出会い、初めは誤解から口喧嘩となるが、仲直りして酒を酌み交わし、やがて仮寝の夢のお告げにより西門に行き、互いに引きあわされた相手と知って手に手を取って帰って行くというお話。 しみじみ、ほのぼのとした余韻の残る作品で、笑いの要素はほとんどありません。座頭の「平家」の謡いは、いつものちょっと可笑しい歌詞なんですが、それも妙にしみじみ聴いてしまいます。いつもながら、二人とも杖をつく仕草の美しいこと。でも、杖捌きは、やっぱり万作さんの方が上かな。妻を得る時のウキウキした感じとか、可愛いですね。最後に二人で手に手を取って帰って行く時、萬斎さんがずいぶん腰を折って体を小さくしているように見えました。
「鈍太郎」 狂言では、女の方が強いことが多いけれど、これは、最後には二人の女に担がれて鈍太郎は、いい気なものです。 でも、女房とお妾さんに手車で担がれて、女房には厳しく、お妾にはデレデレの色ボケ男っぷりが万之介さんだと嫌味が無くて、なんか、おバカだね〜と笑えてしまいます。 |
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