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能楽鑑賞日記

2011年3月4日 (金) 現代狂言?
会場:国立能楽堂 18:30開演

ご挨拶
 南原清隆、森一弥、佐藤弘道

古典狂言「六地蔵」
 すっぱ:野村万蔵
 田舎者:南原清隆
 すっぱ仲間:平子悟(エネルギー)、ドロンズ石本、大野泰広

現代狂言「五獣拳」 演出:野村万蔵、台本:野村万蔵、森一弥(エネルギー)
 伝説の詐欺師:石井康太(やるせなす)
 外国人:ニコラス・ペタス
 詐欺師仲間:佐藤弘道、中村豪(やるせなす)、森一弥(エネルギー)

現代狂言新作「ドラゴンキャッスル」 演出:南原清隆、台本:南原清隆、大野泰広
 浦 島太郎:南原清隆
 亀さん:野村万蔵
 おと姫:山田まりや
 ダンドリーチキン:佐藤弘道、ニコラス・ペタス
 ニート(ドラゴンキャッスルの住人)
  エビ:森一弥(エネルギー)
  コバンザメ:中村豪(やるせなす)
  マンボウ:ドロンズ石本
  ウツボ:石井康太(やるせなす)
  タツノオトシゴ:平子悟(エネルギー)
  ニート:大野泰広、高部恭史
 打楽器:和田啓
 管楽器:稲葉明徳

監修:野村万蔵、演出補:山下晃彦、舞台監督:猪ヶ倉大介  ほか

 まず、ナンチャンが登場してご挨拶。生でナンチャンを観るのが今日初めてという人に手を上げさせたら9割ぐらい。狂言を初めて観る人が8割くらい。5年目になる「現代狂言」ですが、新しい観客が多いということはいいんじゃないでしょうか。なので、いつものように初心者むけに狂言の解説。
 ナンチャンが準備のために退場すると、体操のお兄さん佐藤弘道さんとエネルギーの森さんが後を引き継いで登場。二人合わせて「モリミチで〜す」とキャイーンのような仕草(笑)。初めから息の合ったコンビのように軽快に演目の解説をしていきます。でも、「プログラムを読んでください」って、全然解説になってない(笑)。古典狂言に狂言師が一人しか出ていない「チャレンジャーですね〜。」とか、ニコラス・ペタスさんは舞台に立つのは、この現代狂言が初めて「チャレンジャーですね〜。」とか言ってて、すっかり新コンビ完成という感じのノリでした。

「六地蔵」
 地蔵堂を作った田舎の男が六体の地蔵を建立したいと、都に仏師を探しに行って、すっぱ(詐欺師)に騙されるのですが、すっぱは三人の仲間に三体ずつの地蔵に扮させ、場所を変えてごまかそうとするものの、行ったり来たりするうちに慌てて地蔵の印相が変わって、バレてしまうという話。
 古典狂言の中でも、ドリフのコントを思い出してしまう分かりやすい話で、最初はゆったりと進みますが、地蔵に扮した連中のドタバタぶりに会場は大爆笑。ナンチャンが発声も型もすっかり狂言師らしく上手くなってきているのに感心。さすが努力家ナンチャン、だんだん腕を上げてきています。

「五獣拳」
 「六地蔵」を現代風にアレンジした現代狂言。自ら「伝説の詐欺師」と名乗る男の前にデンマーク人の空手家が空手家の願いが叶うという「五獣拳」の像を求めて現れます。さっそく男は自分が「伝説の彫師」だと名乗って引き受け、三人の仲間を呼んで5つの獣の像になりすまして騙そうとします。
 古典に比べると、テンポが速く、いろいろなくすぐりが入って、現代風に飽きさせない展開です。「五獣拳」はニコラス・ペタスさんが「鶴、蛇、虎、猿、龍」の型を示してそれで作ってもらおうとするのですが、詐欺師の石井さん、うまく騙して金儲けができると喜びすぎて、途中までしか聞いていません。三体しかちゃんと聞いてなかったので、三人の仲間に「鶴、蛇、虎」の型をさせて見せますが、「猿と龍は」と言われて、慌てて他の場所にあると言って、場所を移し、仲間に猿と龍の型をさせて見せます。でも一人余っちゃった森さん、いきなり機転で馴染み客に扮するわけですが、その客に取られたら大変と、5体の像を行き来する空手家に詐欺師も振り回されてのドタバタ。
 舞台初めてのペタスさんもちゃんと摺足で歩いたり、狂言の型を使いながらのコントという感じ。弘道お兄さんやペタスさんもそれぞれの得意技を生かして笑いを誘います。

「ドラゴンキャッスル」
 浦 島太郎という就職活動中の大学生が面接の後に出会った亀さんという男に連れられて海の中にあるドラゴンキャッスル(竜宮城)に着きます。そこは、いろいろな魚たちやニートがコンピューターで管理される世界でした。
 ここでは、普通の人が珍しがられる世界。最初、普通の人として登場する万蔵家のお弟子さん高部恭史さんが、すっごく普通のおじさん(失礼)なのが、なんか笑えました。
 おと姫様はマザーコンピューターとして登場しますが、それも、実は竜王に管理されています。ダンドリーチキンは、段取りをする鶏です(笑)。ニートたちも働かないのに毎日段取りに従って動いていて、頭に被った帽子がコンピューター。何をするにもコンピューターで検索。島太郎がそんなの取ってしまえと言うと、恐る恐るはずしたニートたちは、やがて生き生きと動き出します。ナンチャンお得意のダンスあり、アクションありで楽しませながら、情報を利用するつもりが情報に振り回されている現代人に「コンピューターに頼らずに自分で考える」とか「知識より勘」とか、便利になりすぎて、退化してしまった能力の大切さを考えさせてくれます。
 竜王は実はタツノオトシゴの平子さんで、最後に竜王になって出て来た時の声の出し方など、いかにも竜王らしい変身ぶりで感心。万蔵さんもコントに自然に溶け込んで、ナンチャンとの軽快なやりとりが楽しく、今回は沖縄の三線を見事に弾きこなしていました。海の上で「船渡聟」のような船を漕ぐ型や潜って行く時にナンチャンが茸歩きをするなど、狂言の型もちゃんと取り入れていました。それから、生で見た山田まりやさんは、華奢でとっても可愛い人でした。
 最後は、いつものように能楽堂でも出演者全員が客席を握手して回ってくれました。
 だんだん、狂言が上手くなってくるナンチャン。新作現代狂言も、こなれてきて、飽きさせない演出にナンチャンらしい問題提起が嫌みなく伝えられていて良かったと思います。
 継続は力なり、これからもいろいろな人が参加して継続させて欲しいです。